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[特集]

生薬による不妊治療で人助け、「福」こそが人生の良薬

2014/09/14 08:20 JST更新

(C) Lao Dong, 生薬で不妊治療をするカイさん
(C) Lao Dong, 生薬で不妊治療をするカイさん
 東北部バクザン省ルックナム郡タインラム村に住む農家の男性が、先祖伝来の不妊治療法で多くの不妊夫婦を助けている。不妊治療に使用するのは主に庭で育てている植物で、「安い上に効果てきめん」と噂を聞きつけてやってくる人たちが後を絶たない。  その不妊治療を行っているホアン・バン・カイさん(43歳)は、中国人の父を持つ。中国からベトナムへやってきた父親は、結婚してバクザン省に住み、二人の息子をもうけたが、カイさんが9歳になった時、妻子を残して帰国してしまった。それ以来、カイさんは父親の姿を見ていない。  カイさんの父親はバクザン省に住んでいたとき、代々受け継がれてきたという生薬を用いた不妊治療により多くの不妊夫婦を助けていた。当時幼かったカイさんも、父に頼まれて薬草を採りに行ったという。ベトナムに戻ることはないと決意していたのだろう。父親はベトナムを発つ前、息子たちにその不妊治療法を教え込み、カイさんはこの治療法を受け継ぐ7代目の人となった。  カイさんの行う不妊治療法は大きく二つに分けられる。一つは勃起障害(ED)や精子無力症といった男性に原因のある治療、もう一つは子宮や卵巣、卵管の炎症や中絶の影響で妊娠しにくい女性に対する治療だ。治療を行うにはまず原因を突き止める必要がある。医師ではないカイさんだが、脈診を行うことで不妊の原因を特定することができるという。  カイさんが生薬による不妊治療を始めたのは、彼が19歳のときのこと。ある夫婦と一緒に造園の仕事をしたのがきっかけだった。この夫婦は結婚して4年以上経つのに子宝に恵まれず、それが原因でケンカが絶えなかった。そこで彼は、父から教えてもらった治療法を夫婦に試してみたところ、煎じた薬を飲み始めて僅か1か月で妊娠。その後、更に2人の子供を授かった。これを機に、彼の不妊治療が始まった。

 5年間子宝に恵まれなかった夫婦は、何度も病院に通って治療をしていたが、お金がかかるばかりで、何の結果も得られなかった。夫は長男で、跡継ぎを望む親族からの圧力が相当強かった。不妊の原因が妻にあったため、離縁することを考え始めていた矢先、知り合いからカイさんを紹介された。すがるような思いでカイさんの処方する生薬を妻に飲ませたところ、僅か2か月で子供を授かることができた。  隣の省からやってきた夫婦は、妻には何の問題もなく、夫婦生活も普通なのに、なぜか子供ができなかった。カイさんは、脈診により夫が精子無力症であることを見抜き、生薬を処方。2か月後に妊娠した。子供を連れてカイさんを訪れた夫婦は、「子供ができたお陰で夫が真面目に仕事に打ち込むようになり、とても幸せ」と喜んでいた。  不妊治療に使用するのは庭で栽培可能な植物だ。例えば、イラクサ科のナンバンカラムシの根は、月経異常の治療や胎盤を安定させる作用がある。丁子に似たボイの実は流産の予防に、クマツヅラ科のマキバクサザは月経不順や精力減退に効果があるという。  カイさんによると、不妊治療の効果が現れるのは生薬の服用を始めてから4か月以内で、殆どの場合、1回来てもらって処方するだけで済むという。カイさんはこれまで数多くの不妊夫婦の治療を行ってきたが、1回当たりの謝礼は数十万VND(10万ドン=約510円)程度。もっと謝礼をもらってもいいのにと周囲の人たちは思うが、彼は最低限しか受け取らない。「人生にとって最も良い薬は『福』なんですよ」とカイさん。不妊夫婦にただ幸せをもたらしたいという彼の志は尊い。 

[Lao Dong, 19:02 (GMT+7) 05/08/2014 S]
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