ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

アンザン省:競牛に駆ける男たち

2022/07/16 10:08 JST配信
(C) vnexpress
(C) vnexpress 写真の拡大.
(C) vnexpress
(C) vnexpress 写真の拡大
(C) vnexpress
(C) vnexpress 写真の拡大

7月はじめの朝、南部メコンデルタ地方アンザン省ティンビエン郡アンフー村に暮らすリエットさんは広さ3000m2の牧草地で、ウシの餌にする、よく伸びた草を刈り始めた。草刈り機を動かすこと15分、十分な量が確保できた。

 草の束を抱いて、クリーム色の体格の良いウシにやる。リエットさんによると、エサは少なすぎてもダメ、多すぎてもダメ。若草だと太りやすく走らなくなるため、古草がよい。ウシには毎日車を曳かせて、鍛錬する。

 レース1か月ほど前になると、ウシには鶏卵、粥、蜂蜜、ビール、そして少しばかりの薬を与える。最も大切な日のために、栄養をつけるのだ。

 村の競牛場は本番の競牛場より小さいため、何度も何度も走る。練習をする時間はレースと同じ13時。同じ暑さのなかで何度も走っていなければ、本番で勝てっこない。

 今から9年前、競牛の調教師になる前は、リエットさんはただの熱心な競牛の観客に過ぎなかった。どんなに応援しても疲れることなどなかったが、我が村がただの一度も優勝カップを持ち帰ったことがなかったことが、悔しかった。

 「アンフー村が優勝したなら、あんたをおぶって帰ってやるよ」。隣村の人間にそうバカにされたことをきっかけにリエットさんは、一度優勝したらやめるから、と妻に約束して、ウシを購入したのだった。

 2013年に1600万VND(約9万3000円)を出して仔牛を購入、その子を曳きながら「3年後見てろよ!絶対優勝するからな」と啖呵を切った。連れ帰るとさっそく様々な経験者に教えを請い、自分のように還暦を過ぎた人間ではウシを巧く操れないと、騎手の経験豊かなサンさん(52歳)に夢を託した。

 サンさんによると、競牛を指導してくれる人は少なく、この職業に就くなら、観察眼があり、度胸を持ち、練習熱心でなければならない。騎手もレースに備えて毎日鍛える。

 2頭のウシを操るのは簡単ではない。しかも騎手は、時速80kmで走るウシが曳く、幅30cm、長さ90cmの鍬の上に立っていなければならない。「ウシもヒトを見て態度を変えるから、厳しくしなきゃ言うことなんてきいてくれないよ」とサンさんはその秘訣を語る。

 普段の練習以外に戦術も欠かせない。レースが始まる前には競争相手に探りを入れる。この組はウシは強いが騎手は下手、あの組は騎手は巧いがウシは弱い、相手によって戦い方を変える。参加するウシは合計64組、優勝はトーナメントで争う。弱い相手には体力を温存しながら走り、強い相手なら最初から飛ばしてゴールまで一気に駆け抜ける。

 一番大変だったのが2019年大会だ。リエットさんチームは1頭が足を負傷、いざ出走という時には3本足で立っている状態だった。リエットさんは騎手と相談して痛み止めの薬をウシに塗った。それが奏効してか、少し走ってみるとウシの足は元通り、そのまま優勝カップをかっさらった。

 リエット・サン組はレースに挑むこと4回、優勝3回、2位1回という戦績を誇る。戦果は、サンさんが賞金をとり、リエットさんが賞品をとって、テレビ1台とバイク2台を手にしている。「2台とも乗ってますよ、売る気なんてさらさらないみたい。3回も優勝して、やめるわけないでしょう」とリエットさんの妻マットさんが笑う。

 新型コロナで2年の休戦。サンさん、リエットさん、そして100人近くの競牛家たちが、2022年のレースを今か今かと待ちわびている。

 このアンザン省バイヌイ(Bay Nui)の競牛祭は、毎年旧暦8月29日から9月1日に開かれる少数民族クメール族の「セネドルタ(Sene Dolta)祭り」のなかで催される。

[VnExpress 06:30 11/07/2022, F].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
世界長者番付25年版にベトナムから5人、ビンG会長が535位 (6:34)

 米経済誌フォーブス(Forbes)が発表した2025年版の世界長者番付に、ベトナムから5人がランクインした。  2025年版でランクインしたのは以下の5人。 ◇535位:コングロマリット(複合企業)

ロンタイン国際空港第1期、投資総額引き上げ (6:02)

 チャン・ホン・ハー副首相は3月29日、東南部地方ドンナイ省で建設中のロンタイン国際空港プロジェクトの第1期の投資総額を調整する首相決定第692号/QD-TTgに代行署名した。  これにより、第1期の投資総額は...

