ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第54回】一人当たり平均月収から見るベトナムの地域格差について

2021/07/15 10:35 JST配信

VIETJOベトナムニュース でも記事の掲載がありましたが、先日ベトナムの統計総局(GSO)が2020年の世帯生活水準調査を実施しました。 ビンズオン省 が最高の平均月収額だったという結果に驚いた人も少なくないかと思います。細かく見ると色々ツッコミどころのあるデータではありますが、今回は、この統計総局のデータを元に ベトナムにおける都市別の生活水準 について見ていきたいと思います。

省・市ごとの月間平均所得

統計総局のデータを元に各省別のデータを地図上に落とし込んだものが以下の図になります。緑色の省は平均収入が高い省、赤色は平均収入が低い省になります。 月間平均所得が700万VND(約3万3650円)を超えるビンズオン省 や、650万VND(約3万1250円)程度のホーチミン市、その他、ハノイ市ドンナイ省ダナン市カントー市などの地域の平均収入が高いのが地図上から見て取れると思います。 平均月収が最も高かったビンズオン省と最も低かった ディエンビエン省 では平均月収に4倍の開き があります。各省別の数字もかなりバラつきがあり、こういった収入格差が地方から都市部への人の流れを産んでいます。

画像を拡大

地方ごとの月間平均所得

このデータを地方別に展開したものが下図となります。こうして見るとホーチミン市やビンズオン省、ドンナイ省などのある東南部地方とハノイ市、ハイフォン市のある北部紅河デルタ地方の二つの地方の平均月収が高いのが分かります。北部紅河デルタ地方(月間平均所得=500万VND(約2万4040円))と北部山岳地方(同=275万VND(約1万3220円))は 隣接しているものの平均月収で見るとほぼ倍の格差 があります。

画像を拡大

地方別の収入源は?

この統計データでは収入源に関するデータも掲載されているのですが、収入源を地方別で分析したのが以下のデータになります。この収入源は「給与・賃金」「農業・林業・漁業などからの収入」「その他製造収入」「その他」で構成されているのですが、例えばホーチミン市・ビンズオン省などのある東南部地方の65%が給与・賃金からの収入などに対して、中部高原地方では同数値が41%に留まる代わりに、「農業・林業・漁業」や「その他製造収入」の割合が高いことがわかります。一概には言えませんが、 地方別の収入源に大きな違いがあり、大都市では企業勤務者の割合が多い ことが窺い知れます。

画像を拡大

省・市ごとの人口と購買力

このような形で地域ごとの所得を見ると、例えばダナン市、カントー市などの地域も市場展開の観点から魅力的に映ります。一方で、市場の魅力を考える場合には、一人当たりの購買力だけでなく、 「購買できる人の数」=「人口」 を考慮する必要があります。そこで省別の人口を地図上に落とし込んだものが以下になります。900万人の人口を誇るホーチミン市と800万強のハノイ市の二都市の人口がずば抜けているのが地図上に落とし込むと非常に分かりやすいかと思います。例えば、平均月収ではダナン市などもある程度の水準を占めるのですが人口は100万程度ということでホーチミン市の1/9程度です。

画像を拡大

「一人当たりの購買力」x「人口」の二つを考慮すると、やはりホーチミン市・ハノイ市の2都市の市場性は他の地域を大きく上回っています。それ以外の都市も大きな投資が行われたり、高い成長を続けていますが、人口を考慮に入れるとなかなか効率的な攻め手が見当たらない企業も少なくないようです。人口9000万を超えるベトナムですが、ホーチミン市・ハノイ市の1700万人を先ずはターゲットに市場開拓を行うのが現実的であり、一方で他の東南アジア新興国と異なり攻めるべき場所が2箇所ある点がベトナム攻略を難しくしている一つの要素ではないかと思います。

著者紹介
株式会社Asia Plus代表取締役社長 黒川賢吾

株式会社Asia Plus ( www.asia-plus.net )代表取締役社長。
NTT、ソニー、ユニクロにて海外マーケティングを担当。
2014年にAsia Plusを設立しベトナムマーケットリサーチサービス
「Q&Me( www.qandme.net )」を展開中


統計から見るベトナム
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
米空軍、ベトナム空軍に練習機5機引き渡し 国防協力の重要な節目 (16:11)

 米空軍は南中部沿岸地方ビントゥアン省ファンティエット空港で20日、ベトナム空軍に米国製の練習機「T-6テキサンII(T-6 Texan II)」5機を引き渡した。  式典は、米空軍太平洋空軍司令官のケビン・B・シュナ...

