東京でのリスナー交流会では、放送が始まるテーマ曲の後のアナウンスの再現がリクエストされた。参加者全員が口ずさむテーマ曲の後、トゥエットさんは感動で言葉を詰まらせながら「こちらはベトナムの声放送局です。この放送はハノイからお送りしている日本語放送です。日本のみなさんこんにちは。マイです」とアナウンスし、盛り上がった。
(C)VOV、トゥエットさん |
トゥエットさんがVOVで働いていたのは、ベトナム戦争あり市場メカニズムの導入ありの激動の時代だった。1993~1995年には日本語課員がトゥエットさん、ファム・ティエン・ホアイさん(退職後死亡)、タ・ティ・ディエムさん(退職)の3人しかいない危機的な状況だった。その間もトゥエットさんは番組を制作しながら、次世代となる私達の育成に心血を注いだ。
トゥエットさんは、VOVでの10倍の給与を払うとの日系企業からの転職の誘いを断ったこともある。それに驚くと、「皆転職してしまったら日本語放送がなくなってしまうでしょ」。20年近く前に聞いたその言葉は、同様の誘いを受けることもある今なら理解できる。
トゥエットさんは、VOVとNHKとの関係強化にも貢献した。1997年には、NHKラジオがVOVのスタジオから12時間半、生放送した。この時のトゥエットさんの働きについて、後にNHKからVOVの幹部宛てに「彼女の助けがなければ成功できなかった」と感謝状が届けられた。
現在、日本語課スタッフは専門家の小松みゆきさんを含め7人で、うち1人が東京の特派員として活躍中だ。