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[特集]

ノートルダム大聖堂にベトコンの旗を掲げた3人のスイス人【前編】

2024/11/24 10:15 JST更新

(C) VnExpress
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 1969年1月19日、スイス人の若者3人が、フランス・パリのノートルダム大聖堂の高さ100m近い尖塔に登り、ベトナム戦争に抗議して南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)の旗を掲げた。

 間もなく開かれるパリ和平会談の準備会合の日に、フランスのシンボルであるノートルダム大聖堂の最も高い尖塔に、中央に金星を配した赤と青の南ベトナム解放民族戦線の旗がはためいたこの出来事は、メディアでも取り上げられ、大きな騒ぎとなった。

 パリ和平会談は、1969年1月からベトナム民主共和国(北ベトナム)と米国に加え、南ベトナム解放民族戦線、ベトナム共和国(南ベトナム)が参加する拡大和平会談となった。

 世間が騒いでいるころ、パリから600km余り離れたスイスのルツェルンでは、3人の若者がパリから故郷に戻ったところだった。危険を顧みず、旗を掲げるために動いた、息が詰まるような30時間を過ごした3人は、1万km近くも離れた国の人々を支持できたことに安堵していた。

 この3人は、当時26歳の体育教師だったベルナール・バシュラール(Bernard Bachelard)氏、当時24歳で法学専攻の学生だったノエ・グラフ(Noe Graff)氏、当時25歳で物理学専攻の学生だったオリビエ・パリオー(Olivier Parriaux)氏だ。

 約55年のときを経て、80代に入ったパリオー氏とバシュラール氏は2024年11月、初めてホーチミン市を訪れ、当時の出来事を振り返った。

 パリオー氏によれば、1960年ごろからベトナム戦争の終結を求めるストライキや抗議活動が世界各地で行われ、数百万人もの人々が参加した。パリオー氏や友人たちもこうした活動に参加し、もっと大きな行動をしなければと常に考えていた。

 そしてついに、その時機がやってきた。1969年初め、1月20日にリチャード・ニクソンが米大統領に就任し、1月25日からパリ和平会談が開かれることになっていた。

 3人は、パリのノートルダム大聖堂の高さ100m近い尖塔に登り、南ベトナム解放民族戦線の旗を掲げることを決めた。

 3人はパリのノートルダム大聖堂に足を踏み入れたことがなかったため、本で情報を調べた。3人は大聖堂の構造や設計を詳細に記した本を見つけ、尖塔の頂上に登る方法を検討した。

 バシュラール氏の妻が、面積17.5m2の巨大なシルク生地の旗を縫う作業を引き受けた。パリオー氏によれば、薄くて丈夫で軽く、よくはためく旗を作るため、サイズや素材も慎重に選んだという。

 旗ポールや結び方も、頂上に登る過程で外れたりしないよう計算した。しかし、ほんの小さな動きでひもが引っ張られれば、旗が広がってしまいかねなかった。

 準備を終えた3人は、1月18日午前6時に自宅を出発して車に乗り込み、一路パリに向かった。18時ごろ、観光客がいなくなったタイミングを見計らって、3人はノートルダム大聖堂に近付いた。

 3人は細身の体型で、アルプス山脈の近くの出身でもあったため、登山のスキルを持っていた。3人の中で最も小柄で体育教師だったバシュラール氏が、尖塔に登って旗を掲げる役割を担った。パリオー氏はバシュラール氏をサポートしながら一緒に登り、グラフ氏は下で見張りをする役割だった。

 バシュラール氏が先を行き、パリオー氏が後に続いた。2人はまず、1本の木によじ登り、大聖堂の屋根を進み、鐘楼を通って、大聖堂の中央の屋根にそびえる尖塔にたどり着いた。頂上に登るには、使徒たちの像を越え、尖塔の中の階段をひたすら登らなければならなかった。

 本で調べていたものの、本の情報と実際の状況は異なり、2人は危険に直面することになった。まず、1つ目の鐘楼から屋根の端までの距離が、本では1m程度となっていたにもかかわらず、実際には2.5~3mほどあった。助走をつけてジャンプしたいところだったが、ここでは不可能だった。

 バシュラール氏が先にジャンプしてスムーズに屋根に降り立ち、パリオー氏も続いてジャンプしたが、足を踏み外してしまった。幸い、とっさに屋根の端をつかんで難を逃れ、バシュラール氏に引き上げてもらった。2人がいたところは地上から35mの高さだった。

後編に続く 

[VnExpress 06:00 19/11/2024, A]
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