[特集]
ホーチミン、花の少ない13本の「花通り」
2025/03/30 10:14 JST更新
) (C) thanhnien |
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ホーチミン市フーニュアン区のファンシックロン(Phan Xich Long)通りの周辺には、全長1kmにも満たない13本の通りが集まっている。これらの通りは様々な種類の花の名前にちなんで名付けられており、碁盤の目のように交差し、市内中心部に平穏で緑豊かな空間を作り出している。
13本の通り名は、◇ホアラン(Hoa Lan):ラン、◇ホアスー(Hoa Su):プルメリア、◇ホアフオン(Hoa Phuong):ホウオウボク(カエンジュ)、◇ホアカウ(Hoa Cau):ビンロウ、◇ホアクック(Hoa Cuc):キク、◇ホアフエ(Hoa Hue):チューベローズ(ゲッカコウ)、◇ホアダオ(Hoa Dao):モモ、◇ホアマイ(Hoa Mai):オクナ・インテゲーリマ(ミッキーマウスの木)、◇ホアライ(Hoa Lai):ジャスミン、◇ホアスア(Hoa Sua):ジタノキ、◇ホアティ(Hoa Thi):カキノキ、◇ホアザイ(Hoa Giay):ブーゲンビリア、◇ホアチャー(Hoa Tra):ツバキだ。
ベトナムの通り名といえば、歴史上の人物や出来事にちなんだものが多いが、フーニュアン区では花の名前にちなんで名付けられたこの「花通り」が真新しさを生み出し、ホーチミン市の色彩豊かな美しさをさらに彩っている。
多くの文献によれば、フーニュアン区の「花通り」はフランス植民地時代の末期に形成された。このエリアには、庭付き一戸建てや豪華な複数階建ての住宅が数多く立ち並び、緑の木々が日陰を作っている。また、高級なレストランやホテル、カフェ、美容サロンなども集まっている。
どの通りも見た目は似通っており、行き止まりもたくさんある。地図を見ると、13本の中で最も長い通りはホアラン通りで、全長約650mだ。一方、ホアライ通りは最も短く、40mほどしかない。ホアライ通りはホーチミン市で最も短い通りの1つでもある。
地元の人々によれば、これらの通りの名前の並びに法則はなく、何らかの順番や基準に従っているわけではないという。他のところから来た人はもちろんのこと、ここに長く暮らしている人ですら、ときどき道に迷ってしまう。しかし、その法則のなさもまた、他のところではなかなか見られないユニークな特徴を作り出している。
ホアラン通りに長く住んでいるグエン・ティ・フエさん(女性・55歳)によれば、このエリアは静かで清潔で、暮らしやすいという。人通りの少ない細い通りと、住民が植えた多くの木々によって、フエさんのように静かで落ち着いた暮らしを好む人々にとって理想的な居住エリアとなっている。
「飲食街(フードストリート)であるファンシックロン通りに近いものの、そこまで騒がしくありません。近所付き合いも良好です。昼間は、大人は仕事に、子供は学校に行き、我々のような高齢者だけが家にいて、あれやこれやと家のことをしています。夜になると人が多くなりますが、だいたいは大きな通りのほうで、こちらは大したほどではありません」とフエさんは話す。
フエさんは、ここで暮らしていると都会の喧騒から離れられると語る。朝目覚めると、木々のおかげで空気もきれいで涼しく感じられる。また、「花通り」の近くに住んでいる人々もよくここを訪れ、散歩をしたり、朝食をとったり、コーヒーを飲んでおしゃべりをしたりしている。
フエさんによれば、ファンシックロン通りと「花通り」のエリアは数十年前、近くを流れるニエウロック運河の汚染の影響を受けて「黒い水の集落」と呼ばれていた。現在の様子を見ると、このエリア全体にそのような「過去」があったとはなかなか信じられないだろう。
しかしながら、それぞれの通りが通り名と同じ花であふれているのだろうと思いきや、実際のところ「花通り」に花は少ない。
ホアマイ通りのカフェの警備員であるホアン・ナムさん(男性・52歳)によれば、飲食目的でこの通りを訪れた人々は、どうして「花通り」に「花」がないのかとよく疑問に感じるのだという。ホアラン通りにはランが、ホアフエ通りにはホウオウボクがたくさん植えられているものと勘違いするのだ。
「ここは『花通り』ではありますが、敷地面積も狭いので、あまり多くの花は植えられていません。でもその代わりに、このエリアにはたくさんの木々があり、ホーチミン市の中でも緑豊かなスポットになっています。ここ数年は、通り名にふさわしく、また通りをより色鮮やかにするため、ブーゲンビリアのような育てやすい花を植える住民も増えています。特に、このあたりにはナンバンサイカチの木がたくさんあり、花が咲く季節には辺り一帯が黄色く染まる様子が見られますよ」とナムさんは話す。
「花通り」で美容サロンを営むミー・アインさん(女性・30歳)によれば、通りはかなり細いが、スペースの賃貸料は安くないのだという。賑やかな飲食街に隣接しているため、このエリア周辺の物価も年々上昇している。
「ファンシックロン通りが飲食街になってからというもの、おかげで我々のビジネスも繁盛しています。飲食目的でここに来る多くの人々が、周辺を散策し、飲食のついでにカフェやヘッドスパ、ネイルなどの店にも立ち寄るからです。それに、若い人たちはこのあたりで写真や動画を撮影するのが好きみたいです。多くの花が植えられているというわけではありませんが、それでも通りは美しく、魅力的です。今後は、私も近隣住民の皆さんも、『花通り』をもっと美しくするために観賞用の植物や花を植えるつもりです」とアインさんは語る。
なお、花の名前にちなんで名付けられたこの「花通り」のほか、ホーチミン市3区には、トゥースオン(Tu Xuong)通りやバーフエンタインクアン(Ba Huyen Thanh Quan)通り、ホースアンフオン(Ho Xuan Huong)通り、グエンディンチエウ(Nguyen Dinh Chieu)通りといった詩人の名前にちなんだ名称の通りが集まる「詩人通り」もある。さらに、タンビン区には、チャークック(Tra Khuc)通り、ソンダイ(Song Day)通り、ティエンザン(Tien Giang)通りなど、川の名前にちなんだ名称の通りが集まる「川通り」も存在している。
[Thanh Nien 04:24 22/03/2025, A]
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