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[特集]

ハノイの旧市街や路地裏の生活を好む外国人たち

2024/06/02 10:16 JST更新

(C) VnExpress
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 米国人のトレバーさん(男性・21歳)は、ハノイ市ホアンキエム区チャンティエン街区トンダン通りにある築100年以上の古びた集合住宅に部屋を借りた。最初の数日間は少し後悔したが、しばらくするとここでの生活がすっかり気に入った。

 トレバーさんによると、この集合住宅の第一印象といえば、空間はかなり暗い、外壁は古めかしく湿っぽい、階段は奥行きが長い、というものだった。しかし、一晩経って翌朝目覚めると、人々が生活し、洗濯物を干したり、おしゃべりをしたりする光景を目にして、トレバーさんは落ち着きを取り戻した。

 リフォームされ、籐や竹でベトナムらしく装飾された自分の部屋にも少し満足できた。「ここで暮らして1か月ちょっと経ちますが、だんだんハノイ市の人々の暮らしを理解できるようになり、好きになってきました。住人の皆さんもフレンドリーなんです」とトレバーさん。

 トレバーさんは、1泊100万VND(約6100円)で民泊用の部屋を借りている。旧市街周辺のホテルと比べるとかなり割高だが、自分でチェックインして、自分で鍵を管理して、すべてセルフサービスという体験が楽しいのだという。

 ここで生活する1か月余りの間、トレバーさんは何度となく朝5時に起きて、地元の人たちと一緒に路上で朝ごはんを食べたり、お茶を飲んだりと、外国人にはあまり接する機会のない体験をしている。鐘の音が鳴ったら決まった時間にごみを出すこと、住民が皆同じところにバイクを停めること、夜でも騒がしくないことなど、集合住宅のルールも気に入っている。

 「以前、何度かベトナムに来たときは大きなホテルに滞在していたので、こういった集合住宅のような、ゆったりとした平穏な生活のリズムを感じることはできませんでした」とトレバーさんは語る。

 ロシア人のソフィアさん(女性)は、ホアンキエム区ハンマー街区ハンルオック通りにある、古民家を利用したホステルに滞在している。入口は細長く、中の階段は曲がりくねっているが、バルコニーに出れば賑やかな旧市街が見渡せるところに惹かれたという。

 ホステルの宿泊料金は1泊10万~15万VND(約610~920円)だ。ソフィアさんによれば、ハノイ市に長期滞在するなら、ホステルに滞在すればお金の節約にもなり、ホステルは理想的な宿泊施設だという。

 ソフィアさんにとって、トイレや物干し場、バルコニーを他人と共有しなければならないことは不便でも不快でもなく、むしろ新しい友達ができるチャンスでもある。「寮で暮らしているみたいで楽しいですよ。立地も旧市街の中心部なので、まだ知らないベトナムやハノイ市を探索するのにもとても便利なんです」とソフィアさんは話す。

 ハンルオック通りのホステルに滞在して4か月になるソフィアさんは、大家のことを身内のように思っている。テト(旧正月)には、バインチュンやエシャロットの漬物、肉の煮こごりなどの料理をごちそうしてもらい、大家の帰省について田舎へ行ったこともある。

 「大家さんにはとても感謝しています。皆さんフレンドリーなので、ここでの生活は家にいるのと同じように快適なんです」。

 2015年ごろから、ハノイ市では古民家を改修したり、古い集合住宅の一室を民泊用の部屋に切り替えたりするケースが見られるようになってきた。

 2022年以降は、デジタル技術の発展により、より多くの外国人観光客がこうした宿泊施設を知るようになり、体験しに訪れるようになった。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、ハノイ市旧市街の民泊に関するグループのメンバーは5万人以上に上っている。

 2019年にこの分野のビジネスを始めたホン・ニュンさん(女性・35歳)は現在、トンダン通り、レフンヒエウ通り、グエンカックカン通り、ダオズイトゥー通り、タヒエン通りの集合住宅や古民家に、10軒以上の物件を所有している。

 ニュンさんは、滞在する外国人観光客が現地の文化を体験できるよう、いかにも旧市街らしい路地裏の奥にある、古い建物や家屋がそのまま残っているエリアを選ぶようにしている。

 しかし、古い建物は老朽化が進んでいて壁が剥がれているようなことも多い。宿泊客が快適に過ごせるよう内装を改修しなければならず、費用がかかるため、宿泊料金も1泊80万~150万VND(約4900~9200円)とかなり高くなってしまうのだという。

 それでも、2023年10月以降の宿泊客の数は例年に比べて2倍に増え、ニュンさんが管理している物件の90%以上は常に貸し出し中だ。

 宿泊客の約70%は18~29歳で、米国人、カナダ人、ロシア人、フランス人、韓国人が多い。ほとんどがデジタルノマドやフリーランスで、数週間から数週間の長期滞在者となっている。

 「ゲストは宿泊人数によりホテルのように部屋が分かれてしまうこともなく、7~8人の一家でも一緒に滞在することができます」とニュンさん。

 宿泊する際は、決まった時間にごみを出す、外出時は門の鍵を閉める、夜は騒がしくしないなど、住民のルールに従わなければならない。こうすることで、欧米人の宿泊客も地元住民と同じような生活を体験することができるのだ。

 ハンルオック通りでホステルを管理しているニャット・ホアンさん(男性)は、2021年に実家の2階と3階を改修し、民泊用に貸し出すことにした。1階は両親の住まいだ。6~7部屋あり、それぞれに二段ベッドを置いて、1部屋あたり6~8人が宿泊できる。

 2024年1~3月期に、ホアンさんのホステルは常に満員だった。宿泊客のほとんどが数週間から数か月の長期滞在者で、旧市街の現地の人々との共同生活も楽しみたいという人たちだ。

 一方で、皆が皆、こういった生活になじめるというわけでもない。ドイツ人のアンナさん(女性・24歳)は、ホアンキエム区ハンバック街区ハンベー通りの路地裏の奥にある民泊に数日滞在した後、チェックアウトすることにした。アンナさんは、「日の光も入らないし、周りも狭くて安全じゃないような気がして。こういう空間は、数時間の体験ならいいんじゃないでしょうか」と語った。 

[VnExpress 06:00 31/05/2024, A]
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