日本には「お正月に掃除をすると福の神を追い出すことになるのでダメ」といったタブーがありますよね。ベトナムでも同様に、テト(旧正月)にやってはいけないことが色々あります。うっかりやってしまったことで自分にだけ不幸が降りかかるのであればいいですが、「あなたのせいで今年は良くなかった」と恨まれることになっては困りますので、知っておくことに越したことはありません。ここでは、そんなお正月のタブーをご紹介しましょう。地域によってタブーの内容は異なり、南部に行くほどタブーは緩いようです。
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知っておくべき4つのタブー
元日は親族以外の家を訪問しない
ベトナムでは、元日最初の訪問者がその年の家の運勢を左右すると考えられています。地方によっては、年回りのいい人を選んで一番最初の訪問者となってもらう風習があります。従って、テト最初の訪問者にならないよう、相手に呼ばれない限り元日(特に午前中)にベトナム人宅を訪問するのは避けましょう。ベトナム人も元日は親族宅のみ訪問するのが普通です。
喪中の人、病人や怪我人は知り合いの家を訪問しない
身内に亡くなった人がいる人や、病人、怪我人は、訪問した家に不運を呼び込んでしまうと考えられているので、親族の家以外の訪問を控えます。また、前年に自分の会社が倒産したなどの大きな不幸に見舞われた人も、不幸を招き入れると考えられているので、避けたほうがよいでしょう。
ケンカをしてはダメ
テトに言い争ったりケンカしたりすることは避け、楽しい雰囲気を保たねばなりません。子供をしかりつけるのも我慢します。テトに雰囲気が悪くなると、幸運が逃げていくと考えられています。また、不吉な言葉、例えば「死ぬ」「別れる」「壊れる」といった言葉も避けます。
掃除しない、ゴミを家から外へ出さない
日本でも、大晦日までに大掃除を済ませ、正月3が日は掃除をしないという風習がありますが、ベトナムも同様に大晦日までに家の綺麗に掃除し、テト3が日は掃除をしません。埃の中には「財産の神」が隠れているといういい伝えがあるからです。特に元日は箒で掃いてはならず、2日~3日は汚れがひどくて仕方なく掃いてゴミを集めたとしても、家の外に掃き出さず、部屋の隅にためておきます。これは、箒でその年のお金や幸運をすべて掃き出すことになるから、という観念からです。3が日は家の外に一切ゴミを出しません(ゴミ回収も来ません)。
ベトナム人と結婚し、テトをベトナムの実家で過ごす際、気を利かせたつもりでうっかり掃除をしてしまわないよう気をつけましょう。
なお、北部では、テトに箒を盗まれるとその年は財産を盗まれる年になってしまうと考えられているため、箒がなくならないように隠しておくそうです。
知っておくと良いタブー
火を貸してはダメ
ベトナムでもテトにお寺へ初詣に行きますが、その時線香に火をつけるためのマッチやライターを忘れてしまうと大変。生活に欠かせない火を誰かに貸すと、自分の幸運が逃げてしまうと考えられているため、誰も火を貸してくれません。忘れずに持参しましょう。
水や米をあげてはダメ
テトに生きるために必要な水や主食である米を家から持ち出して他人に与えると、幸運や財産も一緒に家から出て行ってしまうと考えられています。
大きなお金を払ったり貸したりしない
テトにお金が外に出ると、その1年はお金が出て行く年になると考えられていますので、大きな支払いをしたり、人に貸したりしないようにします。箪笥や金庫からお金を取り出すのも良くないと考えられていますので、お年玉は大晦日のうちに袋にセットし、外に出しておきます。
お皿を割ってはダメ
テトに皿や茶碗などが割れることは、人間関係が壊れる予兆だと考えられていますので、割らないよう気をつけましょう。でも、気をつけたって割れるものは割れる。もし割れてしまった場合、ベトナム人は、皿の割れる音は「phát(ファット)」と聞こえ、「phát=発(発達、発展)」という意味だから縁起がよい、ということにするようです。
白や黒の服は避ける
ベトナムでは、古くから白と黒が「喪」の色とされているため、元日に着るのを避けたほうが良いという人もいます(気にする人は少ないです)。お正月には赤や黄色といった縁起の良い色の服が好まれます。また、みんながテトには新しい洋服を着ますので、周囲は下ろしたての服を着ている人ばかり。そんな中、ヨレヨレの服を着ていると目立ちます。誰かの家を訪問する時はパリッとした洋服をして出かけましょう。訪問先では友人の両親など年長者と会う機会も多いので、失礼にならないよう男性は長ズボンが無難です。
その他
ほかにも、◇女性が髪を解いてバラバラにする、◇犬肉やアヒル肉を食べる、◇猫が家に入る(猫mèoと貧乏Nghèoの母音の発音が同じなので。逆に犬が入るとラッキー)、◇テト1~2日に洗濯する、◇寝姿を写真に撮る、◇新生児のいる家を訪問する、などをタブーとする地域があるようです。
地域や家庭によってタブーをどの程度重視するかかなり差がありますので、ベトナム人配偶者の実家でテトを過ごす場合には、どのようなタブーがあるか、あらかじめ確認しておきましょう。
まとめ
とりあえず、一般の外国人に直接関係があるのはベトナム人宅の訪問でしょう。ベトナム人の知り合いが多い方は、「外国人=珍しい=縁起がよい」という意味合いや、「テトに家族と過ごせないなんて気の毒」という考えから、色々な人が「遊びにおいで」と声をかけてくれると思います。そんな時は、言い争うことなく楽しい会話や笑顔で場を盛り上げ、そのお宅の新年が幸福であることを願いましょう!
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