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[特集]

体重8kgの17歳少女、夢を抱いて今を生きる

2024/06/09 10:15 JST更新

(C) VnExpress
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 北部紅河デルタ地方バクニン省トゥアンタイン郡ソンホー村に暮らすブー・ミン・ハンさんは、愛車の「ミニカー」に乗って、果物から日用品、土産物、ミルクティー、そしてペットまで、村のどこへでも配達する。

 ハンさんは17歳だが、身長は89cm、体重は8.6kgで、前から見ても後ろから見ても、2歳児のように見える。

 家族によると、ハンさんの出生時の体重は3kgで、まったく正常に生まれた。しかし、そのまま一向に成長せず、ハンさんが3歳のときに病院で診てもらったところ、身長が伸びない病気だということがわかった。

 ハンさんの母方の祖父であるグエン・ドゥック・フインさん(65歳)は当時のことをこう語る。「その日、医師は我々家族に、ハンがベトナムで2人しか症例のない、希少な病気を患っていると告げました」。

 身体があまりにも小さいため、ハンさんは学校に通ったことがない。独学で文字を学び、それから韻や計算を教わった。今ではすらすらと読み書きができる。この2年間は、韓国語と英語も勉強している。

 ハンさんの父方の祖母であるブイ・ティ・リンさん(64歳)は、孫娘についてこう話す。「ハンは勤勉で、自立心があって仕事もとても早いんです」。

 村には紙製冥器の伝統工芸があり、ハンさんは8歳のころから家業の冥器作りの紙貼りを手伝っていた。しかし、6年ほど前に両親が海外へ出稼ぎに行ってからは、自分で生計を立てるようになった。ハンさんは毎月100万VND(約6000円)余りの給付金をもらっているが、自分のために使えるお金を増やすために、仕事もしている。

 ハンさんはある日、遊びに行った先で見かけた電動のミニカーに一目ぼれした。帰宅してインターネットで検索すると、価格は400万VND(約2万4000円)もした。どうしてもミニカーが欲しかったハンさんは、2022年のテト(旧正月)の期間中ずっと、冥器の紙貼りにいそしんだ。

 そして稼いだ200万VND(約1万2000円)とそれまでの貯金を合わせて、ついに夢のピンク色のミニカーを手に入れた。

 「祖父が組み立て終えるやいなや、私はその愛車に飛び乗って伯父の家に自慢しに行ったんです」と、ハンさんは笑う。ハンさんいわく、遊びに行くためではなく、お金を稼ぐ手段として使うつもりで購入したという。

 ハンさんはこのころから、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で商売をする方法も学んだ。最初はぬいぐるみや土産物を売っていたが、2023年に自宅から約3kmのところに商品倉庫があることを知り、ハンさんはこの倉庫の商品を仕入れて売ることにした。

 倉庫のオーナーであるゴ・ティ・チャンさん(女性・34歳)は最初、「幼い女の子」が商品を仕入れて売ると言うので驚いたというが、ハンさんの実際の年齢を知ってようやく納得したのだった。

 ハンさんは晴れの日も雨の日も、愛車で倉庫に乗り付け、商品を仕入れる。ハンさんのSNSでは、日用品から青果物、ペットまで、さまざまな商品を販売している。それから、自家製のヨーグルトやレモンティー、ミルクティー、パンを売ることもある。

 「お金は稼げていますが、在庫も残っていて、お金がなくて商売が回らなくなることもあります」とハンさん。

 そんなハンさんをかわいそうに思い、チャンさんは在庫を倉庫で売ることを申し出た。それと同時並行で、チャンさんはSNSでも引き続き商品を販売している。最近行った数回のライブコマースでは、数十件の取引が成立し、1回あたり数十万VND(10万VND=約600円)の利益が生まれた。

 ハンさんは将来、ミルクティー店をオープンして、自分の家族を養えるようになるという夢を抱いている。

 ハンさんは、身体が小さいことで人にぶつかられたり押されたり、誰にも見えない物陰に紛れてしまうようなことは全く怖くないと語る。「私が一番怖いのは、周りの人たちにからかわれることです」。

 それから、ハンさんにとって、忘れることのできない嫌な思い出がある。ある日、ハンさんが大通りを自転車で走っていると、見知らぬ男性が「お菓子を買いに行こう」と声をかけてきた。誘拐されると思ったハンさんは、全速力で自転車をこいだ。

 「でも、そのおじさんは片手でバイクを運転して、もう片手に袋を持って、私を捕まえようと追いかけてきたんです。私は怖くて怖くて、とにかく早くペダルをこぎましたが、結局自転車を放って、叔父の家の裏に隠れました」とハンさんは振り返る。

 そのとき、ハンさんの心臓はバクバクと鳴り、顔は青ざめ、ハンさんは家の片隅で震えていた。親戚が何度も説得して、ようやくハンさんは表に出てきた。

 ライブコマース中のハンさんは機敏で、積極的にあいさつをしたり、視聴者とコミュニケーションを取ったりする。しかし、画面の外では、今でも知らない人とコミュニケーションを取るのが怖いという。

 チャンさんによると、ハンさんがチャンさんの倉庫で商売を始めたころは客から好奇の目で見られ、ハンさんはプレッシャーにさらされていた。

 「ある日、高齢のグループがやってきてハンを取り囲み、何の病気なんだとか、家族にも同じ病気の人がいるのかとか、生理はあるのかとかたずねるんです。私はあまりにも腹が立って、その人たちを追い出しました」とチャンさんは語る。

 こうした嫌な思い出もあるが、ハンさんは持ち前のその愛らしい容姿と知性で、どこへ行ってもみんなに愛されている。父方と母方の親戚のどちらも、ハンさんをかわいがり、ハンさんがやりたい仕事をできるように応援している。

 2025年で18歳になるハンさんは、東南部地方ビンズオン省への旅を計画している。計画の実行に向けて、以前はお菓子やファストフードしか食べなかった食生活を変え、ほんのわずかだがご飯を食べ、牛乳を飲むようになった。おかげで年明けから約半年で体重が500g増えた。

 「ベトナム小人倶楽部に参加するために、ビンズオン省に行きたいんです。そこには、私と同じような人たちがいるからです」と、体重8.6kgの少女は語った。 

[VnExpress 06:30 03/06/2024, A]
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