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[特集]

国内最大の刑務所、外国人受刑者を改心させる刑務官たち

2024/02/18 10:14 JST更新

(C) VnExpress
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 ベトナムで最大規模の刑務所として知られる南中部沿岸地方ビントゥアン省のトゥードゥック(Thu Duc)刑務所(Z30D刑務所)には、39の国籍の800人余りの外国人受刑者が収監されている。

 ドアン・ゴック・ドー・クエン大尉(女性)は、このトゥードゥック刑務所で12の国籍の29人の外国人女性受刑者を管理するという任務を命じられたとき、不安を抱えた。29人のほとんどが終身刑だった。

 トゥードゥック刑務所の第1舎房に勤める東北部地方バクザン省出身のクエン大尉は、優しく微笑みながら、16年間にわたる刑務官としての仕事の中で多くの喜びを見つけることができた、と話す。

 「刑務官の任務は、受刑者が自分の犯した過ちを認識し、正しい道に進めるように受刑者に寄り添い、教育することです」とクエン大尉は語る。クエン大尉は、これまでに数百人の受刑者を矯正教育してきた功績により、刑務所の上層部からも評価されている。

 2020年、12の国籍の29人、しかもほとんどが麻薬関連の罪で終身刑という外国人女性受刑者を管理する任務を命じられたときは不安でいっぱいだった。受刑者たちの年齢は27~80歳と様々だった。

 「最大の壁は言語でした」とクエン大尉。受刑者の管理・矯正教育にあたり、受刑者自身が日常生活や刑務作業でコミュニケーションを取ることができるよう、また自分の要求を自分で伝えることができるよう、刑務所ではベトナム語を教えている。

 クエン大尉は基本的な英語を話すことができるが、すべての受刑者が英語を話せるわけではないため、ベトナム語を教えることもそう簡単ではない。そのため、矯正教育にあたり受刑者の心理や特性、生活習慣を理解するにも、多くの時間と労力が必要になる。

 自分自身のことについては言葉少なだが、受刑者のことになると熱く語り出す。クエン大尉によれば、ラオスの少数民族の女性受刑者を受け入れたときは特に大変だったという。刑務所にはこの女性受刑者の言語を話せる人がおらず、クエン大尉はボディランゲージを使ってコミュニケーションを取るしかなかった。

 こんなこともあった。あるとき、外国語を知らないアジア人の受刑者が、ヨーロッパ出身の受刑者と一緒に刑務作業をすることに強く抗議した。そこでクエン大尉が「裁判官」になり、双方の話を聞いたところ、この争いは双方の言語と文化の違いが発端だということがわかり、問題を根本的に解決するため、双方に徹底的に説明したのだった。

 「受刑者たちに学ぶ意欲があるということがうれしいです。今はほとんどの受刑者が基本的なベトナム語を話したり、理解したりできるようになり、国の情状酌量の政策などを伝えるのも楽になりました。だからこそ、受刑者たちも、一刻も早く家に帰るべく、改心に努めています」とクエン大尉は語る。

 同じ舎房に勤めるチャン・バン・チュン中佐(男性)は、外国人男性受刑者の矯正教育に携わって18年になる。受刑者たちはそれぞれ異なる性格や文化を持っているが、受刑者に矯正教育や説得をし、改心させるという点は共通している。そのため、チュン中佐のような刑務官たちは、受刑者の個々の特徴をよく理解し、それぞれに適した対応をしなければならない。

 何年も前のこと、ナイジェリア国籍のオコンクウォ受刑者が、麻薬を違法に輸送した罪で終身刑の判決を受け、トゥードゥック刑務所に収監された。収監されたばかりのころ、身長190cmのオコンクウォ受刑者はいつも無実を訴え、改心も受け入れず、食事も拒否し、他の受刑者とトラブルを起こしていた。

 オコンクウォ受刑者は、片田舎の貧しい家庭に生まれ、色々な仕事をしてきたものの生活は不安定なままだった。2019年、オコンクウォ受刑者は友人に「ベトナムから古着や靴を持ち帰って売ろう」と誘われ、ベトナムに渡った。

 しかし、しばらくして、自分が関わっているのは国境を越えた麻薬密売ルートだと気づいた。自分の仕事が違法であると分かっても、お金の誘惑には勝てなかった。判決によると、この麻薬密売ルートが摘発された際、オコンクウォ受刑者は430gのコカインを運んでいた。

 オコンクウォ受刑者を改心させるため、チュン中佐は定期的に会話をし、ベトナム語を教え、自分の心境を見つめさせ、善悪を分析させた。こうした中で、チュン中佐は、オコンクウォ受刑者がその大きくて強い外見の裏に、感情的な面があることに気づいた。

 2022年の初め、領事館の職員から父親の死を知らされたオコンクウォ受刑者は、子供のように泣きじゃくり、何日も飲まず食わずで過ごした。

 「私は彼と話し、励ましました。そして、残された母親や他の家族のことを考えるように言いました。それ以来、彼は正気になり、やる気を取り戻しました。今も改心に努め、故郷で待っている年老いた母親の世話ができるよう、一刻も早く減刑されることを願っています」とチュン中佐は語った。 

[VnExpress 00:00 13/02/2024, A]
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