前回、お年玉の相場について書きましたが、さて、実際に渡すときはどうすればよいのでしょうか。お年玉をもらったら、日本では「ありがとうございます」と言えば大丈夫ですが、果たしてベトナムは? ベトナムでのお年玉の渡し方、受け取り方をご紹介したいと思います。
(C) VIETJO Life 「ひつじ」年、ベトナムでは「やぎ」年なので、山羊の図柄が。
お年玉は専用の袋に入れる
お年玉は日本のぽち袋のような小さい封筒に入れて渡します。お年玉袋のことを「Bao lì xì(バオリーシー)」と言います。日本のぽち袋と同じぐらいの大きさのものから、お札を曲げずに入れられるサイズのものもあります。外貨などめずらしいお金を入れる場合は、折り曲げないでよいサイズがいいでしょう。
また、この時期になると各企業が顧客に自社のロゴマークの入ったお年玉袋を配ります。日本だとそんなの使うのは恥ずかしい気もしますが、ベトナムでは配る相手が多く袋が足りなくなることもあるので、あまり気にせず使っているようです。
(C) VIETJO Life
テトが近づくと市場や街角の商店などでお年玉袋が売られるようになります。値段は様々ですが、安いものだとぽち袋サイズで6枚1セット5000VND(約30円)、お札を折りたたまなくても入るサイズだと6枚1セットで1万5000VND(約83円)程度と、たくさん買ってもさほど負担にはならない価格です。お札がポリマー製に変更され折りたたみにくくなったことから、現在の主流は大きなサイズの袋。でも、日本の小さなぽち袋を使っても、「珍しいもの=縁起がいい」ので喜ばれたりします。ぽち袋は、縁起のよい赤やピンク、黄色など縁起の良い色調のものを選んだほうが良いでしょう。
出かけた先に思いがけずたくさんの子供たちがいて、袋が足りなくなってしまった、なんてこともよくあります。そういう時は、袋がなくなってしまったことをアピールしつつ、お札を小さく折りたたんで握らせれば大丈夫です。
新札がいいけれど、こだわらなくても大丈夫
お年玉に使うお金は、基本的には新札です。以前は銀行で引き出しや両替の時に「○万VND札の新札でお願いします」と言えば新札を受け取ることができましたが、最近は小額紙幣が増えすぎている問題やコスト削減などでテト前の紙幣増刷を制限しており、銀行で簡単に手に入れることができなくなりました。そのため、ベトナム人は知り合いの銀行員に頼んで確保してもらったり、手数料を払って両替商から新札を手に入れています。しかし、両替サービスは手数料がかなり高い上、法律違反でもあります。
新札の入手が難しくなったことで、最近はお年玉のお札が使用済みのものであることもごく普通になっていますので、新札にこだわる必要はないでしょう。普段から新札や綺麗なお札があればお年玉用にとっておくようにするといいですし、テトが近くなったらお年玉用に5万VND以下のお札は使わずにとっておき、準備しておきます。
渡すタイミング
テトがきて一番最初に会った時に渡しますので、出かける時は必ずお年玉袋にセットして持って出かけます。相手によって金額が違いますので、金額ごとに封筒の大きさや柄を変えておくと、中身を確認せずすぐに渡せて便利です。
テトに会う機会がないとわかっているけれど渡したいという場合(会社の部下など、労いの意味合いが強いもの)は、テト前に渡してしまうケースが多いようです。逆に、子供たちにテトの挨拶として渡すものについては、テトが終わってからようやく会ったときにわざわざ渡す必要はありません。
豆知識
お正月になってからお金の準備をすると、その年はお金がどんどん出て行くとも言われていますので、縁起を担ぐ人は大晦日までにお金を袋に入れておきます。また、お正月に引き出しの中などから取り出すのもやはり「お金が出て行く」イメージなので、あらかじめ外に出しておきます。
何といって渡せばいいの?
