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[特集]

ホーチミンの「宝くじ集落」に暮らす人々のテト事情

2025/02/09 10:33 JST更新

(C) thanhnien
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 ホーチミン市の「宝くじ集落」に暮らす人々の多くは、テト(旧正月)であろうといつもと変わらず、宝くじを売りに出かけては見慣れた貸し部屋(下宿)の住まいに帰る。

 彼らにとってテトの最大の喜びは、近所の人たちや見知らぬ人たちが声をかけてくれて、温かな愛情を与えてくれることだ。

 多くの宝くじ売りが部屋を借りている、ホーチミン市ビンタン区のタンキータンクイ(Tan Ky Tan Quy)通りの下宿集落は、テトの間も静寂に包まれている。

 宝くじ売りたちは懸命に路上で宝くじを売り、夜遅くに狭い部屋に帰る。テトだからといって何を買うでもなく、ただ近所の人たちや宝くじを買った人たちからの喜びの声を楽しみにしている。

 この下宿集落には、車椅子生活の障がい者や、視覚障がい者、手の不自由な人など、様々な人たちが暮らしている。彼らは、路上で宝くじを売った後に雨や日差しを避ける場所を確保するために、狭くて湿っぽい部屋を借りている。彼らにとって宝くじ売りの仕事は、毎日収入が得られ、自分の事情や健康状態にも合った仕事なのだ。

 グエン・ティ・フオンさん(女性・63歳)は、手足のない状態で生まれ、施設で育った。医師たちのおかげでフオンさんは成長し、生計を立てるために一生懸命働いた。

 フオンさんは以前、年上の視覚障がい者の女性と一緒に部屋を借りて日がな1日宝くじを売り、養母と養子のように暮らしていた。しかし、養母のような存在だったその女性が10年ほど前に亡くなり、フオンさんは1人暮らしになった。

 フオンさんの家賃は月に180万VND(約1万1000円)だ。宝くじを売りに行く時間は決まっていないが、テトの間は休まず、お金を稼ぐために出かけていく。フオンさんの喜びは見知らぬ人から贈り物をもらうことで、もらったものはテトの食事にする。

 「テトにはたくさんの人がお年玉をくれるので、宝くじを売りに行くのがより楽しみになります。夕方に車椅子で帰ってくると、路地の入口で近所の人たちが気付いて移動を手伝ってくれるんです。周りの人たちはとても親切で、よく売上のお金を数えてもらったりもしています。それに、皆からお米もただで分けてもらっています」とフオンさんは語る。

 東南部地方タイニン省出身のファム・ビック・ホンさん(女性・48歳)は、生計を立てるために1990年にホーチミン市へ移住してきた。3女2男の5人の子供と3人の孫がいる。子供たちはそれぞれ働いていて、ホンさん自身は娘と孫と一緒に暮らしている。夫は仕事の都合で別のところに住んでいる。

 「もう長いこと、ホーチミン市でテトを過ごしています。テトには慈善家の支援で50万~100万VND(約3000~6000円)をもらい、子供や孫たちのために食べ物を買います。年末も宝くじを売りに出かけるので、テトの食事は作りません。誰かにもらえれば、それを食べます。1日の稼ぎは10万VND(約600円)ほどで、何かを買う余裕もありません。誰かが孫にと言って飴をくれたり、お寺でミルクをもらったりしています」とホンさんは話す。

 長年にわたりこの下宿集落に暮らしているキム・トゥエンさん(女性・54歳)は、自宅で仕立ての仕事をしているが、近所の多くの宝くじ売りたちを見てきたため、彼らの事情に詳しい。

 トゥエンさん自身は彼らを支援するお金があまりないが、身内や友人の力を借りて、恵まれない人たちをサポートしている。その一環として、近所の宝くじ売りたちに無料で食事を提供している。

 「彼らの生活はテトの間も普段と変わらず、家族が集まることもなく、とてもかわいそうです。今年はお坊さんにお願いして、テトの贈り物を20個用意して近所の皆さんに配りました。私はただ、恵まれない人たちが多くの人に愛され、助けられ、彼らの苦しみが少しでも和らぐことを願っています」とトゥエンさん。

 この集落の路地の入口で雑貨を売っているトゥイさん(女性・57歳)は、宝くじ売りたちとよくおしゃべりをしている。トゥイさんもトゥエンさんと同じく、テトに恵まれない人たちが多くの人に愛され、助けられることを願っている。

 人それぞれ事情は異なるが、誰もが同じく、家賃や食費を支払うために必死でお金を稼いでいる。

 「テトには、家族がいる人は家族と一緒に食事ができますが、1人暮らしの人は仕事のことが気にかかるでしょう。テトは普段よりも宝くじを買う人が増えるので、彼らは朝から晩まで売りに出かけています。書き入れ時だし、家にも誰もいないですしね。ここに住んでいる宝くじ売りの人たちは本当に良い人たちで、近所の皆が彼らを大切に思っているんですよ」とトゥイさんは語った。 

[Thanh Nien 18:10 02/02/2025, A]
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