(C) Lao Dong, 生薬で不妊治療をするカイさん |
5年間子宝に恵まれなかった夫婦は、何度も病院に通って治療をしていたが、お金がかかるばかりで、何の結果も得られなかった。夫は長男で、跡継ぎを望む親族からの圧力が相当強かった。不妊の原因が妻にあったため、離縁することを考え始めていた矢先、知り合いからカイさんを紹介された。すがるような思いでカイさんの処方する生薬を妻に飲ませたところ、僅か2か月で子供を授かることができた。
隣の省からやってきた夫婦は、妻には何の問題もなく、夫婦生活も普通なのに、なぜか子供ができなかった。カイさんは、脈診により夫が精子無力症であることを見抜き、生薬を処方。2か月後に妊娠した。子供を連れてカイさんを訪れた夫婦は、「子供ができたお陰で夫が真面目に仕事に打ち込むようになり、とても幸せ」と喜んでいた。
不妊治療に使用するのは庭で栽培可能な植物だ。例えば、イラクサ科のナンバンカラムシの根は、月経異常の治療や胎盤を安定させる作用がある。丁子に似たボイの実は流産の予防に、クマツヅラ科のマキバクサザは月経不順や精力減退に効果があるという。
カイさんによると、不妊治療の効果が現れるのは生薬の服用を始めてから4か月以内で、殆どの場合、1回来てもらって処方するだけで済むという。カイさんはこれまで数多くの不妊夫婦の治療を行ってきたが、1回当たりの謝礼は数十万VND(10万ドン=約510円)程度。もっと謝礼をもらってもいいのにと周囲の人たちは思うが、彼は最低限しか受け取らない。「人生にとって最も良い薬は『福』なんですよ」とカイさん。不妊夫婦にただ幸せをもたらしたいという彼の志は尊い。