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- 嗜好品、夫婦の象徴でもあるビンロウジ
- 23年に「結婚用ビンロウジ通り」設定
- 不景気で活気消え、商売上がったり
「最近じゃビンロウジ(檳榔子、ヤシ科植物ビンロウ(檳榔)の種子)に関心を持つ人はほとんどいなくなった。結婚式用に買う人も少なくなって、嗜む人はほとんどいなくなった。好きで仕事を続けているけれど、商売は上がったり」。ホーチミン市6区レクアンスン(Le Quang Sung)通りのビンロウジ売り、ホアさん(女性・71歳)はこう言う。
ビンロウジは、刻んだりすりつぶしたりしたものをキンマ(コショウ科植物)の葉にくるんで少量の石灰と一緒に噛む嗜好品として、また夫婦の象徴とされることから婚約・結婚の儀式で新郎が新婦の家へ贈るものとしても使われる。
ホーチミン市は2023年6月に、6区レクアンスン通りを「結婚用ビンロウジ通り」として設定した。この通りには、ビンロウジを専門に商う店が16ほど並ぶ。ホアさんによると、「通り」の設定以来、買いに訪れる人は増えたというが、しかしそれも一時のこと。2024年に入ってからは、不景気もあって、活気は消えた。1968年からここで商売をしているが、今年ほど売り上げがない年はないとホアさんは言う。
「昔はそれは賑わったもので、1人じゃ手が回らなかった。売り上げも1日数百万VND(100万VND=約6000円)はあった。でも今じゃ、良い日でも数十万VND(10万VND=約600円)がやっと」とホアさん。
ビンロウジはホーチミン市ホックモン郡や南部メコンデルタ地方の一部の省から仕入れる。運送費ほか物価は様々上がっているが、ビンロウジの売値は「気持ち」しか上げられない。値上げすれば、売れ行きはさらに悪くなるからだ。荷物運びなどに人を雇う必要もあり、儲けはいくばくもない。
ホアさんの店の側で商うトゥイさん(女性・60歳)も、「昔は家族6人を養えたけれど、今は自分1人が食べていくのでやっと」と言う。
この通りでビンロウジを売る人はほとんどが女性で、最も若い人で50歳、最も年上で80歳超。ほとんどが、代々受け継いで商売をしている。ホアさんは、母親と一緒に14歳からこの商売をしており、母親が亡くなってからも、商売から離れなかった。「以前ここには、100人は下らないビンロウジ売りがいたけれど、今や数えるほど。この商売の火が消えないよう、体力が続く限りやろうと思っているよ」とホアさんは語った。