ハノイ市ホアイドゥック郡バンコン村ではかつて、一夫多妻が流行した時期があった。男性は先を争うように第2、第3の妻をめとり、女性も他の人がそうしているならと目くじらを立てない。ただし夫は「二号さん」を持つ前に正妻に許可をもらって、きちんと結婚式を挙げなければならない。
今年70歳になるTさんは、2人の妻と7人の子を持つ。2人の妻が嫉妬してけんかしたことはないのか尋ねると、Tさんは「嫉妬なんかありませんよ。第2の妻を持っても正妻を大事にしているからね。問題が起きるのは正妻を放って置く人。私は妻を説得してから結婚しましたから、誰からも非難されません」と笑って答えた。
Tさんは例外的な存在かというとそうではない。Tさんの近所に住むSさんは、10年ほど前に第2の妻と結婚したが、正妻は積極的に協力した。村の人民委員会が、一夫一妻制に反するとしてSさんを呼び出した時、代わりに正妻が出向いて「罰するなら私を罰してください。夫を二号さんと結婚させたのは私なんですから」と主張したため、お手上げだったという。
バンコン村の各世帯は当然ながら子供の数が多く、1世帯5~7人は当たり前だ。3人目の子供の出産数は毎年市内で最も多い。なぜこの村で一夫多妻が当然視されているのか、理由は分からない。言うまでもないが、ベトナムの法律では一夫多妻が法律で禁止されている。