ホーチミン市ハイバーチュン通り、タンディン教会の向かいに"Pho Bo"(牛肉のフォー)ならぬ"Pho Da Dieu"(ダチョウ肉のフォー)を出す店がある。フォーにも地方によって差はあるが、牛肉か鶏肉を使用するのが常識だ。一体、ダチョウ肉のフォーとはどんな料理なのか。そして店主はどんな人物なのだろうか。
まず気になる味の方だが、香りが良く、独特な甘みが特徴。濃厚で生姜の風味がきいたスープは肉のにおいを中和させているのだろう。薄切りにされた肉はほどよい歯ごたえだ。値段は一杯2万7000ドン(約200円)、ダチョウのスジが入ったスペシャルは3万7000ドン(約270円)だ。店の特徴は料理だけではない。店内は清潔な上にダチョウの皮を使った工芸品や卵の殻に装飾を施したランプを飾るなど洒落た内装となっている。
店主はティエン・サン・チ氏(36)、少数民族のチャム族だ。東南部ニントゥアン省で生まれ育ち、メコンデルタのカントー大学で経営学を学んだ。卒業後は独学で日本語を学び、94年にはサイゴン・ツーリスト社で日本人担当として働いた。当時は日本語を学ぶにも教科書すらなく、自らNHKに手紙を出して教材を手に入れたという逸話も。
転機は95年に訪れた。当時のグエン・コン・タン副首相が南アフリカを訪問した際にダチョウの卵を贈与されたというニュースを耳にしたのだ。早速、故郷に22ヘクタールの土地を購入し、北部ハータイ省の家禽研究所からヒナを分けてもらった。こうしてダチョウの飼育が始まった。飼育は順調で、10羽のヒナが現在では100羽にまで増えた。ホーチミン市のレストランへの営業も活発に行い得意先もできた。ダチョウの皮や卵の殻を使った工芸品も革製品加工所や芸術家と協力して品質を高めてきた。
そしてついにダチョウ肉のフォー屋の開店までこぎつけたのだ。チ氏の「ダチョウ・ビジネス」の挑戦はまだ終らない。彼は近くダチョウ料理のレストランを開店する予定だ。