バン・ティ・ゴック・ルエン(27歳)はメコンデルタ地方でイノシシ農園を開いた最初の女性だ。彼女の農園はハウザン省チャウタイン郡ドンタイン村にある。「この2000平米の土地は4年前までザボン園でした。でも年々収穫が減っていたのでイノシシを飼おうと決心したの」と彼女は語る。はじめは両親から猛反対を受けたという。「イノシシは森にいるもので、ブタのように飼えるわけがない。種になるつがいのイノシシだって高価で、元手すら回収できない」というのが両親の言い分だった。
それでも彼女は負けずに中部高原地方につがいを買いに出かけた。両親はあくまで反対したが、彼女は懸命に説得しようやく許しを得たという。こうしてザボン園はイノシシ農園に姿を変えた。
しかし慣れない土地のためか買ってきた2匹のイノシシは何も食べないようになり、やがて2匹の子イノシシを残して死んでしまった。ルエンは残された2匹をなんとかして育てたいと、イノシシの特性や育て方についてさまざまな本を読んで研究した。その結果、2匹の子イノシシはすくすくと育っていった。
雌イノシシが妊娠すると彼女は心配でやつれるほどだったが、元気な子が生まれるのを見てほっと息をついた。母イノシシは乳をあげすぎると消耗してしまうことが分かっていたので、子イノシシが生後2カ月を超えた時点で母乳の代わりにぬかやイモを与えた。その後さらに数組のつがいを買い求め、今では50匹を超えるまでになった。
生後6カ月になると子イノシシは体重が36キログラムほどに達し、レストランなどに1キロ当たり20万ドン(約1300円)で売れるという。ルエンはイノシシに関する知識を農場の従業員に伝えて飼育を任せると、自分はイノシシ料理を習得するため学校に通った。そして数カ月後、地元でイノシシ料理専門レストラン「8ノンザン(8人の農民)」を開店した。今彼女は、農園とレストランの経営で大忙しの日々を送っている。