「情熱や吸収力によって人それぞれ習得のプロセスが異なるので、数か月で習得できる人もいれば、数年かかる人もいます。アオザイの仕立ては技術だけでなく、創造性、きめ細やかさ、そしてアオザイに対する深い愛情が必要なんです」とトアンさんは話す。
(C) thanhnien |
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人生で初めて仕立てたアオザイについて、トアンさんは笑いながらこう語る。「家族にこの仕事をしている人はいませんでしたが、私はきれいな服を着るのが好きだったので、16歳のときに仕立ての仕事を始めました。初めて仕立てたアオザイは、何度も何度も直して、ようやく形になりました。完璧ではありませんでしたが、今でも誇らしく、うれしかった気持ちを思い出します」。
トアンさんいわく、アオザイの真の価値は、仕立てる人の熱意と、着る人の幸せにあるという。「この伝統的なアオザイの仕立ての仕事をしていて、美しく着飾っている人々を街で見かけると、幸せな気持ちになるんです」とトアンさんは優しく微笑んだ。
時が経ち、現在のホーチミン市にはもうかつてのような静けさはないが、パスツール通りのアオザイ通りは今もなお、都市の現代的なリズムと共に生き続けている。この通りで長年仕立て屋をしている職人たちによると、手縫いのアオザイの仕立ての仕事は今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や、大量生産された安価で便利な商品との競争により、多くの困難に直面しているという。
高層ビルと慌ただしい生活の中、現代的な街並みに、民族の美しさを保ち続けるアオザイ通りが今も姿を残している。ちょっとした懐かしさや他では見られない独特な美しさを求めて、多くの若者や外国人がこの通りを訪れている。ここを訪れ、優雅でたおやかで、エレガントなアオザイの数々を見ればきっと、在りし日の思い出が甦ることだろう。