[特集]
87歳で大学院生に、生涯学び続ける元教師
2024/07/21 10:31 JST更新
(C) vietnamnet |
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「幸運にも試験に合格した、高齢の学生である私へのカントー大学の配慮に、心から感謝の意を表したいと思います」。南部メコンデルタ地方カントー市にあるカントー大学の修士課程の入学式で、新入生のグエン・タン・タインさん(男性・87歳)はこうスピーチした。
カントー大学は7月上旬、2024年度の大学院入学式を開催した。修士課程に入学した学生の中には、ベトナム文学を専攻するタインさんも含まれていた。
チャン・チュン・ティン学長は入学式でこう話した。「今日は、とても特別な学生が出席しています。グエン・タン・タインさんです。タインさんは、我が校が創立されたころの元学生でもあります。タインさんがベトナム文学専攻の修士課程に入学したことは、尊敬すべき熱心さと、生涯学び続ける精神を表しています」。
カントー大学はタインさんに、2024~2025年度の「生涯学習の精神を持った高齢者」に対する奨学金として、2400万VND(約14万9000円)を給付した。
タインさんは入学式でスピーチし、「幸運な」高齢の学生に対する大学のこの「配慮」に、感謝の意を表した。「私は、これはカントー大学の特別な、人道的な配慮だと思っています。これからの勉強の日々において、大いに努力し、この『借り』をお返ししていくつもりです」。
87歳の新入生は、田舎の小学校に入学する前から高校を卒業するまでの間に、川に落ちたり狂犬に噛まれたり、何度となく九死に一生を得るような経験をしてきたと話す。タインさんは貧しい労働者の家庭に育った。文字が大好きで、いつも勤勉で意欲的で、決してあきらめることをしなかった。しかし、やむを得ない事情により、50年間にわたり自身の勉学を中断せざるを得なかった。
「私は高齢ではありますが、勉学を再開する決意をし、大学から奨学金もいただきました。私のような高齢の学生に奨学金を給付するということは、『学ぶことは人間の生涯にわたるキャリアであり、立ち止まるところのない明るい道だ』という、すべての学生の皆さんへのメッセージでもあります」。
タインさんは1937年生まれで、大学では文学を専攻し、1972年に卒業した。タインさんはかつて、カントー市の高校に国語教師として勤め、何世代もの生徒たちを教えてきた。中にはカントー大学の教員になった教え子もいる。タインさんは9つの外国語ができ、各言語のレベルの証明書もある。
修士課程の入学試験を受けた際、タインさんは「私は、最高の結果を得るために本気で勉強し、常に最善を尽くして努力するという、若者たちにとっての模範になりたいんです」と語っていた。
タインさんは、1972年に学士号を取得した後、大学院に進学した。しかし、修士論文もほぼ完成に近づいていた1975年、指導教員が亡くなり、他の様々な事情も重なって、修士課程を終えることができなかった。
その後、タインさんは勉学を再開するつもりでいたものの、4人の幼い子供たちを残して妻が亡くなった。「妻が亡くなったとき、1番下の子はまだ1歳半でした。当時は生活も大変だったので、勉強という自分の夢はいったん脇に置いて、子供たちを育てなければなりませんでした」。今、子供たちは皆成功し、うち3人はタインさんと同じく教師になった。
家族の世話と子育てという大役を終えたタインさんは再び、学校に通って修士号を取得することを考えるようになった。子供たちも、大学院に進学するという父親の夢の実現を、いつも応援していた。
タインさんにとって、修士号の学位は教育や文化、芸術の創出や研究に大いに役立つ。「文化と芸術は、発展の要素があるとても豊かで幅広い分野です。だからこそ、勉強に勉強を重ね、生涯学び続けなければなりません。もちろん、今から勉強するのは遅いでしょう。でも、どんなに遅くても大変でも、目的地に到達することに意味があります。私の進んでゆく道はとても明確であり、私はこのスタンスを変えることはありません」。
タインさんは、修士号を取得した後、健康に問題がなければさらに博士号を取得するつもりだ。長いこと抱いてきた夢に向かって、これからも旅を続ける。
[Vietnamnet 11:37 07/07/2024, A]
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