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[特集]

クリントン元大統領に村山元首相…著名政治家らも訪れたホーチミンのフォー店

2023/09/17 10:29 JST更新

(C) dantri
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 ホーチミン市1区にあるフォー店「フォー2000(Pho 2000)」は、ビル・クリントン元米大統領や村山富市元内閣総理大臣、ボー・バン・キエット元首相など、多くの著名政治家が訪れた場所として知られている。

 フォー2000がオープンして数か月後のこと、当時の在ホーチミン米国総領事館の責任者が、オーナーのアラン・タンさんに「今度VIP客をお迎えしたいので、検査のためにお店の料理を持ち帰ってもよろしいでしょうか?」とたずねた。タンさんは特に深く考えず、「どうぞご自由に!」と答えた。

 それからさらに数か月後、仕事で米国に滞在していたタンさんは、義母からの電話を受けた。電話の向こう側で慌てふためく義母は「ちょっと!クリントン大統領がうちの店にいらっしゃるみたい」と言った。タンさんと妻は喜んだのもつかの間、2人は米国にいるためVIP客を直接迎えることができず、不安でいっぱいになった。

 「多くの人が、私が政治家と『ただならぬ』関係にあり、クリントン氏を迎えるために店をオープンしたんだろう、と言いました。でも1つ言えるのは、すべて偶然だったということだけです。もし偶然じゃなかったとしたら、どうして私はそのとき、彼を迎えるためにベトナムにいなかったんでしょうか?」とタンさんは語る。

 1999年末、タンさんはホーチミン市1区にフォー店をオープンすることに決めた。そして、オープンして間もなく、ベトナム料理を楽しみたい外国人観光客の間でおなじみの店となった。タンさんがベトナム系米国人だと知ると、外国人はさらに感銘を受けた。

 当時、在ホーチミン米国総領事館の責任者もまた、妻や子供、友人たちを連れてよくこの店を訪れては、越僑オーナーが作るフォーはとても美味しい、と褒めていた。

 2人は親しかったが、ベトナムを訪問するクリントン大統領が食事をする場所をリストアップしていた総領事館の責任者は、フォー2000もリストに入れていたものの、ぎりぎりまでタンさんに明かすことはなかった。

 2000年11月のある日、多くの警備車両が店の前の通りを取り囲んだ。その数時間後、クリントン大統領が到着し、2階の席に着いた。そのときになって初めて、タンさんの家族はクリントン大統領が自分たちの店を訪れるという話が本当だったと信じることができたのだった。

 クリントン大統領は、鶏肉のフォーとマンゴーのスムージーを注文し、舌鼓を打ったという。クリントン大統領から料理について直接のコメントはなかったが、最後の1口まで平らげ、店のシェフやスタッフたちと積極的に写真を撮影した。そして、店のバルコニーに立って人々に手を振ったりもした。

 クリントン大統領が訪れてから、フォー2000はますます有名店となり、20年以上の間に多くのスターや著名人、海外の政治家などを迎え入れてきた。タンさんは、村山元首相やタイの王妃、ボー・バン・キエット元首相、ボー・グエン・ザップ大将などから、直々に食事会の料理長に指名された。

 しかし、タンさんの成功までの道のりは決して平坦ではなかった。1990年代、タンさん夫妻は高級レストランビジネスの先駆者の1人で、「ル・メコン(Le Mekong)」や「ベトナムハウス(Vietnam House)」、「レモングラス(Lemon Grass)」、「ダラットハウス(Dalat House)」、「ブルージンジャー(Blue Gringer)」、「シェフラップ(Chef Lap)」など、多数のレストランチェーンを保有していた。

 しかし1998年、アジア通貨危機によりタンさんのビジネスも深刻な影響を受けた。そこでタンさんは、層を問わず誰でも手頃な価格で楽しめ、かつ民族の伝統を受け継いだファストフードビジネスを始めることにした。

 ベトナムにはフォーやブン、春巻、フーティエウ、バインカイン、バインコット、バインセオなど数えきれないほど有名な料理があるが、タンさん夫妻がこの中から選んだのはフォーだった。

 早速、タンさん夫妻は動き出した。6か月かけて、北部から南部までありとあらゆる人気のフォー店を調査した。そして数か月後、ホーチミン市のボーティサウ通りに、初めての高級フォー店「フォー2000」をオープンした。

 当時からベトナムのフォーはどこでも美味しかったが、店には粗末なテーブルと椅子しかなく、紙くずが床に捨てられ、衛生状態が良くなかった。そこでタンさんは、きれいなレストランでフォーを楽しめるようにしたのだった。オーナー自ら作るフォーは、瞬く間に話題を呼んだ。時には1000人以上が行列を作るようなこともあったという。

 店はその後移転し、クリントン元大統領が訪れたころはベンタイン市場のすぐそばのファンチューチン通りにあった。現在は同じくベンタイン市場のそばの、レタントン通りにある。オープンから20年以上が経った今も、店には多くの客が訪れる。客の90%以上が外国人だ。

 アジアからヨーロッパまで、世界中で有名な高級レストランを営み、生涯料理人として生きてきたタンさんだが、タンさんの料理人人生の中で最も大きな誇りはベトナムの伝統料理だという。「フォーがあるところには、ベトナム人の文化があるということですから」とタンさんは語る。

 「好みは人それぞれなので、どの店が美味しいとか美味しくないとか言うつもりはありません。でも、私はこれまで、心を込めて、愛情を持ってフォーを作り続けてきました。多くの外国人のお客様がフォー2000を好んでくださっているということはつまり、フォー2000はインターナショナルな基準を満たしていて、世界のどこにでも店を出せるということでしょう」とタンさんは笑った。 

[Dan Tri 05:36 13/09/2023, A]
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