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[特集]

ハノイで愛されて20年、老婆が営むキャッサバチェーの露店

2023/12/24 10:00 JST更新

(C) VnExpress
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 冬が訪れると、多くのハノイ市民が寒さをしのぐために温かい食べ物を求めるようになる。

 ホアンキエム湖から500mほど離れた、グエンカックカン(Nguyen Khac Can)通りのチャンフー高校の門のすぐ近くに、ホー・ティ・トゥイさん(女性・82歳)が営むキャッサバの温かいチェー(ベトナム風ぜんざい)の露店がある。トゥイさんのチェー屋は、20年近くもの間、ハノイ市民に愛されている。

 トゥイさんは今年で82歳になるが、今でも毎日、午前9時から午後3時まで店を出している。暑い夏には身体を冷やすための黒小豆(黒ささげ)や緑豆、ハスの実の冷たいチェーを売っている。そして冬には、キャッサバや黒小豆などの温かいチェーを売る。

 トゥイさんによれば、多くの高齢者にとって、キャッサバは食べ物も衣服も十分でなかった時代を思い起こさせるものだという。現在は生活水準が向上したが、それでも多くの人は今でもなお、当時のことを覚えているのと同じように、キャッサバチェーの味も覚えている。

 トゥイさんの露店には屋根も看板もない。薄いトタン板で覆われた練炭コンロが目印だ。コンロの上にはお湯が沸いた鍋が置かれ、鍋のお湯でチェーの入ったトレイが温められている。「煮えたチェーのトレイを直接火にかけると、底の方が焦げてしまいますからね」とトゥイさんは説明する。

 寒さがもっと厳しくなってきたら、もち米と生姜、糖蜜を煮込んだチェーを売る。まだあまり冷え込まないうちは、3つに仕切られたトレイの2つに売れ行きが最も良いキャッサバチェーを、残りの1つに黒豆チェーを入れて売っている。

 トゥイさんは毎日、午前5時ごろからチェーの仕込みを始める。まず、生のキャッサバの皮を剥いて、キャッサバを水に2~3時間浸す。次に、キャッサバをきれいに洗ってから塩少々を加えた水で煮る。火が通ったら取り出し、食べやすい大きさに切る。

 キャッサバチェーの甘い汁は、水と砂糖を混ぜて作る。水と砂糖を火にかけて、砂糖がすべて溶けたら、切ったキャッサバを加えてさらに4~5分煮込む。最後に、タピオカ澱粉を水に溶いて少しずつ加えながら、とろみがついて色が濃くなるまで混ぜれば完成する。

 作り方はシンプルだが、細心の注意と経験が必要だ。「キャッサバが煮崩れないよう、調理中はずっと火を見張っていなければなりません。汁を煮るときも、火が強すぎると鍋が焦げてしまいます」とトゥイさん。トゥイさんの娘も、母親を手伝ってチェーを作ったことがあるが、母親の作る味にはとてもかなわず、今も売り子に徹している。

 温かいキャッサバチェーは、小さな陶器のお椀に入れ、上にココナッツフレークをふりかけて提供する。白いキャッサバが黄金色の汁をまとい、甘い香りとほのかな生姜の香りが漂うトゥイさんの温かいキャッサバチェーは、1杯1万5000VND(約88円)で売っている。ほどよい甘さと香ばしさ、キャッサバの柔らかさ、汁の独特な香りが人気の秘訣だ。

 今から約2年前は、常連客の多くが近くのオフィスに勤める会社員で、売り子の人手が必要なほど繁盛していた。しかし、オフィスが次々と移転し、客足は減ってしまった。今は生徒や会社員が主な客で、週末にはホアンキエム湖周辺を散歩する観光客がチェーを買いに来る。

 トゥイさんはもう高齢で、子供も安定した生活を送っており、もはや損得は気にしていない。毎日、1種類につき鍋1つ分だけチェーを作って午後3時まで売る。そして、客は練炭コンロの周りに座って、温かいキャッサバチェーのお椀を手に、心と身体を温めるのだ。 

[VnExpress 07:09 21/12/2023, A]
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