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「日越の架け橋となる仕事を」カオ・ミン・ケンさん/食品メーカー【中編】

2016/04/18 09:00 JST配信

ベトナムで人材紹介を行う JellyfishHR がお届けするこのコラムでは、現地で実際に生活をしている日本人に、ベトナムでの生活、ベトナム人との仕事、日本との違いなどをインタビューしていますが、今回は、 前編 に続きベトナム人でありながら日本で育った、周囲と異なるキャリアをお持ちのカオ・ミン・ケンさんの登場です!

市場で流通しているカオさんが作った豆腐

世界的にも最難関校の仲間入りをして久しいシンガポール国立大学でMBAを取した経緯と、豆腐屋を通じてベトナムで創造したい世界観をについて教えて頂きました。

アジアで活躍することを夢見る方には非常に参考になる考え方かもしれません。

>> 前編はこちらから

シンガポールでMBAを取得した経緯 

カオ: 次に 「どうして豆腐屋?」 ということを話したいと思います。

(前回の記事でもお伝えしたように)父親に誘われたことがきっかけですが、それ以前に私自身食べることが好きだからというのもあります。

どの会社も詰まる所お客様を幸せにするために何かしら事業をしています。人を幸せにする方法は五万とあって、その数だけ会社は存在していると考えています。私は「食」からの貢献、例えば「ご飯おいしいなあ!」って思うような幸せを提供したいと考えています。

その理由は、食事が美味しいというのは、色んな諸条件が揃って初めて生まれる感情だからです。諸条件というのは、おいしい食材、腕の良いシェフ、健康、経済的余裕、精神面、 環境、一緒に食べる人との良好な関係などです。もしこれら一つでも大きく欠如すれば、美味しい食事はあり得ません。

なので、食事を楽しめるって、実はものすごく次元の高い幸せなんです。お客さんがご飯を美味しいと思える環境を提供できることは素晴らしいことですよね。そういう意味で食からのアプローチは非常にやりがいがあります。

− 「食」からのアプローチは大切ですよね。そして、 読者も興味津々のMBAに行った理由について教えてください!

カオ:わかりました! それでは早速MBAに行った理由をお伝えします。

と、その前にシンガポール国立大学のMBAを紹介させてください。同大学はシンガポールで最も歴史の古い大学で、2015年に創立110周年を迎えました。シンガポールは同じ年に建国50周年を迎えたので、国ができるよりもずっと昔からある大学です。大学ランキングだと、世界12位。MBAランキングだと、世界30位前後といったところです。

シンガポール国立大学の特色は、東南アジアのビジネスに特化していることです。他国のMBAは、その国のビジネスを授業で取り扱うことが多いです。例えば、アメリカだとシリコンバレーだったり、香港のMBAは中国ビジネスを中心に勉強することになります。 私の場合は東南アジアで勝負したかったのでシンガポールが丁度良かったんです。 学生も同じような目的の人がたくさん集まってきます。

− 非常に勉強になります! 大学への合格レベルはどのくらいなんですか?

カオ: 合格率は5%。 私の時は4000人の応募の中から、200人が合格しました。

豆腐屋を継ぐのに「何でMBAに行くのか?」 思われることでしょう。普通はMBAを取得した後に外資金融などにキャリアチェンジなどを考えます。でも、自分は豆腐屋をやるので、そのようなキャリアチェンジは考えていない。それにもかかわらず、 授業料等で1000万円ほどMBAに投資しました。

いくつか理由があるけど、 一つはキャリアのリスクヘッジのために行きました。 ずっと社会人でサラリーマンをやっていて、安定した人生を送っていたため、父親の会社を継ぐのはハイリスク・ハイリターンの決断でした。そのため、少しでもリスク耐性をつけておきたいと考えました。ハイリターンを得るためにはハイリスクをとるのが基本原則です。

ゆえに、チャレンジングなリターンを求めるために、自分にリスク耐性がないといけないわけです。すこしでもリスクを抑えることで攻めの選択をできる。MBAを取っておけば、もし事業が失敗したとしても、人生ジ・エンドにはならないだろう。だったらガンガン攻めていこうというマインドを持てる、と思いました。

