ベトナム人の母親とアルジェリア人の父親の間に生まれた女性ジャミラ(39歳)は11月にハノイ市で開かれた第1回「在外ベトナム人世界会議」に出席するため、初めてベトナムを訪れた。会議出席者の中で、頭をスカーフで覆った彼女の姿と幸せそうな笑顔はひときわ目立っていた。
彼女自身は戦争を経験していないが、彼女と10人の兄弟たちの出自には戦争が深く関わっている。父親はインドシナ戦争中の1950年にフランス海軍の兵士として従軍したが、まもなくこれが大義のない侵略戦争であることに嫌気が差し、フランス軍を脱走してベトナム人民軍の兵士となった。彼はベトナム人の看護師と出会い結婚、1964年にアルジェリアへ帰国するまでに3人の子どもに恵まれた。彼は帰国後もアルジェリアを解放するためフランス軍と戦い続けた。
ジャミラは小さいころから母親からベトナムについて聞かされていたが、アオザイや両親のベトナム時代の写真を見て想像するしかなかった。母親は11人の子どもたちにベトナム語を教えるとともに、ジャミラにはネムの作り方やヌクマム(ベトナム魚しょう)の使い方を教えた。その母も1992年に亡くなった。彼女はいつしか「いつの日かベトナムを訪れなくては」と思うようになっていた。今回の在外ベトナム人世界会議への出席は、彼女にとって母親の故郷を訪れる素晴らしいチャンスであり、世界で活躍している多くの越僑たちと知り合う機会にもなった。
ジャミラは今、アルジェリアのビルセバ(Bir Seba)石油ガスグループで働いているが、将来は「ベトナム・アルジェリア文化協会」の設立を希望している。アルジェリアには、彼女のようにベトナム人の母とアルジェリア人の父を持つ家族がおよそ100世帯あるが、文化協会の活動で彼らの結び付きを強めることができると考えている。「これからはもっとベトナムに足しげく通って、ベトナムに対して何ができるか考えていくつもりよ」。