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[特集]

夜のカフェ、見知らぬ仲間と人狼ゲームに興じる若者たち

2024/07/14 10:08 JST更新

(C) VnExpress
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 21時、仕事を終えたカイン・リンさん(女性・24歳)は、ハノイ市ドンダー区にあるカフェに急いで向かった。カフェにはすでに約30人が集まっており、「人狼ゲーム」の開始を待っていた。

 リンさんは、この3か月ちょっとの間、毎週こうしたカフェに行っては見知らぬ人たちと徹夜で人狼ゲームに興じている。

 人狼ゲームでは、各プレイヤーに役職が割り振られ、プレイヤーは推理や観察によってお互いの役職を探っていく。「プレイヤーの数が多いので、1回のゲームに3~4時間かかります。そのため、いつも帰宅するのは午前3時ごろになります」とリンさん。

 ホーチミン市12区の24時間営業カフェの常連客であるホアン・ズンさん(男性・24歳)は、最初は人見知りで戸惑いもあったというが、今では参加者皆が仲良くなったと話す。ズンさんはときにゲームマスター、ときに新旧の参加者をつなぐ役割も担っている。ズンさんによれば、あまりにも白熱してしまい、21時から翌日の正午までゲームが続いたこともあるという。

 「以前は友人たちと集まって遊ぶとなると、民泊で部屋を借りなければならず、1晩で約30万VND(約1900円)かかっていました。でも、今はこういったカフェに来れば、ドリンク代の5万VND(約310円)で安く楽しむことができます」とズンさんは語る。

 ハノイ市から仕事でホーチミン市に来ているズンさんにとって、自分が参加していなくても人のゲームを見ているだけでストレス解消になり、さらに見知らぬ人に心の内を打ち明けることもあり、こうした場があるおかげで日々の孤独感が和らぐという。

 人狼ゲームに限らず、モノポリーやウノ、こねこばくはつなど、ボードゲームやカードゲームで遊ぶ目的でカフェを訪れる人もいる。このように、カフェで見知らぬ人と徹夜でゲームをプレイするというトレンドが、この1年で広まっている。

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、ハノイ市やホーチミン市を中心に、ゲームのスケジュールを共有したり、集合するカフェを提案したりするグループがたくさんある。各グループには、それぞれ数万人ものメンバーが参加している。

 ベトナムの大手ウェブメディア「VNエクスプレス(VnExpress)」によれば、ハノイ市やホーチミン市では、20を超えるカフェが、ドリンクを飲みながらゲームをプレイするというモデルを展開しているが、最も人気があるのはやはり人狼ゲームだという。通常、ゲームは20時ごろに始まり、午前1~2時ごろまで続く。

 ハノイ市ドンダー区のカフェのオーナーであるティエン・ダットさんは、この2年ほど、カフェで人狼ゲームを主催している。特に今年に入って若者からのニーズが高まっており、毎晩平均して前年の倍の50~70人がカフェを訪れる。ダットさんのカフェでは22時からゲームが始まり、午前2時ごろまで続く。参加者の80%が18~29歳だ。

 「ボードゲームは創造力や鋭い思考力が求められることが多いですが、人狼ゲームは遊べば遊ぶほど中毒性が増します。毎晩、多くのお客さんが来て、皆で『事件を解決』して生き残ろうとするんです」とダットさん。プレイヤーが上手であればあるほどゲームは長く続き、数時間、ときには夜から翌日の午前10時まで続くこともある。

 ホーチミン市10区の24時間営業カフェのマネージャーによると、このカフェではこうしたモデルを展開して1年ほどになる。参加者は21時ごろから増え、毎晩100人もの人々が、自分がプレイする順番を待っている。人狼ゲームのほかにも、ただ座ってドリンクを飲む人のためのスペースや、他のゲームをプレイするスペース、サッカーを観戦するスペースなどもある。

 ホーチミン市7区にある、ボードゲームで遊べるカフェに22時ごろに1人で行ったゴック・ランさん(女性・21歳)は、40人もの大人数が議論していて緊張してしまい、なじめなかったと話す。一見楽しそうに見えたものの、実際に参加してみると参加者の間に派閥があり、古参が新参にいやがらせをするような様子を黙って見ているしかなかったのだという。

 「私は推理が苦手で論理的な分析もできないと見下され、軽く遊びにきただけだと思われてさらにプレッシャーを感じてしまいました」とランさん。ゲームを始めるにあたって十分な人数が集まるまで待たなければならなかっただけでなく、ゲームは翌朝まで続き、ランさんは結局疲れ果てて仕事を休んでしまったのだった。

 見知らぬ人とカフェで夜な夜なゲームに興じるというトレンドについて、ベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)の講師であるグエン・ビエット・チュン氏は、ボードゲームや人狼ゲームは健全な活動だと話す。リラックスできるだけでなく、思考や議論、反論といった力を高めることができ、さらには同じ趣味を持った人々とつながることができるという利点もあるためだ。

 ただし、30~40人が集まって夜から朝までプレイすることを続ければ、健康に悪影響を及ぼしかねないとも指摘する。「いうまでもなく、こういったゲームには論理的思考と高い集中力が必要です。プレイヤーは勝敗を意識するので、プレイ中は覚醒していて、長期にわたる不眠症を引き起こす恐れもあります」とチュン氏は語った。 

[VnExpress 06:31 09/07/2024, A]
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