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[特集]

ビンロウの葉鞘を食器に再生利用、ビジネスクラス機内食にも活用

2025/02/23 10:10 JST更新

(C) vietnamnet
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 南中部沿岸地方クアンガイ省在住のグエン・バン・トゥエンさん(男性・41歳)は、廃棄されるはずだったビンロウ(檳榔)の葉鞘(鞘状に幹を包んでいる葉の付け根の部分)をボウルや皿、弁当容器などに再生利用し、輸出している。

 ある航空会社は、これらの製品をビジネスクラスの機内食の食器として購入・活用している。

 クアンガイ省はビンロウの産地として有名で、主にソンタイ郡とギアハイン郡の面積2000ha余りの土地でビンロウが栽培されている。通常は中国への輸出用として売るためにビンロウジ(檳榔子、ビンロウの種子)だけが収穫され、あちこちに落ちているビンロウの葉鞘は廃棄物と見なされ、経済的な価値はなかった。

 しかし5年前、地元民がビンロウの葉鞘を燃やしている様子を見たトゥエンさんは、あまりにももったいないと思い、葉鞘を何か有用な製品に加工できないかと考えるようになった。そしてインターネットで検索し、インドにビンロウの葉鞘から作られた環境に優しい製品があることを知った。

 「調べれば調べるほど、ビンロウの葉鞘から生活用品を生産することに大きな可能性を感じました。このアイデアが実現すれば、ビンロウの生産者の収入が増え、環境を保護することができ、さらに私自身も収入を得ることができるんですから」とトゥエンさんは当時を振り返る。

 トゥエンさんは早速、実行に移した。2019年末、トゥエンさんはクアンガイ省で最大のビンロウ栽培地であるギアハイン郡に生産施設を建設した。そしてインドから機械を輸入し、生産要件に合わせて組み立て、改良した。

 トゥエンさんは原材料を得るために、地元民からビンロウの葉鞘を1枚1000VND(約5.9円)で買い取ることにした。「初めのころは、私が家を訪ねて葉鞘を買い取ろうとしても、多くの人は信じてくれませんでした。今は、買い取りを手伝ってくれる代理店があるんです」とトゥエンさん。

 トゥエンさんによると、ビンロウの葉鞘が落ちるのは3月から10月にかけての時期で、平均して栽培地1haあたり年間約1万2500枚の葉鞘が得られる。1枚1000VND(約5.9円)で売れば、生産者はビンロウジの販売に加えて、年間1250万VND(約7万4000円)の収入を追加で得ることができる。

 集めたビンロウの葉鞘は、きれいに洗浄し、水に浸して柔らかくする。その後、乾かしてから熱プレス機に入れて、ボウルや皿、レンゲ、スプーン、食品トレーなど様々な形やサイズに成型する。成型時は型に入れて80~120度の温度で40秒間プレスする。

 顧客の要望に応じて様々な型を作ることができ、多様な形にプレスしたり、製品に絵柄を印刷したりすることもできる。

 「ビンロウの葉鞘をプレスした後、製品を紫外線照射装置で殺菌してから梱包し、市場に出荷する前には規定に従ってサンプルを検査に出しています。製品は十分な強度と耐水性があり、殺菌後にパウチ加工をしていて清潔なので、食品を入れることができるんです」とトゥエンさんは説明する。

 2020年、トゥエンさんはビンロウの葉鞘で作った製品を様々な展示会に出展して紹介したところ、瞬く間に注目を浴び、多くの顧客から注文を受けた。特に、ある航空会社は、ビジネスクラスの機内食の食器として活用するため、ボウルと皿の購入契約を結んだ。

 この成功を受けて、トゥエンさんは2021年半ばに生産を拡大した。現在、工場では10~12人の地元民の雇用を創出しており、労働者の収入は1日あたり20万~24万VND(約1180~1400円)となっている。工場はまた、ボウルや皿、食品トレーなどのビンロウの葉鞘で作った製品を毎月平均50万点ほど市場に供給している。

 ビンロウの葉鞘でできた製品の価格は1点あたり1000~4000VND(約5.9~23.5円)で、再利用が可能だ。環境に優しい点が特に好まれ、トゥアンさんの製品はこれまでに、オランダ、米国、韓国、カナダ、日本の5か国に輸出されており、工場の売上高は毎年20億VND(約1180万円)以上に上っている。

 トゥエンさんが現在直面している困難は、ビンロウの葉鞘で作った製品のベトナム国内の市場は、発泡スチロールやプラスチックの製品との価格差により、依然としてかなり厳しい状況にあるということだ。

 こうした中、最近、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、トゥエンさんのビンロウの葉鞘でできた弁当容器が突然注目されるようになった。そのためトゥエンさんは、今後はビンロウの葉鞘で作った弁当容器を国内市場の主力商品とし、価格も消費者が手に取りやすい最低レベルまで何とか下げるつもりだ。

 トゥエンさんは、今後も生産者がビンロウの木の根っこから先端まですべてを売り物にできるよう、ビンロウの木の他の部分についても価値を高めるべく研究を続けていくという。

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材料は本物の葉っぱだけ、環境に優しいお皿で起業した女性(2023年6月25日配信)
 

[Vietnamnet 11:00 01/01/2025, A]
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