(C) vnexpress, Duy Tran, タイさん |
縁があって、タイさん夫婦は一人娘を連れてホーチミン市に出てきて、もうすぐ1年になる。娘の治療のために各地を走り回った後、ビンタン区のある医者が無料で定期的に鍼灸治療をしてくれることになった。この治療のおかげで娘の意識が覚めて動けるようになったことから、治療のためにこの近くに家を借りて住むことに決めた。
初めの頃、彼らは1階の部屋を借りていたが、2か月後には屋上に移り、より広い12m2の部屋を安い賃料で借りることができた。辛いのは、子供を背負って階段を上り下りする時だ。
タイさんはホーチミン市で仕事がなかったため、あちこちに出向いて建設労働の仕事を探している。仕事があれば、1日に約20万VND(約1020円)を稼ぐが、雇い主がいない日には収入もない。「とても心配です。今は私も妻も元気で子供を治療に連れて行くことができます。でも年老いてからはどうなるかわかりません。故郷にあった少しばかりの蓄えはもうなくなってしまいました」。
タイさんは、「先祖の輝かしい過去は誇らしいことです。しかし今は将来を見て、貧しくてもきちんと生きて、先祖や自分の家系を裏切ることのないようにしたいです。貧しくても、自分の子供と一緒に生きるというのは有意義なことです」と語った。
貧しさから抜け出せないタイさんは、父が死去してからの10年間、フエ市にある父の墓に一度も行けていなかった。しかし、2016年3月24日、阮朝第5代皇帝ズックドゥック(Duc Duc=育徳)帝(在位1883年)と第10代皇帝タインタイ帝、第11代皇帝ズイタン帝の3人の命日に合わせて、一家はようやくフエ市を訪れることができた。
皇帝3人の命日は異なるが、遠方から訪れる子孫も多いため、毎年1日にまとめて儀式を行っている。渡航費は、フエ遺跡保存センターが支援した。同センターは、タイさん一家の暮らしを知って支援を決めたという。同センターはタイさん一家の生活費の一部も援助する。
「父の墓をこの手できれいにすることができて、線香を手向けることができて本当に幸せです」。初めてグエン・フオック家の先祖と父の墓に手を合わせることができたタイさんは、あふれる涙をこらえることができなかった。