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[特集]

山岳地帯で荷物を運ぶ「ポーター」、モン族の副業から本業に

2023/10/29 10:33 JST更新

(C) laodong
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 山岳地帯で観光客の荷物を運搬したり道案内をしたりする「ポーター」という仕事による収入のおかげで、ベトナムの少数民族の1つであるモン族の人々は、子供たちの養育費を支払い、妻のドレスを縫う布地を買い、酒や肉を買うこともできている。

 西北部地方イエンバイ省ムーカンチャイ郡ナムコー村トゥーサン地区に暮らす兄のタオ・アー・チューさん(1991年生まれ)と弟のタオ・アー・マンさん(2001年生まれ)の兄弟は、地元に100人ほどいるモン族のポーターのうちの2人だ。

 この仕事がどうしてポーターと呼ばれるようになったのかも、いつどこから流入してきたものなのかもわからないが、以前この仕事をする人といえばほんの数人しかいなかった。

 いつからか、このポーターの仕事で安定した収入を得られることがわかり、地元の若者たちが誘い合ってグループを立ち上げ、標高2913mを誇るルンクン峰(dinh Lung Cung)で観光客を見つけては荷物を運んだり道案内をしたりするようになった。

 ここ数年は、荷物の運搬や道案内だけでなく、山頂に向かう道の途中の休憩ポイントにテントを張って観光客が寝る場所を確保したり、観光客の食事を用意したりもしている。

 記者がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でやりとりをしたところ、チューさんとマンさん、他8人の計10人が、ナムコー村センターで記者を含めた10人の観光客グループを出迎え、1人ずつバイクに乗せてルンクン峰まで連れて行ってくれることになった。距離は25km、料金は30万VND(約1800円)だ。

 料金がかなり高いようにも思われるが、実際にバイクに乗って移動してみると、急な坂道や、冠水してタイヤの半分以上が水に浸かってしまうような道もあり、この道を自力で進むのは決して容易ではないことがわかる。

 山のふもとに到着すると、各グループにつき1~2人のポーターを雇い、先頭と最後尾について同行してもらう。ポーター1人あたり平均10~20kgの荷物を担いで歩くほか、歩きにくい道や崖、峠では観光客をサポートする。

 ポーターを雇う際の1日あたりの料金は40万VND(約2400円)だが、ポーターは事前に鶏肉やアヒル肉、豚肉、野菜などを準備して山頂まで運び、観光客のために料理をしたり、一晩キャンプをしたりもする。その場合、1人あたり10万VND(約600円)が追加でかかる。

 マンさん兄弟たちのグループと同じように、イエンバイ省チャムタウ郡タースア村に暮らす、同じくモン族のファン・アー・ブレさん(1998年生まれ)の1日の仕事も、早朝のニワトリの鳴き声とともに始まる。10月は稲が黄金色に色づく季節で、観光客も多いため、毎日大忙しだ。

 この日、標高2979mのターチーニュー峰(dinh Ta Chi Nhu)を登るという観光客19人を迎えて山道を先導することになったブレさんは、道具や食料、カセットコンロなどをかばんに詰めた。19人分の道具や食料となるとかなり大量になるため、観光客はブレさんのグループから4人を雇った。

 10年ほどこのポーターの仕事をしているファン・アー・チョンさん(1980年生まれ)によると、ここ数年、タースア村ではポーターとして働くモン族が多く、健康でさえあれば男性も女性も問わず働いているという。荷物の運搬や料理、道案内など全て含めてポーター1人あたり1日に50万VND(約3000円)の収入になる。

 「この仕事はとても良いですよ。山や森に遊びに行きながら、子供たちの養育費、それからお酒や、妻のドレスを縫う布地なんかも買うお金が稼げるんですから。1回の仕事から戻るたびにSNSに写真や動画を投稿すると、たくさんの問い合わせがくるんです。最初は副業だったポーターの仕事ですが、今では我々の本業になっています。庭で飼っているニワトリやアヒルも、観光客に売るための商品になりましたね」とチョンさんは語る。

 チョンさんによると、休憩ポイントが近くなると何人かのポーターが先に行って、テントを張ったり、観光客が身体を洗えるようにお湯を沸かしたりする。それから、持ってきた食料を使って観光客のために食事を用意する。

 ポーターは片付けを終えてから最後に寝て、翌朝は朝食を用意するため最初に起きる。朝食はだいたいお粥かインスタントラーメンだ。ごみはすべてポーターが回収し、まとめて持ち帰る。

 チョンさんの妻のルオンさんはこう話す。「以前、私たち夫婦は畑仕事だけをしていたのですが、雨季になると食料が足りなくなるんです。でも今は、夫も私もポーターの仕事をしていて、1回2日間の仕事で100万VND(約6000円)の収入になります。時にはお客さんがチップをくれることもあります」。

 ルオンさんによると、繁忙期は観光客が多く、休憩ポイントも寝るスペースがなくなるため、ポーターは外で寝たり、暖を取るための薪を探したりしなければならないという。ポーターを始めたばかりのころは仕事に行くたびに身体が痛くなっていたが、長く働いているうちに慣れてきて、今では客がいれば毎日でもポーターの仕事に出かけることができるそうだ。

 9月から年末にかけては、1回2日間の仕事に何度か出かけて、ポーター1人あたり平均して月に700万~800万VND(約4万3000~4万9000円)を稼ぐことができる。モン族にとって、この収入はかなり高い。そのおかげでチョンさん夫妻は台風で損傷した自宅を修繕することができた。一方、先のブレさんはテレビと冷蔵庫を買うことができた。

 最近、ポーターたちも積極的に魅力的な観光サービスモデルを開拓し、ホームステイとコラボレーションしたりしている。ポーターという仕事は、収入を得るだけでなく、興味深い旅や体験を通じて多くの人々に地元の観光を知ってもらうことに貢献するという意味もあるのだ。 

[Lao Dong 09:21 23/10/2023, A]
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