[特集]
視覚障がい者の社交ダンス教室
2025/01/05 10:23 JST更新
(C) thanhnien |
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「視覚障がい者は、不便ではあるが、不幸ではない」。社交ダンス講師のチャン・クオック・トゥーさん(男性・39歳)は、この特別な社交ダンス教室の講師と生徒の精神をこう語る。
2024年末のある日の14時ごろ、ホーチミン市1区にあるホーチミン市視覚障がい者協会のホールに、年内最後のクラスに参加するため、20人近い生徒が集まっていた。1週間ぶりの再会に、互いに会話が弾む。
クラスが始まると、生徒たちは約1m間隔に離れて立ち、準備運動を開始する。音楽とともに、トゥーさんのカウントやナビゲーション、指示の声が響く。
グエン・タン・タイさん(男性・47歳)は、クラスに参加するのはまだ2回目だが、その日のクラスを心待ちにしていて、ウォーミングアップのストレッチも躊躇なく行っていく。
「私はフリーの歌手なので、もっと色々な芸術を学びたいんです。ここでは音楽に身をゆだねることができ、虚しさを感じることもなくなりましたし、気晴らしにもなり、運動もできて多くの人と交流することができます」とタイさんは語る。
タイさんいわく、最初のクラスでは右も左もわからず、とにかく自分で自分を励ましていたという。講師の指示を注意深く聞き、自分の身体のあらゆる小さな動きを感じ取るようにした。
より複雑な動きは、講師のトゥーさんが自分の身体を生徒に触れさせながら教える。生徒たちはトゥーさんの周りを囲んで、トゥーさんの肩や腰、脚に触れて動きを覚えてから、指示に従って練習する。
前、後ろ、左、右といった単純な指示から始まり、長時間にわたる練習を経て、クラスの多くの人たちが動きを覚え、初日のようにリズムを崩したり、転んだり、相手の足を踏んだりすることなくパートナーともスムーズに踊ることができるようになった。
これは南部で最初かつ唯一の視覚障がい者のための社交ダンス教室で、毎週金曜日の14時から開かれる。トゥーさんは4年前からこの教室を開くことを計画していたといい、ホーチミン市視覚障がい者協会との協力により、2023年末にようやく実現した。
トゥーさんは独自のレッスンのプランを考案し、ラテン種目とスタンダード種目の計10種類のダンススポーツを教えている。
「進度はゆっくりですが、着実に進んでいます。私の場合は1つのダンスが完成するまでに2~3か月かかりますが、視覚障がい者の生徒の場合は慣れるまでもっと時間がかかりますし、10倍の努力が必要になります。だからこそ、生徒がほんの少しでも踊れるだけで、とても幸せな気持ちになるんです」とトゥーさん。
グエン・ドゥック・ズンさん(男性・45歳)は、クラスが開講した初期のころからの生徒だ。現在はマッサージの仕事をしているが、人生は不安定だからこそ、クラスに参加することが大きな楽しみになっている。
「毎週金曜日の午後は仕事を休んで、友人に送ってもらってここに来ています。ホーチミン市には視覚障がい者向けの娯楽がほとんどないので、こうした無料のクラスがあるのはとてもありがたいです。先生は手取り足取り、徹底的に教えてくれます。社交ダンスを習うようになってから、粘り強くなりましたし、運動する機会もできて、ストレスも和らいだように感じます」とズンさん。
トゥーさんはまた、内部の競技会を企画したり、生徒が全国大会に出場するのをサポートしたりもしている。ズンさんは、クラスのイベントで3位に入賞したことがあり、とても嬉しかったという。ズンさんは、このクラスが続いていってほしいと願っている。
トゥーさんは、このクラスをもっと多くの人々に知ってもらいたいという。「(レッスンを行う)ホールはまだまだ広いですから。視覚障がいによる制限があったとしても、クラスに参加することで、ダンスの中の一歩一歩が自分自身の制限を超える新たな旅になるはずです」とトゥーさんは語った。
[Thanh Nien 15:15 30/12/2024, A]
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