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[特集]

カフェで歌う若者たち、テト前のギャラは普段の4倍

2025/01/12 10:09 JST更新

(C) thanhnien
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 テト(旧正月)前の忙しないホーチミン市の喧騒の中、小さなカフェで若者たちが奏でるギターの音と甘い声は聴く者の心を癒す薬となる。しかし、それらのメロディーと情熱的な歌声の裏には、知られざる多くの物語がある。

 感動的なパフォーマンスを終え、忙しく機材を片づけているルウ・ブー・ディン・フイさん(男性・30歳)にとって、カフェで歌うことは長い間情熱を捧げている仕事だ。毎晩フイさんとバンドの「ダブルエース(Double Ace)」は、マネージャーが手配したスケジュールに従ってカフェや喫茶店でパフォーマンスを行っている。

 フイさんは、日中は別の仕事で安定的な収入を得て、音楽という夢を追っている。

 フイさんはパフォーマンス後に感極まった様子で感想をこう語る。「ステージに立てることが私にとって最高の幸せです。毎回、お客さんは私のメロディーに聴き入っている様子で、1曲終わるごとに拍手が鳴り響きます。それは、この茨のような音楽の道を揺らぐことなく進むにあたり、大きなモチベーションになっています」。

 出演料について、現在の収入はこの仕事を始めたばかりの頃よりは安定しており、1時間半から2時間程度続く一晩のパフォーマンスでおおよそ数百万VND(100万VND=約6200円)だという。

 フイさんと同様に、ボー・ティエン・ニャンさん(男性・25歳)もホーチミン市3区ディエンビエンフー通り197番地にあるカフェ「サイゴン・ダムダン(Sai Gon Dam Dang)」でいつもパフォーマンスを行っている。

 ニャンさんにとって、マイクを握ってステージに立つ瞬間が日々の仕事のプレッシャーから解放される喜びの瞬間だ。「同じ情熱を持つ仲間に出会い、お客さんと交流し、それぞれの曲を通して感情を伝えられることは、私にとって何ものにも代えがたい幸せなんです」とニャンさんは語る。

 しかし、音楽院を卒業しても音楽の道で生きていくには不安定だという。ニャンさんは、日中は生計を立てるために機械工として働き、夜はステージにすべての時間を捧げている。

 「今まで歌った時に何度か、ギターの演奏がまだ終わらないうちにお客さんが拍手をしてくれたり、持ち時間が終わってもお客さんがアンコールのリクエストをしてくれたりということがありました。そういった瞬間が、自分の歌声や、歌のパフォーマンスを続けていくことに自信を与えてくれます」とニャンさんは打ち明ける。

 テト前には、カフェや喫茶店、年末のイベントでの歌の仕事の需要が急激に増えるという。「公演の数が増えるだけでなく、出演料も普段の3~4倍に上がります。だから、テトの時期は私も仲間たちも、収入を増やすために合間を縫って歌いに行くんです」とニャンさんは話す。

 歌の仕事を始めて6年以上になるチャン・グエン・ダンさん(男性)は現在、ホーチミン市ビンタイン区グエンフウカイン通りのサイゴンパール・ビラズ(Saigon Pearl Villas)で働いている。

 ダンさんによると、仕事を始めた当時の出演料はとても低く、2~3時間歌って一晩で11万VND(約680円)しかもらえないこともあったという。出演料だけでは衣装代やガソリン代、その他の出費を賄えないことが普通だった。

 「私自身も当時はまだ経験がなかったので、ステージに立ち、皆に自分のことを知ってもらうために歌っていました。おかげでより多くのステージに上がるチャンスを得ることができたので、出演料についてはそれほど気にしていませんでした。でも、今思えば当時は自分の仕事が正当に評価されていなかったのではと思います」とダンさんは語る。

 ダンさんは、現在は安定した出演料をもらえるようになったものの、この仕事を始めたばかりの若い人たちと話した時に、彼らが以前の自分と同じような状況にあることに気づいた。

 「これはこの業界にとって今も難しい問題です。多くの新人は、出演料を低く提示されたり、時には歌わせてもらうために自ら積極的に出演料を下げたりするんです。これによって目に見えない不均衡が生じ、市場でのこの仕事の価値が下がってしまいます」とダンさんは分析する。

 ダンさんにとって、歌うことは単なる趣味の副業というだけでなく、追い求めるべき理想の、大好きな仕事でもある。そして、毎晩のパフォーマンスは自分自身を高め、自身の芸術性を磨く機会にもなっている。

 「歌声は単なる音ではなく、呼吸や眼差しを通じて聴く人の心の奥深くにある感情に響く、心から伝わる振動なんです。上手に歌うことはただのテクニックではなく、歌い手が一言一句に心を込めて届ける本当の感情と誠実さでもあります。だからこそ、この仕事がもたらす真の価値が皆に認められることを願っています」とダンさんは胸の内を語る。

 現在、ホーチミン市1区ブイビエン通りのカフェで歌っているカオ・レ・ミン・チャンさん(23歳・女性)も同じ意見で、ステージは感情を育み広めていく場所だと考えている。そのため、この仕事で生計を立てるのが簡単ではなくとも、情熱を注いでいる。

 チャンさんは、出演料は練習と技術を磨く努力に対する対価だと考えている。一方で、若い歌い手たちは音楽への情熱が悪用されないよう、出演のチャンスをつかむ方法を知り、常に冷静に、仕事を受ける前に報酬について明確に話し合う必要があると話す。

 「今、歌の市場はとても競争が激しく、どこにでも多くの才能ある人たちが溢れています。この仕事を長く続けていくためには、それぞれが学びを止めず自分自身を高め、チャンスをつかむために日々努力を積まなければなりません」とチャンさんは語った。 

[Thanh Nien 09:00 16/12/2024, A]
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