ハノイ市では20世紀初期からスーツの仕立て屋が営業しているが、仕立て職人の多くが同市フースエン郡の「仕立て屋の村」トゥートゥアン村出身であることを知る人は少ないだろう。
(C) Nguoi Dua Tin, ホアさん |
(C) Nguoi Dua Tin, ホアさん |
(C) Nguoi Dua Tin |
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仕立て業はトゥートゥアン村からバントゥー村に拡大し、現在では仕立て屋のバントゥー村として観光地にもなっているが、仕立て職人のグエン・バン・ホアさん、ダオ・タイン・ズさん、グエン・ライさんたちの努力と貢献を抜きにその歴史を語ることはできない。
「ハサミの王様」の異名を持つホアさんは76歳、トゥートゥアン村で第3世代の仕立て職人だ。村では農耕が難しく、祖父や父の世代は各地へ出稼ぎに行ったものだったが、1954年に当時13歳のホアさんはズさん、ライさんら複数の若者たちと連れ立って縫製を学びにハノイ市の地を踏んだ。
8月革命(1945年8月)以前のハノイ市は、トゥートゥアン村出身の店主が営む紳士服の仕立て屋が多数存在し、フランス人官僚やベトナム人の上流階級の間でオーダースーツの需要が高く仕立て業の全盛期だった。
しかし、ホアさんたちがハノイ市へ修行に来た時には仕立て業は既に衰退し、第1次インドシナ戦争と相まってスーツを着る人は皆無に等しかった。それでもホアさんたちは故郷の伝統を絶やさないと心に決め修行を続けた。