幻の動物「サオラ」探索にWWFが1800万円支援 (5:46)

 北中部地方フエ市人民委員会は、絶滅が危惧される動物「サオラ(学名:Pseudoryx nghetinhensis)」の追跡・保護活動のため、世界自然保護基金(WWF)から31億VND(約1800万円)超の無償援助を受け入れることを決定し...

ホーチミン、花の少ない13本の「花通り」 (3/30)

 ホーチミン市フーニュアン区のファンシックロン(Phan Xich Long)通りの周辺には、全長1kmにも満たない13本の通りが集まっている。これらの通りは様々な種類の花の名前にちなんで名付けられており、碁盤の目のよ...

米クアルコム、ビンG傘下のモビアンAIを買収 (5:11)

 米国の半導体大手クアルコム(Qualcomm)は、自社ウェブサイト上で、地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)の子会社である人工知能研究所(モビアンAI=Movian

ホンダベトナム、初の女性社長が誕生 (4:43)

 ホンダフィリピン(Honda Philippines)の社長を務めていた荒井清香氏がこのほど、ホンダベトナム(Honda Vietnam)の新社長に就任した。同社にとって初の女性社長となる。前任は杉田宏治氏。  荒井氏は1975年...

バイタリフィ、ベトナム子会社を建設システムに譲渡 (4:02)

 生成人工知能(AI)を活用したSaaSサービスの提供と受託開発を手掛ける株式会社バイタリフィ(東京都渋谷区)は、ベトナム子会社であるバイタリフィアジア(Vitalify Asia、ホーチミン市)の出資持分を、建設業向け施...

商空間プロデュースのスペース、ベトナム現地法人を設立 (3:56)

 ショッピングセンターや文化施設、スポーツ・娯楽施設などの企画、設計、監理及び施工を手掛ける株式会社スペース(東京都中央区)は3月26日、同社100%出資のベトナム現地法人の設立手続きを完了した。  ベ...

日本発祥のスポーツごみ拾い「SPOGOMI」、ベトナム大会開催 (2:30)

 公益財団法人日本財団(東京都港区)が企画し、世界34か国で展開する世界最大のゴミ拾い&分別イベント「SPOGOMI WORLD CUP 2025」の公式ベトナム予選「SPOGOMI WORLD CUP 2025ベトナム大会」が、4月20日(日)にホ...

中国の火鍋チェーン「海底撈火鍋」、ベトナムの売上好調 (2日)

 中国の火鍋チェーン「海底撈火鍋(ハイディラオ=Haidilao)」は、2024年における中国本土以外の海外市場による売上高が前年比+13.0%増の7億7800万USD(約1170億円)となった。  これは、ハイディラオの中国本...

ビンファスト、DHLとヨーロッパでの部品配送で提携 (2日)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電気自動車(EV)メーカーであるビンファスト(VinFast)と、国際宅配便や運輸、ロジスティクスサービスを扱うドイ

フーイエン省:党委筆頭副書記が党委書記に昇格、初の女性トップ (2日)

 ベトナム共産党政治局は、南中部沿岸地方フーイエン省共産党委員会筆頭副書記のカオ・ティ・ホア・アン女史を、同省共産党委員会書記(2020~2025年任期)に任命した。アン女史は、同省で初の女性の共産党委員会...

配車アプリ大手グラブ、ベトナムで事前予約機能を導入 (2日)

 シンガポール系グラブ(Grab)の現地法人グラブベトナム(Grab Vietnam)は、ベトナムでチャーター車両「グラブカー(GrabCar)」専用の事前予約機能を導入した。  これにより、利用者は乗車時間や迎車地点を事前...

第15期第9回国会、例年より早い5月5日開幕 憲法改正を審議 (2日)

 国会常務委員会は3月31日、第15期(2021年~2026年任期)国会第9回会議の準備について話し合った。  チャン・タイン・マン国会議長は、今国会は憲法の改正や行政区の再編に関する法律の改正など重要な法案を...

ホーチミン:サイゴン川の歩道橋が着工、26年4月末完成予定 (2日)

 ホーチミン市人民委員会は3月29日、同市を流れるサイゴン川に架かる歩道橋の着工式を開催した。  地場乳業メーカー大手ヌティフード(NutiFood)が、建設資金約1兆VND(約59億2000万円)を援助した。歩道橋は20...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved