[特集]
チュオンサ諸島海戦で犠牲になった夫を37年間想い続ける妻
2025/03/23 10:50 JST更新
) (C) vtcnews |
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今から37年前の1988年3月14日、チュオンサ諸島(英名:スプラトリー諸島、中国名:南沙諸島)海戦でベトナムと中国の両海軍が衝突し、中国がベトナムからガックマー岩礁(英名:ジョンソン・サウス礁、中国名:赤瓜礁)を略奪した。
ガックマー岩礁の戦闘では、祖国のために戦ったベトナムの兵士64人が命を失った。64人中、3人は遺体で発見されたものの、61人は遺体すら見つかっていない。
3月上旬、南中部沿岸地方カインホア省カムラン市カムギア街区在住のドー・ティ・ハーさん(女性・58歳)は、カインホア省カムラム郡カムハイドン村にあるガックマー岩礁英雄烈士慰霊碑を訪れ、線香を手に夫の名前が刻まれた慰霊碑を見つめていた。
ハーさんの夫は、1988年3月14日にガックマー岩礁の戦闘で犠牲になった、ベトナム海軍第4地域海軍司令部第146旅団に所属していたディン・ゴック・ゾアインさんだ。
「私も子供も37年間ずっとここで彼を待ち続けています」とハーさんは声を詰まらせながらつぶやく。ハーさんの記憶の中の夫は、知的で、同僚や近所の人たちともうまく付き合う人だった。
今から40年近く前、ある日の夕暮れ時のことだった。ハーさんが自転車に乗っていると、ある若い兵士が自転車に乗せてくれないかと頼んできた。兵士は急いでいる様子で、重そうなリュックサックを担ぎ、シャツは汗でびっしょり濡れていた。
これが、2人の運命的な出会いだった。最初は単なる淡い恋心だったが、知らず知らずのうちに愛し合うようになっていった。対空砲士官だったゾアインさんは、その誠実さと温かさでハーさんの心をときめかせた。
ゾアインさんは1986年初め、第7軍区軍事学校の37mm対空砲小隊長養成課程を終えると、第4地域海軍司令部第146旅団に戻った。ちょうどそのころ、ゾアインさんが22歳、ハーさんが19歳のときに、2人は夫婦になった。
1年後には娘が生まれた。子供の笑い声の中、夜には家族皆がそばにいる、つかの間の幸せな日々が過ぎていった。ゾアインさんは、妻と子供を北部の故郷に連れて行き、両親に会わせる計画を立てていた。
しかし、その夢は永遠に叶わなかった。
1988年1月、中国はミサイルフリゲート艦1隻、巡洋艦1隻、石油タンカー1隻、上陸用舟艇1隻と、その他数隻の軍艦を派遣し、チュオンサ諸島のチュータップ岩礁(英名:ファイアリー・クロス礁、中国名:永暑礁)を実効支配した。
続けて、中国はミサイルフリゲート艦2隻、ミサイル駆逐艦2隻、支援船4隻を岩礁の周囲に停泊させ、チュータップ岩礁を守るためにベトナムの船舶の通過を阻止した。
こうした情勢の中、ゾアインさんは小隊を指揮してガックマー岩礁に向かい、岩礁の防衛と工兵部隊の支援を行うよう命令を受けた。
出発の前夜、ゾアインさんは幼い娘を抱きしめて「おうちで良い子にしていてね、お母さんを困らせちゃだめだよ!」と声をかけた。そしてハーさんには「家で子供の世話を頼んだよ。1年後に帰ってくるからね!」と言い、妻を励ました。
3月初め、チュオンサ諸島海戦のニュースを耳にしたハーさんは、心が燃えさかるように感じ、夫のことが心配で夜もぐっすり眠ることができない日々が続いた。
そして3月14日。ベトナムの声放送局(VOV)の放送で、夫と戦友たちがガックマー岩礁を守るために勇敢に戦い、犠牲になったと知ったハーさんは言葉を失った。
ハーさんは数日間、飲まず食わずで、ただ子供を抱きしめて泣いていた。その様子を見かねた夫のきょうだいたちが、北部紅河デルタ地方ニンビン省からハーさんのいるカインホア省まで迎えに来て、ハーさんと子供を夫の故郷に連れて行った。
故郷では、夫の親戚たちが慰め、励ましに来てくれた。孫を抱くたび、残されたハーさんたち母子に対する同情、そして若くして祖国のために犠牲になった息子に対する同情から、夫の母親の目には涙があふれた。
ハーさんは、ここで負けてはいけないと思い直し、子供とともにカインホア省に戻った。昼間は建設作業員として働き、夜は子供の世話をした。
37年間、夫と暮らした地で、女手一つで子供を育ててきたハーさんは、慰霊碑に刻まれた夫の名前を見るたびに涙をこらえることができない。「私はあなたとの約束をきちんと守ったわ。娘は立派に育って、私の世話もしてくれるようになったの。でも、あなたは一体どこにいるの…」。ハーさんは今もずっと、夫を想い続けている。
[VTC News 06:57 14/03/2025, A]
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