[特集]
自動車修理工の人気TikToker、工場を「スタジオ」に仲間と作る熱い動画
2023/03/26 10:40 JST更新
(C) danviet |
(C) danviet、フンさん(右)と父親のレ・ズイ・クオンさん(左) |
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東北部地方フート省タインソン郡タックコアン村在住のレ・ズイ・フンさん(男性・28歳)は、自動車修理工でありながら、100万回再生を超える「ミュージックビデオ」で人気のティックトッカー(TikToker)でもある。
フンさんの動画は、トラックの鉄箱をピアノに、オイル缶をドラムに見立ててセッティングし、タイヤを積み上げてステージを作り、BGMに合わせてエア演奏するというものだ。
フンさんはもともと音楽が好きでその道に進みたかったが、家庭の事情で夢を追うことができなかった。長いこと、ハノイ市で電気工やれんが積み工、警備員、駐車場管理、清掃員などの仕事を転々としながら生計を立てた後、北部紅河デルタ地方フンイエン省で工場労働者として働いた。フンさんは、自分の人生はこのままずっと退屈で静かに過ぎていくのだろうと思っていた。
2020年3月にフンさんの弟が兵役に行くと、故郷には父親だけが残った。そこでフンさんは故郷に帰ることにし、父親の世話をしながら家族の自動車修理工場を継いだ。
フンさんは、「自動車修理工場の家の息子なので、仕事自体はそこまで難しいものではありませんでした」と語る。しかし、自動車修理の仕事に馴染むと、毎日チューブやタイヤだけに囲まれる生活がまた少しつまらなくなってきた。
そこでフンさんは、気分が上がり、楽しくなり、そして家族の生活がより良くなるよう、何かもっと画期的なことをしなければ、と考えるようになった。
「仕事中はいつも音楽をかけて、1つ1つのメロディに酔いしれる感覚を楽しんでいたんです。そこからミュージックビデオを作るというアイデアが生まれました。それで、撮影スタッフとして友人を誘いました。最初は冒険的な瞬間を切り取ったBGM付きの面白みのある動画がメインで、動画はまだ大雑把でシンプルなものでした。でも、動画は予想外にウケて、たくさんの人が応援してくれました。1万件もの称賛や励ましのコメントをもらったのを覚えています」とフンさん。
「
Hungther19」というフンさんのティックトック(TikTok)チャンネルは、今は3人のメンバーで運営している。普段は自動車修理工場の客が少なく仕事が暇な昼か夕方に撮影する。1回の撮影にかかる時間は約2時間だが、仕事中にアイデアがひらめいたときは、セットを作らずにそのまま撮影することもある。そういった動画の場合は、約30分で撮影できる。
チャンネルを始めてからまだ2年余りしか経っていないが、フォロワー数は54万人超、いいね数は940万回超(いずれも2023年3月下旬時点)という人気チャンネルに成長した。再生回数も数十万回、多いときは1000万回を超えることもある。
フンさんの仲間でカメラマン担当のディン・クオック・タイさん(男性・22歳)はこう話す。「ミュージックビデオは、コロナ禍にフンが大切にしていたコンテンツです。誰もが悲しく辛い時期だったので、感動を与えたくて、僕らで何かしたいと強く思っていました」。
動画はフンさんがシーンを考案し、脚本と監督、編集を兼任する。テーマはコロナと戦う兵士や恋愛、家族愛など様々だ。そして、フンさんの自動車修理工場が「スタジオ」になる。工場にあるものはなんでも大道具や小道具として使う。
例えば、トラックの鉄箱はピアノ、タイヤレンチはマイク、オイル缶はドラムに見立て、タイヤは積み上げてステージにする。また演出として、藁を燃やしてスモークを焚き、車両の洗浄機で雨を降らせる。それからフンさんの衣装は仕事用のぼろシャツ、メイクはエンジンオイルで準備完了だ。
動画が「バズった」おかげで、2023年のテト(旧正月)にはいくつかのブランドの広告に協力し、かなりのお金を稼いだ。しかしながら、フンさんの本業はあくまでも自動車修理工であり、この仕事の場こそが、動画作りにおいて最大のインスピレーションの源となっている。
さらに、フンさんは自分の情熱や創造性が一時的な流行りで終わってしまうことを望んでおらず、自動車修理工の仕事をしながら、もっと成長できるまで学びを続けていきたいと思っている。
フンさんはまた、十分な条件が揃ったら音楽とエンターテインメントを専門とするユーチューブ(YouTube)チャンネルも開設したいのだという。チャンネルの運営で得られた収益は自動車修理工場の改修に充て、工場で多くの雇用を創出したいと考えている。
フンさんには、「他の人を助けるためにはまず自分が成功しなければならない」という信念がある。人生において、どんな状況にあっても情熱と創造性さえあれば、誰だって自分を肯定する機会が得られる。特に今のテクノロジー時代では、デジタルコンテンツの制作こそ、若者が自分の情熱を解き放つための効果的な手段となるのだ。
[Dan Viet 22:18 13/03/2023, A]
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