[特集]
「小さな手」でペンを持ち文字を書く、両手のない女子高生
2024/12/22 10:10 JST更新
(C) thanhnien |
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南部メコンデルタ地方カマウ省にあるウーミン高校3年生のドー・グエン・ゴック・マイさん(女性)は、生まれつき両手を欠損している。しかし、自らの「小さな手」でペンを持ち、美しく文字を書く動画をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で共有し、ポジティブなエネルギーを広めている。
マイさんはカマウ省ウーミン郡カイントゥアン村で農業を営む夫婦の長女として生まれた。母親のグエン・ティ・ニョーさん(38歳)は、17年前に第一子であるマイさんを産んだ瞬間のことを、今でも鮮明に覚えている。
「その時、我が子を腕に抱いた私は、喜ぶ間もなく娘の将来への不安でいっぱいになりました。娘の腕は短くて小さく、これからどうやって生活していくのだろうか、学校には行けるのだろうか、と、とても心配でした」とニョーさんは当時を思い出す。
マイさんは4歳で幼稚園に通い始め、以来ずっとニョーさんがマイさんの通園・通学に付き添っている。幼稚園の先生はマイさんに足を使ってペンや物を掴む練習をさせてくれたが、マイさんにとっては難しかった。
代わりに、マイさんは短い腕を使ってペンを挟み、書く練習を始めた。ニョーさんはマイさんが健常者と同じように学校に通えるよう願いながら、学校以外に家でも腕でペンを挟んで文字を書く練習を続けさせた。
先生と母親の指導のおかげで、マイさんは小学校に入学する頃には文字を書くことができるようになっていた。同級生と同じカリキュラムにもついて行くことができ、おかげでマイさんはそれほど大きな障壁を感じることなく、学業を続けていくことができた。
マイさんにとって最も大変だったことは生活の不便さだ。自分で髪を結んだり、アオザイを着たりすることができず、自転車で通学することもできなかったため、いつも母親にサポートしてもらわなければならなかった。
マイさんの送迎と世話に時間を費やすことになったニョーさんは仕事を辞めて専業主婦となり、家族の経済的負担は農作業をする夫1人にかかっていた。家族の生活は経済的に困難ではあったが、ニョーさんと夫は常にマイさんが学業を続けられるよう支えた。
「身体が欠損していることで、人生の多くのチャンスを失いかねません。だからこそ、学業がより重要になるんです。私は娘に、学校に通える健康さと両足があるあなたは十分幸運だ、といつも伝えています」とニョーさんは話す。
小学生の時、マイさんは書写の試験を受けた。絵の才能もあったマイさんは、中学生になるとクラスの壁新聞の装飾活動に参加するようになった。高校最後の学年の今は、母親に代わってクラスメイトに学校まで連れて行ってもらうようになった。
学校の友人たちや先生たちの愛情を受けて、マイさんはより自立し、より自信を持つことができるようになった。
マイさんいわく、幼い頃は内気で口数も少なく、自分は人と違うと感じていたため、友人と関わることもほとんどなかったという。母親のニョーさんはそんなマイさんを見て、娘に悲しい思いをしてほしくないと、友達と外で遊ぶよういつも促していた。
そして、2人の子どもたちを養うために苦労してお金を稼ぎながら、さらに娘がふさぎ込んでいることで悲しんでいる両親を見て、マイさんは自分自身が変わろうと決意したのだった。
高校1年生に上がってすぐの頃、マイさんはまだ内気な性格だったが、友人や先生に励まされて、11月20日のベトナム教師の日を祝う歌のコンテストに出場することにした。
「自分の好きなことで初めてステージに上がり、自分の内面にも変化がありました。おかげで高校1年生と2年生の2年間で自信がつき、よりポジティブな方向に大きく変わることができました」とマイさんは語る。
高校3年生の年度初めの始業式では、マイさんは自らステージに上がり、先生や生徒たちの前で歌を歌った。半袖のアオザイを着て、小さな手でマイクを挟み、自信にあふれて歌うマイさんの姿がSNSで拡散されると、大きな注目を集めた。すると、どうやってペンを持って文字を書くのだろうか、と多くの人が興味津々でコメントを書き込んだ。
これがきっかけで、マイさんは小さな両手でペンを挟んで熱心に文字を書く動画をSNSに投稿し、多くの人に感動を与えた。見知らぬ人たちから心のこもったコメントをもらったマイさんは驚き、感謝の気持ちを伝えた。マイさんは、自分の物語と姿がこんなにも多くの人々の力となり、人々の心を温かくさせることができるとは思ってもいなかった。
マイさんはホーチミン市の大学に進学したいと考えている。それが叶えば、母親のニョーさんも一緒にホーチミン市に行き、引き続き娘をサポートするつもりだという。
「娘がどこに進学するとしても、一緒について行きますよ。娘が熱心に勉強している姿を見ると、世話をする力がわいてくるんです」とニョーさんは語った。
マイさんのクラス担任であるラム・ホン・チュックさんは「マイさんはクラスで唯一の身体障がい者ですが、とても自信に満ちていて、よく芸術活動に参加し、学業成績も優秀です。クラスメイトたちはマイさんのことが大好きで、彼女の学校での生活を自主的に手伝っているんです」と教えてくれた。
[Thanh Nien 14:42 09/10/2024, A]
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