ホーチミン市保健局はこのほど、市内の醤油醸造会社に義務付けられていた製品中の発ガン性物質・3-MCPD(モノクロロプロパンジオール)含有量の報告期限を6ヶ月間延長する決定を行なった。これは今年7月、ベルギー食品品質局が、同国に輸入されたベトナム産醤油から欧州連合(EU)基準(1kgあたり0.05mg未満)の1720倍(86mg)を超える発ガン性物質(3-MCPD)が含まれていると発表したことを受けたもので、今年8月31日までに各醸造会社に報告が義務付けられていた。
保健局によると、報告期限を過ぎた10月中旬現在でも報告を行なった醤油醸造会社はわずか10社にとどまっている。このため期限を6ヶ月間延長し06年2月末までに報告を行なうよう再度通達したとしている。しかしこの報告期限延長の裏には製品に含まれる3-MCPD含有率が基準を満せないために報告できないといった事実がある。
市内の醤油醸造会社によると、3-MCPD含有率に関する報告には最低6ヶ月から1年かかるという。その理由はこれまでの製法ではどうやってもベトナム保健省の規定する3-MCPD含有率基準(1kgあたり1mg未満)を達成できず、達成するには醸造方法の変更に伴う新たな製造ラインの導入が必要になるため、資金繰りに目処がつかないためだ。
また、新たな醸造方法で製造され3-MCPD基準を達成した醤油は、これまでの風味と異なるため売上が落ちるとして躊躇する醸造会社もある。新製法方法で醸造される「より安全な」醤油はこれまでのように強い香りがなく、また少し苦味が出るためこれまでの味に慣れ親しんだ利用者が敬遠するという危惧がそこにはある。このため昔ながらの製法で「香りのよい」醤油を製造する醸造会社が依然大半を占めるのが現状なのだ。