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父親の遺影を手にした日、少年は「お父さんはこんな見た目だったんだ」と震えながらつぶやいた。父親とは長いこと会えていなかった。
ある日の午前10時のことだった。東北部地方トゥエンクアン省ハムイエン郡タインロン村(xa Thanh Long, huyen Ham Yen)のタインロン小学校に通う5年生で、少数民族サンチャイ(San Chay)族のダン・バン・クエンくん(10歳)が教室にいると、父方の伯父の妻が慌てて走ってきて、クエンくんの父親が交通事故で亡くなったという悪い知らせを告げた。クエンくんは震えながら拳を握り締め、泣くのを堪えた。そして、うつむいたまま先生に3日間休ませてほしいとお願いした。
それから古い自転車に乗って4つの坂を越え、自宅に向かって3kmの道のりを走った。雨がやんだばかりの砂利道で、自転車のタイヤが何度も滑った。自宅では、伯父と近所の人たちが父親の遺影を印刷するのを手伝ってくれた。クエンくんは父親と長いこと会っていなかったため、父親の姿がどんなだったのか、もはや覚えていなかった。
5年前に母親は家を出て行き、父親も遠く離れた地へ出稼ぎに行っていた。そのため、クエンくんは父方の祖母と一緒に暮らしていた。しかし、2018年に祖母が60km離れたところへ嫁に行ったため、以来クエンくんは1人暮らしだ。
クエンくんの自宅は山林の端にあり、最も近いご近所さんでも200mの距離がある。1人暮らしを始めて1年が経ち、すっかり慣れたクエンくんは、他の人と一緒に暮らしたいとは思わないのだという。
学校の先生たちはクエンくんを哀れみ、寄付を募った。そして、ほぼ半日で1000万VND(約4万8000円)が集まり、父親の遺体を運ぶための車も手配できた。父親の遺体が自宅に運ばれた後、クエンくんはじっと座って、父親の遺影をしっかりと抱きしめた。