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リム)初めて行った時にやっぱりショックも受けて。面白いし、景色もとても綺麗。ロシアからシベリア鉄道にのって横断したんですけど、楽しくって。ロシア人も暖かくて良い人ばかりで。ロシアで映画を作りたいっていう気持ちは今でも変わってないですね。
小野)なるほど、私も場所の設定から物語が湧くことは多いです。最初に書いた小説が銭湯のシェアハウスの話で、そこに色んな人が居て…マレーシアと日本人のハーフの女の子とか、義足の男の子とか、自身のジェンダーに疑問を持つ若者とか、色んな人達が集まって暮らすという群像劇です。銭湯が好きで、大阪も結構ありますよね?
リム)僕も、銭湯好きですよ。天然温泉が大好きです。
小野)人との距離が近くて、都市の中にいるけど、他人との境界が崩れるような感じがあって。深く関わらないし、相手の名前もわからない。
リム)僕も、シェアハウスみたいなところにずっと住んでいて。そこにいると色んな人の関係が見えてきて面白い。
小野)「カム・アンド・ゴー」でも、個々の関係がそんなに深くならないじゃないですか。ネパール難民と日本語学校の先生以外は人間関係が希薄で、そんなに深く関わってないのに物語自体は濃密で、人間っていうものを実感したなと思える。
リム)みんな孤独ですよね。特に都会に生きると。小野さんと共通のテーマかもしれないですが、おっしゃる通り人間の関係って、距離感じゃないかと思うんですよね。その距離感というものは深入りしないことだと思いまして。
小野)深く入らないことを悪く描いてないですよね、カーワイ監督は。
リム)そうですね、一切否定してないですね。
小野)分かり合えないということも含めて描いている。
リム)それは当たり前じゃないかという気がしていて。
小野)それは分かる。マレーシアの人間関係と東京・日本の人間関係って違いますか?
リム)違いますね。例えば、ベトナムでもそうですけど、日本の場合は田舎に行っても、サービスを提供する側とされる側とはっきり境界線があるんですよね。でもマレーシアでは、注文をする時に「どこから来た?」とか色々聞かれて、関係は一気に崩れるんですよね。そういうコミュニケーションが日本には少ないですね。
小野)私、中国人の友人と一緒に中国の田舎に行った時、日本人差別が激しい町だったから「滞在中はあなた韓国人のふりしなさい」て言われて。初めての体験なので結構びっくりしました。ずっと韓国人のふりをしながら、ちょっと罪悪感を感じたりして、印象深い出来事ですね。
リム)中国の内陸部ですよね。僕も行ったことがあって、ショックを受けました。顔立ちとか服装とかで日本人と間違われて、店に入ってはいけないとか言われて。追い出されたんですよね。マレーシア人ですと言ったら、やっと入れてくれた。
小野)中国大陸の中でも場所によって価値観が全然違いますよね。「日本人お断り」とか看板があったりとかするとドキリとしますよね。日本に来ている外国人の方も、「差別されるかも」とこんな風な気持ちを味わいながら暮らしているのかな?と初めて想像しました。旅で感覚が変わることはよくありますよね。
リム)一度、外にでないと分からないことがいっぱいありますよね。いつから、旅をし始めたんですか?
小野)18歳からですね。大学入って初めてヨーロッパに行って、大学3年生の時にはお金を貯めてインドからポルトガルに行って、そこからアルゼンチンに飛んで南米を回り帰ってきたんですけど。国境を越えるだけで景色が変わり文化も違うというのが、本当に面白いなと思いました。
リム)僕もずっと旅をしたかったんですけど、なかなか出来なくて。やっと30代になって全て諦めてからバックパッカーになった。
小野)諦めるってなんですか?会社を辞めるってこと?
リム)会社を辞めて、学生もやめて。フリーになって、遅れてきたバックパッカーなんですね。一回体験してしまうと嵌って、もう二度と普通の生活に戻れない。でも旅で出会う人ってみんな若い。自分が一番年寄りじゃないかな? 気づいたことがあって…小野さんが世界一周したのはいつ頃ですか?
小野)15年ぐらい前ですよ。
リム)当時は、まだ日本人の若者が結構多かったでしょ?
小野)ああそうだったかも。
リム)今びっくりするほど、日本人が居ないですよ。日本の若者は海外に行くことに、あまり興味がないですね。
小野)そうなんだ、意外。LCCとか、安くなってるのに!
リム)いつも出会うのは、だいたい韓国人と台湾人です。中国人も個人旅行が増えてきたんですけど。あまり日本の若い人に出会わないですね。
小野)それは残念ですね。やっぱり海外に行くことで一回客観的に自分の国とか自分自身を見ることが出来るというのはありますよね。
リム)本当に客観的に日本を見れない若者が増えてきたんじゃないかという気がします。そして彼らもこの「カム・アンド・ゴー」に描かれている世界、外国人が働いているのに気づいていても、ベトナムの人やミャンマーの人に興味がない。そういう感覚は日本にあるんじゃないかと思います。海外に興味がないだけでなく、日本にいる海外の人たちにも興味がない。
小野)興味がないというより、境目も感じていないって気もしますね。当たり前の存在になってしまっているから、興味をもつきっかけすらないんじゃないかなと。日本に外国人がすごく増えて。
リム)でも同じ空間に暮らしていて、同じように生きているわけですから、彼らのことに関心を持って欲しいですね。
小野)でも私は、若い人は内向きかもしれないけど、その環境で生きているのが当たり前だから、彼らが大人になってくれば少しは変わってくるのではないかって思うんですけどね。
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映画「COME & GO カム・アンド・ゴー」は11月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、12月3日(金)よりテアトル梅田、12月4日(土)よりシネ・ヌーヴォ、12月10日(金)より京都シネマ、12月25日(土)より名古屋シネマスコーレほか全国順次公開。
ウェブサイト:https://www.reallylikefilms.com/comeandgo