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[特集]

伝統工芸村の職人夫婦が生み出す籐編み食卓カバー、美しさとユニークさで注目

2023/06/18 10:26 JST更新

(C) vnexpress
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 ハノイ市中心部から25km、チュオンミー郡フーギア村のフービン伝統工芸村は、籐(とう)の工芸品で有名で、400年以上の歴史を持つ。籐で編まれた漢字の書の作品など、かつてこの村で作られた製品は今もなお、北中部地方トゥアティエン・フエ省の宮廷骨董博物館に保管されている。

 現在の最も有名な製品の1つは、チャン・バー・カーさん(男性・75歳)と妻のグエン・ティ・ティエンさん(女性・72歳)が生み出す、絹糸のように細く白い籐で編まれた食卓カバー(蠅帳)だ。

 ティエンさんは代々籐編みの伝統工芸に携わってきた家庭に生まれ、自身も6歳のころからこの仕事を手伝ってきた。

 ティエンさんが作る製品はこの地域で最も美しいとされ、サンプル品として注文を受けることも多い。若かりしころのティエンさんは編むスピードも普通の人の2~3倍で、伝統工芸村で一番だった。

 職人としての収入で、十分に5人の子供たちを養いながら仕事を続けることができた。夫婦は、子供や孫の生活が安定したら、老後は伝統工芸に敬意を込めて何かユニークな製品を作りたいと考えていた。

 そこでティエンさんは、北部の家庭でおなじみの食卓カバーを作ってみることにした。2003年のある日の夜、ティエンさんは夫のカーさんに、食卓カバーの作り方を習いに行きたいと話した。しかしカーさんはこう答えた。「外に勉強しに行く必要はないよ。アイデアを言ってみて。私がやってみようじゃないか」。

 翌日、カーさんは籐を40kg買い、この中から条件に合った5kgを選別した。そして皮をむいたり割いたりといくつもの工程を経て、4mの長さの糸状に加工した。「最初のお試しのころは、しょっちゅう妻からこれじゃ作れないから籐をもっと細く滑らかにして、と言われたものです」とカーさんは語る。

 伝統的な食卓テーブルは太い籐で編まれ、頑丈な見た目だが、ティエンさんの作る食卓テーブルはというと絹糸で編んだかのように繊細で、革命的なものだった。

 最初の完成品は縦糸が300本だったが、後に編み糸を絹糸のように細く改良し、縦糸の本数はなんと1200本になった。持ち手を作るのに3日、平らな部分に7日、枠の部分にさらに7日かかり、集中すれば夫婦で1か月に2つ作ることができた。

 2010年の初め、夫婦の食卓カバーがベトナム手工芸品輸出協会(VIETCRAFT)によって展示会に出品された。それ以来、この食卓カバーは国内外で注目を集めるようになり、2012年から2014年まで3年連続で夫婦は海外に招かれ、交流や実演を行った。

 直近では、2020年に農業農村開発省主催のベトナム手工芸品コンテストで最優秀賞を受賞した。その時に主催者が食卓カバーの重さを量ったところ、290gだった。

 チュオンミー籐編み協会のグエン・バン・チュン会長によると、この伝統工芸村では約700世帯が籐編みを行っているが、食卓カバーを作っているのは2世帯だけだという。中でもカーさんたちの食卓カバーは特別で、独自の技術とノウハウが必要になる。

 夫婦の次男であるチャン・バン・トゥオンさんは、芸術関係の仕事に就いているが、両親が生み出す食卓カバーを見ると感心せずにはいられない。絵画界隈のトゥオンさんの友人たちも、それが手編みだとは思いもせず、機械で型押ししたものだと勘違いするほどだという。

 カーさんとティエンさんはこれまでに約400個の食卓カバーを作ってきた。ほとんどが受注生産で、現在の価格は1個あたり3000万VND(約17万8000円)となっている。「最初にこれを作ったとき、買ってくれる人がいるとは思っていませんでした。とにかく美しく、ユニークなものを作りたいというだけだったんです」と夫婦は語る。

 需要はあるものの、子供や孫たちはカーさんたちに休んでもらいと思っており、最近では夫婦はたまにしか仕事を引き受けていない。今年に入ってからは3つ作っており、2つはタイのお客さんに売り、1つは近所の人に贈った。

 ときには新しい製品の開発に取り組むこともある。直近ではお供え物のお盆にかぶせるサイズの卓上カバーを作る予定だ。

 ただ、カーさん夫婦には悩みがある。それは、子供や孫がたくさんいるにもかかわらず、誰も伝統工芸を継いでいないことだ。村の人が作り方を習いにくることもあり、夫婦も手取り足取り教えるが、それでも夫婦が手掛けるような卓上カバーを編み上げられた人は今までにいない。

 「難しいからというよりも、細かさと忍耐力が求められるからでしょう。多くの人は、1200本もの縦糸を見たらどこから編んだらいいのかもわからなくなり混乱するみたいです」とティエンさんは話した。 

[VnExpress 06:31 11/06/2023, A]
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