「お年玉をあげる」といって渡します。ベトナム語は以下の通りです。
(年下の人に渡す場合)
Mừng Tuổi cho em(ムントゥオイ・チョー・エム) [北部]
Lì xì cho em(リーシー・チョー・エム) [南部]
「Mừng Tuổi / Lì xì」は「お年玉」、「cho」は「~にあげる」という意味。「em」は年下に対して使う人称ですが、相手が自分の子供より下の年齢の場合は、「em」を「cháu(チャウ)」(子供・孫の人称)に変えます。(人称を変えるのが難しい場合は、「em」の部分に相手の名前を入れても良い)
ベトナム人が子供に渡すときには、この後に、「Chúc cháu mau ăn chóng lớn, học giỏi, ngoan ngoãn, nghe lời bố mẹ ông bà nhé」(早く大きくなって、成績優秀で、素直で、お父さんお母さんの言うことを良く聞く子供になりますように)、両親に渡すときは、「Chúc bố mẹ sống lâu trăm tuổi, mạnh khỏe」(お父さんお母さんが100歳まで長生きして健康でありますように)といった願いの言葉を述べながら渡しますが、外国人にはちょっと難しい。そこで、簡単に以下のように言うとよいでしょう。
Chúc năm mới vui vẻ(チュック・ナムモイ・ヴイヴェー)
意味:Chúc=願う・祈る、năm mới=年、vui vẻ=楽しい → 新年が楽しいものでありますように
お年玉を渡すと、相手もこちらに対して願いの言葉を返しますので、相手が言い終わるまでニコニコしながら聞きましょう。「Chúc bác năm mới nhiều sức khỏe」(新年に健康でありますように)というものから、「Chúc bác tiền vào như nước sông Đà, tiền ra nhỏ giọt như cà phê phin」(ダー川の水のようにたくさんお金が入って、コーヒーフィルターの滴のように少しずつお金が出て行きますように)とか、「Chúc anh năm mới vui vẻ, có nhiều tiền lẻ lì xì cho em」(新年が楽しく、お金がたくさんあって、その小銭が私のお年玉になりますように)といった洒落っ気たっぷりの言葉もあります。
相手が述べ終わったら、「Cảm ơn em(カムオン・エム)」(ありがとう)とお礼を言います。相手の年齢により、「em」を「cháu(チャウ)」(子供・孫の人称)などに変えます。
自分の子供がお年玉をもらったら
(C) VIETJO Life
小さなお子さんがいる場合には、ベトナム人からお年玉をもらう機会も多いと思います。日本人カップルの子供の場合は、こういうときどうすればいいのか、勝手がわからなくて困りますよね。頂いたらまず、ベトナムの尊敬を表すポーズ(写真のように)をさせます。外国人ですから、「ありがとうございます」だけでも大丈夫ですが、ベトナム語で「Cảm ơn(カムオン)」だけだとかなりぞんざいに聞こえます。子供が言う場合には以下のように言います。
Cháu cảm ơn bác (チャウ・カムオン・バック)
「cháu」は相手から見て子供や孫にあたる年代の人が使う人称、「bác」は自分の親よりも年上の男性・女性に対する人称。これら人称がなくても意味は通じますが、人称をきちんと入れると礼儀正しく聞こえます。「bác」の部分については、相手が自分の親よりも年下の男性の場合は「chú(チュー)」、女性の場合は「cô(コー)」に変えます。
更に、もし言えるようであれば、先に書いたように、お年玉をもらったら相手の幸福を願う言葉を述べます。次のような簡単な言葉で良いでしょう。
Chúc bác năm mới vui vẻ(チュック・バック・ナムモイ・ヴイヴェー)
意味:新年が楽しいものでありますように
渡すときの言葉と殆ど同じですが、目下の者が目上に言うので、願う相手の人称「bác」(伯父さん、伯母さん)が入っています。この部分は、相手が子供の親より若い年齢であれば「chú」や「cô(コー)」になります。この言葉は、大人が目上の人からお年玉をもらった時にも使えます。
ベトナム語は無理、という場合は、英語で「I wish you a happy new year」(良い年でありますように)と言っても、気持ちは十分伝わるでしょう。
なお、日本と同じで、お年玉は両手で受け取ります。子供が相手の前で中身を見るようなことのないよう気をつけましょう。
まとめ
ベトナムは外国人に比較的寛容なお国柄なので、ベトナムの習慣通りできないからといって、問題が生じることはまずありません。でも、ベトナム流に対応できると、ベトナムの文化を理解しようとしているということが相手に伝わり、お互いの親密さが増すことは間違いないと思います。お正月という特別な時ですから、是非ベトナムの習慣にならって、周りの人たちを幸せな気持ちにしたいものですね。