チャムさんは心を打たれ、バリカンを手にして試行錯誤し、1時間近く格闘した末にようやくカットが仕上がった。以来、その男性客は友人たちにもチャムさんの店を紹介し、応援してくれている。
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「その時は自分で納得のいくカットができず、お客さんにも申し訳ない気持ちになりました。でも、何よりも私に片腕でカットするという機会をくれたそのお客さんに心から感謝しています。実際に片腕でカットするのは、入院中に想像していたよりもずっと難しいことでした」とチャムさんは打ち明けた。
しかしながら、全ての客が片腕でのカットを受け入れられるほど「勇敢」ではなく、店まで来て帰ってしまう客もいた。また、片腕でのカットを試した後に、二度と来店しなかった客もいる。
事故に遭ってから半年が経ち、チャムさんの店を訪れる客は減り、1日に1人しか来店しない日もあった。チャムさんは自分が十分に仕事をこなせていないこともわかっていたため、カット代もあえて少なく受け取っていた。
チャムさんは理容師を辞めて自宅でベビーシッターの仕事を始めようとしたが、ある時、息子が自分の真似をして片腕だけで学校の準備やあらゆる作業をしていることに気づいた。「息子は歩く時、片腕だけ振って、もう片方の腕は身体に沿わせていたんです。家事を教えても片腕しか使いません。なぜかと聞くと、『お母さんと同じようにやっているだけだよ』と答えたんです」とチャムさん。ベビーシッターをしても、世話をする子供たちが息子のようになってしまうことを恐れ、チャムさんはベビーシッターに転職することを諦めた。
店では、ヘアカットの仕事は少なくなったものの洗髪の頻度が増え、右腕1本で以前の両腕の役割をこなした。毎回仕事が終わるとあまりの疲労で腕に力が入らなくなり、手は震えた。口と歯を使って水道の蛇口をひねるため、口元も痺れた。
それでも客が増えることはなく、チャムさんはアシスタントを解雇しなければならなくなった。店を辞める前にアシスタントたちは皆で集まって、髭剃り用のカミソリを小さく切り分けてチャムさんが少しずつ使えるようにした。片腕ではカミソリを切り分けられないことを知っていたからだ。チャムさんは、その小さなカミソリを使い切ったら髭剃りのサービスを辞めるつもりでいた。