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[特集]

ホーチミンの教会に100年以上眠る遺体、謎めいた神聖な「宝物」

2024/06/23 10:30 JST更新

(C) vietnamnet
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 ホーチミン市4区のソムチエウ教会には、5つの面がガラス張りになった棺がある。棺の中には、100年以上も前に亡くなった女性の遺体が納められている。科学的な方法によって保存されているわけではないにもかかわらず、遺体は腐敗することなく、そのままの姿を保っている。この遺体は、1856年代からあるソムチエウ教会の最大の謎となっている。

 棺は、亡くなったこの教区の信者の遺灰が納められた、頑丈な鉄の扉のある部屋に安置されている。棺の中の遺体は、衣服を身につけ、頭にシルクのスカーフを巻いて、仰向けに横たわっている。棺の外側には、故人の生没年と遺影が印刷された、黒い御影石の墓碑が置かれている。

 墓碑の情報によれば、遺体はアンナ・グエン・ティ・シーという女性のもので、1840年に生まれ、1906年に亡くなったという。

 ソムチエウ教会内務協会の副会長であるヨセフ・ディン・クアン・ルアット氏によれば、シー女史は修道女ではなく、一般の教区民だったが、生前はこの教会で生活していたという。

 シー女史が亡くなった後、子供や孫たちは彼女を旧サイゴン港墓地に埋葬した。その後、フランス植民地政府が墓地を移転する際に、シー女史の墓も親族によって改葬されることとなった。

 しかし驚くべきことに、墓を掘り起こしてみると、身につけていた衣服こそぼろぼろになっていたが、シー女史の遺体そのものは腐敗することなくそのまま残っていた。

 この奇妙な出来事を、親族や教区民たちは神聖なことだと信じ、シー女史の遺体を現在の7区のタンクイ墓地に移した。このときは、墓を掘って埋葬するのではなく、遺体を棺に納めて地面に安置した。

 ルアット氏はこう説明する。「カトリック教徒にとって、人間の肉体は神によって神の姿形に似せて創造されたものです。そのため、彼女の親族は改葬の際に遺体がそのまま残っているのを見て、これを尊重し、火葬はしないことにしたのです。そして、これを神聖なものと見なし、遺体を保存することにしました。その後、タンクイ墓地が撤去されることになり、シー女史の遺体はソムチエウ教会に移され、遺体は現在のガラス張りの棺に納められることとなりました」。

 ルアット氏は、最初の埋葬の前に何らかの防腐処理が行われたのかどうかはわからないというが、改葬のタイミングから現在に至るまでの間に、遺体は若干黒ずんで縮んできた程度なのだそうだ。

 現在、遺体は簡素な棺の中に納められているだけで、保存にあたりな科学的な方法や化学薬品は使われていない。通常の保存状態にもかかわらず腐敗もしていないことから何とも説明がつかず、人々はこの遺体を謎めいた神聖なものと考えている。

 ルアット氏はこう語る。「彼女が亡くなったときから数えて、もう100年以上が経っています。それでもご遺体は腐敗も損傷も見られません。ご遺体を掘り起こしたときは、誰もが驚きました。今も多くの人々が神聖で縁起の良いものと信じ、健康や幸運を願ってご遺体のもとへお祈りに訪れています」。

 現在、ソムチエウ教会では、訪問者が遺体に祈りを捧げることができるよう、特定の時間のみ開放している。

 多くの訪問者が遺体を恐れるどころか好奇心を抱き、防腐処理も行わずにどうして遺体が腐敗することなく保存できるのか、その答えを知りたがっている。

 しかし、ルアット氏は、教会としては遺体の研究には同意しないとしている。なぜなら、教会は長きにわたりこの遺体を謎めいた神聖なものと考え、唯一無二の「宝物」として大切に扱ってきたからだ。

 シー女史の孫やひ孫は存命で、海外で暮らしている。孫やひ孫は2~3年に1回のペースでベトナムに帰国し、シー女史の遺体に祈りを捧げに教会を訪れる。彼らが不在の間は、教会にいる1人に遺体の世話を一任している。

 もし、遺体の衣服に損傷があって交換しなければならないときには、教会の担当者が孫やひ孫に連絡し、衣服の交換の許可を得ている。それ以外については、遺体に触れて何かをすることはないのだということだ。 

[Vietnamnet 05:57 24/05/2024, A]
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