ここ数年でベトナム人のスマホアプリの使い方は大きく変化してきました。以前は情報収集がメインだったのですが、コロナ禍を経てその利用方法はショッピングや支払い、勉強、健康管理など多岐に渡るようになりました。今回私たちは、モバイルアプリの使用状況を追跡するiOSの「スクリーンタイム」機能を利用して、どのようなモバイルアプリをどのくらい利用しているのかの調査を行いました。「スクリーンタイム」機能では、モバイルアプリの過去1週間の利用時間を追跡することができます。
1日あたりのスマホ利用時間は6.2時間
ベトナム人は1日に平均6.2時間をスマートフォンに費やしています。当社では本調査を毎年行っているのですが、コロナ禍でリモートワークやオンライン学習などを強いられていた昨年と比較すると利用時間はわずかに減少しています。特に若者の間での利用時間は長めです。一方で、1週間に利用しているアプリの数は平均20.5アプリでした。皆が多く利用しているアプリベスト10は下記の通りで、ソーシャルメディア・メッセージングアプリが中心です。
これだけ様々なアプリを利用している一方で、日常的に利用しているアプリはいくつかのアプリに集中しています。ベトナム人消費者はスマートフォンアプリの利用時間の約2/3をFacebook、Zalo、TikTok、Messenger、そしてYouTubeの5つのモバイルアプリだけに費やしています。特にFacebookは利用時間で最も利用されているアプリとして君臨しており、Facebookが世界的に人気がなくなって久しいことは噂されていますが、ベトナムではこのトレンドは当てはまらないようです。
2023年の3つのトレンド
本調査では多くの面白い発見がありましたが、その中から2023年の3つの主要なトレンドをピックアップしたいと思います。
一つ目のトレンドはTikTokの人気です。動画カテゴリーでは、YouTubeのユーザー利用割合はTikTokよりも多いものの、利用時間で見るとTikTokに費やす時間はYouTubeの倍以上となっています。この結果はTikTokのコンテンツにどれだけ中毒性があり、ベトナムのユーザーを強く引き付けている様子を示唆しています。特にTikTokは10代後半から20代前半の若者に人気があり、多くの企業がTikTokをマーケティングに利用する背景となっています。
2つ目のトレンドは、PC-Covidアプリの利用者がほぼいなくなった点です。Covid-19によって私たちの活動が制限されてからしばらく経ちましたが、現時点ではコロナ関連アプリを利用している人はほぼ0となりました。このアプリの利用状況からもコロナはベトナムでは既に過去の出来事であったことが伺えます。
最後のトレンドは、アプリ利用の多様化です。例えば、57%がオンラインショッピングアプリを、42%がライドシェアやデリバリーのアプリを利用しています。その中でも最も大きな変化は決済やオンラインバンクのアプリで75%の人が何かしらのアプリを利用していました。それぞれのカテゴリーでの競争も激化しており、例えば、ライドシェア・デリバリーのアプリではGrabが独占的なポジションを勝ち取る中、GoJek、ShopeeFood、Be、Baeminなどとのシェア争いも激化しています。また、モバイル決済アプリではMomoの利用度が断トツである一方で、銀行系のオンラインアプリの利用も増えています。以前は現金志向の国として知られていたベトナムですが、最近の数年間でベトナム人が金融を管理する方法は劇的に変化しました。
アプリの多様化によって、ベトナムでの生活の多くがデジタルによって便利になっています。今後もこの傾向は進む一方で、デジタル事業者の淘汰も進むのではないかと予想されます。