なぜそう思ったかというと、ハーバードのビジネススクールで教授が学生に伝えたある言葉がきっかけです。

最後の授業で、

「ハーバードMBAの学生は世界で一番リスクを取れる人たちです。

 だから、世間体や安定を求めて職探しをしてはいけない。

 リスクを取って自分のやりたいことをやりなさい。

 それをできるのがあなた達の一番の特権です。」

という話をしてたらしいのです。それを聞いて目から鱗でした。

あと、自分は営業ばかりだったから、経営全般やアジアビジネスの勉強もしてみたかったんです。また、大きい会社だと会社の看板である程度信頼を作りやすい。でもスタートアップだとそうはいかない。取引先との信頼を獲得するためのシグナリング効果としても、MBAがあると便利ではないかと考えました。

AKB48のビジネスモデルについて、授業でプレゼンするカオさん

MBAを取るだけでは給与は上がらない?

− やりたいことをやるって簡単のようで難しいですよね。実際MBA時代は大変ではなかったですか?

カオ:実際に行ってみて、普通に楽しかったですよ! すごく忙しくて睡眠時間も短く、1日12時間勉強の日々が続きました。

そして、MBAの価値は論争が結構あります。 結局のところその投資に見合うかどうかです。

結論、目的によると思います。 純粋にキャリアチェンジやステップアップ、給与アップのためにMBAを取るのは割りに合わないかもしれません。 なぜなら、MBA取ったら即仕事のパフォーマンスが急激に上がるか、というとそうでもありません。「能力=給与」という原理原則で考えると、MBAとったからといっても給与は急激に上がるわけじゃないですよね。

そのため、金銭的な投資に対するリターンを取り戻すのには時間がかかるかもしれません。恐らく10年くらいかな?

− そんなにリターンを取り戻すのに時間かかるんですね。 それでも取得するというのは、どんなメリットがあるんですか?

カオ:金銭面以外の部分でいかに価値を見出せるかが大事です。

それはなにかというと、自分の場合は、世界中から優秀な人たちが集まる場所で、毎日のように議論し、たくさんのプロジェクトを回していく。時には喧嘩しながら、チームに対して何か貢献をしなきゃと必死になる。そうして結果が出せた時は、大きな自信につながります。何と言ったって、議論から準備からすべて英語でやるので。

先ほど伝えたように、金銭が急激に上がるわけではないけど、得られる経験や自信などに非金銭的な価値を見出せるかが大事です。よく言われることだけど、人生を変えるためには自分を変えなければなりません。

カオさんのシンガポール在学時代

− どのように人生が変わったと感じられていますか?

カオ: 人脈が大きく広がる というのがひとつあります。サラリーマン時代は新しい出会いというのは限定的で、世界が狭かったと思います。一方MBAを取ってからは、世界が一気に広がったと思います。今までなら絶対会えないような人をたくさん紹介して頂けるようになりました。

自分の知らなかった世界の最前線で活躍している人たちと知り合い、友人として、またはビジネス相手として付き合えるというのはとても刺激的です。 人生の質がガラッと変わった気がします。オススメです!

−何が一番刺激的ですか?  私もMBAとってみたくなりました!

カオ:是非チャレンジしてみてください! 刺激的なことは、繰り返しになりますが、 世界のエリート達と知り合って一緒に本気で戦えること。

あとは、純粋に経営論を学ぶのも楽しいですよ。営業出身なので知らないこともたくさんありました。会社の意思決定をするにあたって、ミクロ経済で学んだ考え方が意外と役に立ったり、知的好奇心は大いに満たされます。教授のレベルも高く、その方々に直接レクチャーを受けられるのは楽しく、刺激的でした。

以上が「何でMBA?」の質問に対する回答の第2ステージでした。

第3ステージはベトナムに来てからです。

(~後編へ続く~)

>> 前編では、ベトナムローカルマーケットを狙うその背景を公開!→ こちら

>> 後編では、最後にキャリアに悩む読者にエールを送りします!(4月25日)

著者紹介
JellyfishHR Co.,Ltd
2013年8月から日系人材紹介会社としてベトナムに進出。現在「ハノイ」「ハイフォン」「ホーチミン」の3拠点にて、日系、非日系問わず人材紹介サービスを提供しており、常に100件を超える日本人向けのベトナム勤務の求人・仕事を保有している。
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