今年も中秋節の時期がやってきた。中秋節は旧暦8月15日、2015年は新暦9月27日に当たる。ベトナムの中秋節はいわば子どものお祭り。中秋祭といえば、灯篭や月餅を連想する。あちこちの通りでは、演舞団が太鼓をたたき、獅子や麒麟が舞い、土地の神様がおどけながら観客を惹きつける。これは、日本の獅子舞に似た「ムアラン(múa lân)」と呼ばれるベトナムの演舞だ。
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(C) kenh14, ハンさん(中央)と団員 |
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演舞が終わってから、小さな子どもたちが汗だくになって踊っていたのだということに気づき、人々は驚く。中秋節を指折り数えて待つ子どもたちがいる一方、家族と離れ、演舞団の団員として生計を立てるため日々の厳しい練習に耐えなければいけない子どもたちがいるのだ。
その子どもたちは、今年50歳になるルオン・タン・ハンさんが創設したハンアインドゥオン演舞団に所属している。現在、ハンさんの演舞団は、孤児やストリートチルドレン、また家庭環境が厳しいため両親から送られてきた子どもたち約30人を養育し、演舞だけでなく文字や生活についても教えている。貧困の中で育ったハンさんは、演舞を教えることで少なくとも今後この仕事をしていくことができると考え、誰でも拒むことなく受け入れている。
土日を除いて毎日2時間、簡単なものから複雑なものまで、ハンさんは様々な演舞を子どもたちに教えている。ハンさんによると、彼らの長所を最も発揮することができる演舞はムアランだという。ムアランが踊れれば、開店祝いやお祝い事、旧正月(テト)などに呼ばれ、彼ら自身で生計を立てることもできる。
「私にとって彼らは皆兄弟のようであり、孫のようであり、自分の子どものような存在です。ここにいる子どもたちの置かれた環境はそれぞれ異なりますが、皆演舞が好きで、困難を乗り越える力があり、才能があり、仕事を愛する心があります。彼らは共に学び、いずれは彼ら自身の演舞団を創設できるようになるでしょう。自分の生計を立てるだけでなく、他の子どもたちの養育までできるようになると信じています。そうなれば人生はより楽しくなるでしょう」とハンさんは教えてくれた。
演舞を教え始めた当初、子どもたちは頑固で指導しても聞かなかった。それでもしばらくの間教え続けると、子どもたちの気持ちが徐々に分かるようになり、正しいこと、間違っていることを教えられるようになった。数か月でいくつかの簡単な演舞を覚える子もいれば、地神の踊りから先に進めない子もいるが、ハンさんの演舞団では子どもたちを差別しない。