タイWHA、タインホア省で工業団地開発 投資総額80億円 (14:31)

 ブイ・タイン・ソン副首相は19日、北中部地方タインホア省で計画されているWHAスマートテクノロジー工業団地のインフラ整備案件に関する投資方針を承認する決定第1431/QD-TTgに署名した。  投資主は、タイ...

ビンファスト子会社、シュナイダーなどとグリーンエネルギーで協力 (14:25)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電気自動車(EV)メーカーであるビンファスト(VinFast)の子会社、ビンファスト・エネルギー(VinFast Energy)は、

ハノイの街角、アヒルを連れて散歩する名物男性 (17日)

 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳)が、手に持った棒で地面を叩くと、生後4か月の真っ白なアヒルは「散歩の時間だ」と理解し、クアンさんの...

車両の排ガス基準のロードマップ、25年1月1日施行 (13:18)

 チャン・ホン・ハー副首相は、輸入車両と国内製造・組み立て車両に求められる排ガス基準の適用ロードマップを規定する首相決定第19号/2024/QD-TTgに代行署名した。同決定は2025年1月1日に施行される。  首...

プロジェクターの中国XGIMI、ナムディン省に工場建設へ (13:05)

 スマートプロジェクターとレーザーテレビの設計・製造を手掛ける中国のエクスジミー(XGIMI)はこのほど、北部紅河デルタ地方ナムディン省のミートゥアン工業団地内でプロジェクター生産工場の建設に向けた地鎮祭...

ベトジェットエア、「グリーンフライデー」で運賃キャンペーン (12:00)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、「ブラックフライデー」に対抗してサステナブルな消費を促す「グリーンフライデー」のキャンペーンとして、11月27

「教員の給与を公務員の中で最高水準に設定」、国会で一致 (6:44)

 国会は20日、教師法草案を審議した。議員らは、収入の圧力が教育業界への優秀な人材の誘致を阻害する原因の一つになっていると指摘し、優秀な教員を確保すべく、教員向けの給与政策を刷新することを支持した。 ...

ビングループ、ロボット研究開発子会社を設立 (6:11)

 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)は、ロボット研究開発を手掛ける子会社「ビンロボティクス(VinRobotics)」を設立した。  ビンロボテ

阪急阪神不動産とシーアールイー、ハイフォンで物流倉庫を着工 (5:03)

 阪急阪神不動産株式会社(大阪府大阪市)と株式会社シーアールイー(東京都港区)は、シンガポール政府系企業セムコープ・デベロップメント(Sembcorp Development)と共同でセムコープ・インフラ・サービシズ(Sembco...

投資コンサル会社社長を詐欺で逮捕、被害者7500人以上 (5:01)

 南中部沿岸地方ダナン市警察は18日、顧客7500人以上から金銭を騙し取ったとして、GFDI投資コンサルティングのグエン・クアン・ホアン社長(男・36歳)とチャン・ティ・ミー・ハイン資金管理部長を詐欺・資産横領...

10月の訪日ベトナム人5.1万人、10月として過去最高を記録 (4:58)

 日本政府観光局(JNTO)が発表した統計によると、2024年10月の訪日ベトナム人の数は前年同月比+1.1%増の5万1000人で、10月として過去最高を記録した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以前の2019年同月比...

10月の対日貿易収支、1394億円の黒字 前年同月比+24.6%増 (4:54)

 日本の財務省が発表した2024年10月の貿易統計(速報)によると、ベトナムの対日貿易収支は前年同月比+24.6%増の1394億1500万円の黒字だった。  日本からベトナムへの輸入額は前年同月比▲5.7%減の2250億3500...

堺市、ダナン市資源環境局と脱炭素社会実現に向け協力 (3:11)

 大阪府堺市は、日本の環境省が実施する脱炭素社会実現のための都市間連携事業の一環として、南中部沿岸地方ダナン市と「ダナン市におけるカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素都市形成支援事業」を実施して...

住宅ローンテックのiYell、初の海外拠点をホーチミンに開設 (2:44)

 住宅ローンテックスタートアップのiYell株式会社(東京都渋谷区)は20日、初の海外拠点となる「iYellベトナム(iYell Vietnam)」事務所をホーチミン市に開設した。  これにより、新たなオフショア開発拠点とし...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2024 All Rights Reserved