「2000年頃になると、木靴の人気がまた少し上がってきました。特に観光客から好まれて、私の店の客も増えました」。しかし、現在ではその人気もまた落ち込んでしまった。「悲しいことです。誰も買ってくれません」とリエンさんは嘆く。
(C) thanhnien, Nguyen Mi |
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「今や木靴を履く人はほとんどいないので、1足も売れない日が何日も続くことすらあります。月2000万VND(約9万1000円)ほどで店を貸してくれないかと声をかけてくる人もいます。しかし考えてみると、私もこの仕事に就いて半世紀以上。何とか続けていきたいと思うのです」。
一等地に立ち、賃貸料も市内で最も高いこの市場で、リエンさんは店を守る。木靴1足の価格はわずか10~15万VND(約457~685円)だ。「木靴を作り続ける一番の理由は、サイゴンの古きよきものを少しでも残したいという気持ちからです。人々がまた女性の魅力を象徴する木靴を履くようになって、木靴の音が聞こえるようになれば…」。彼女はそう思いを語る。
もう1つの理由について、リエンさんいわく、「家にいても仕事が恋しくて、居ても立ってもいられなくなるのです。市場に出るのが楽しく、その方が健康にも良いと感じています」とのこと。「ここに座ってはや半世紀。市場は賑やかな場所で、人々が行き交い、たくさんの人生が見える場所です。人生山あり谷ありと同じで、木靴も栄枯衰勢を経てきました」。
リエンさんによると、木靴は古きよきサイゴンの街やベトナム女性と深く結びついているものだという。「最近の人々は、特別なものとして木靴を購入しています。高齢のお客さんが若かりし昔を懐かしんで購入するか、観光客がおみやげとして購入するぐらいで、かつてのように実用品として履かれることはもはやないのです」。