ベトナムのEC市場は前年比25%程度の成長を遂げています。 ベトナムの消費者小売市場の伸びがコロナ前までは大体10~12%程度でしたので、倍のペースで伸びていることになります。小売市場全体でのオンライン比率は現在5%程度と考えられます。日本のEC比率が7%弱と言われていますので市場規模は異なるもののオンライン利用の機会としては非常に近しいものとなっています。
そんなEC市場ですが、主要プレイヤーの人気にここ1・2年の間に変化が見られます。今回はサイトアクセス数の遷移からECサービスのトレンドを見ていきたいと思います。
まず第一に、Shopeeが一人勝ちの様相を見せていることが挙げられます。Lazada, Tiki, SendoなどのECプラットフォーム事業者のアクセス数が落ち込み傾向にあるのに対して、Shopeeはこの18ヶ月の間でアクセス数を50%以上増やしています。Shopeeは元々女性や若年層に人気があり、地方でのシェアが高いという特長がありましたが、大規模なプロモーションや広告施策によって、これらの層がよりオンラインで購入をするようになった点が人気向上に寄与していると考えられます。一方で、LazadaはAlibabaに買収されて以来ここ数年少し元気がなくまた女性層の取り込みという点でShopeeと差がついているように感じます。またTikiやSendoなども、配送サービスなどの品質差異や価格施策などで差別化を図ろうとするものの息切れ気味の印象があります。
もう一つの特長がIT/家電分野でのECの広まりです。The gioi di dong、Dien may XANHといった携帯電話・家電店舗を運営するモバイルワールドグループのECサイトはベトナム有数のオンライン売上を誇っており、売上に占めるオンライン比率は既に10%を超えています。また、アクセス数Top20に入るEC事業者のうち13社はIT/家電分野となっており、このカテゴリーはいち早くオンライン化が進んでいると言えます。ファッション・美容などの分野ではShopeeなどのECプラットフォーム事業者がユーザを現状囲い込んでいますが、ITの分野は小売店舗のECサイトが健闘しています。
これらのECサイトに加えて、FacebookやZaloのようなソーシャルネットワークでの販売比率が高いのがベトナムの特長と言えます。実際これらのソーシャルネットワークでの販売規模はLazadaやTikiなどの有力ECサイトと同等程度と考えられます。特に個人や中小企業者が食品や美容・ファッション製品などを販売するのに好まれており、チャットしながら購入するプロセスが楽しくて安心という理由からスマホネイティブの若年層に好まれています。
今後は、資金力に勝るECプラットフォーム事業者が多くのマーケティング投資を行い顧客獲得を引き続き狙う一方で、ベトナム消費者のニーズ細分化に合わせて、例えば美容・ファッション・食品などの分野での専門ECが増えてくるのではないかと考えられます。またGrabMartなどの買い物お届けサービスなども登場し、ベトナム消費者の購入行動はオンラインを中心に大きく変わってくるのではないでしょうか。