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[特集]

がんに打ち勝ったシングルマザー、病を経て人生に輝き

2022/06/26 10:19 JST更新

(C) toquoc
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 トゥイさんにとってがんは人生の終わりではなく、彼女の人生をより輝かしく再スタートさせるためのチャンスとなった。

1日が50時間あればと願った闘病の日々

 「お母さんね、がんになっちゃった!」トゥイ・ボップの愛称で知られる1983年生まれのブイ・トゥー・トゥイさんは、2015年に胸部に腫瘍が見つかった。その数か月後、息子に自身ががんであることを告げた。

 がんがトゥイさんを襲ったのは青天の霹靂だった。息子のボップくんを連れて結婚生活を離れて間もなかった彼女にとって、ようやく生活が落ち着いてきた頃だった。自分ががんだと知らされた瞬間、トゥイさんは医師が何を言っているのかもよく聞こえず、息子が1人きりになってしまうことを考えて、ただただ泣きたくなった。

 「多くの人は、その瞬間は死刑判決を聞くのと似ていると言います。でもまったく違いました。死刑判決を受けるということは、その人が罪を犯したことを意味するのであって、遅かれ早かれその代償を払うのは当然のことです。でも、まだ若く健康で美しかった私に『がん』の文字が唐突に押し寄せてきました。私にとってがんは、終わりではなく乗り越えなければならない挑戦のようなものでした」とトゥイさんは打ち明けた。

 1週間泣き、それから彼女は生き続けるために立ち上がった。「がんは乗り越えなければ先に進めない障害物のようなものだけれど、自分の人生はこれからも続いていくんだから!」と考えたトゥイさん。病気になる前から息子のボップくんの前では決して疲れた様子や辛そうな姿を見せなかったが、闘病中も変わらず息子の前で気丈に過ごした。

 当時小学4年生だったボップくんは、献身的に母親の世話をした。学校から帰ると母親と病院に行き、時には母親の隣に静かに横になって点滴の針を観察し、母親が吐き気をもよおしている様子を感じると、付き添って世話をした。ボップくんは家でも、洗濯、皿洗い、掃除などのすべての家事を1人で黙ってこなした。

 一方、トゥイさんは狂ったように息子の将来を心配していた。当時、トゥイさんは自分が早く死んでしまい、息子の世話をする人が誰もいなくなることをとても心配していた。化学療法の期間中もトゥイさんは忙しく働き、自分ががんなのだと考える余裕もなかった。

 貿易会社を退職し、トゥイさんは手作りのパンやお菓子を売り始めた。普段は様々な種類のパンを作り、季節に応じて月餅やちまき、煮こごりなどを作って販売した。当時のトゥイさんは、化学療法の点滴が終わると針を抜いて仕事に戻っていた。

 長い間、トゥイさんは活動時間を確保するため1日3時間程度の睡眠で過ごした。限られた時間の中で、生活のためにパンやお菓子を作って販売し、息子と一緒に運動し、勉強にも付き合った。あと数か月しか生きられないとしても、その残された数か月を子供のために使い、全力を尽くさなければと思っていた。そしてトゥイさんはその壮絶な闘病期間を見事に乗り越えた。

 2015年12月3日に最後となる8回目の治療を終えると、トゥイさんは毎月1回の卵巣機能抑制剤の注射と、女性ホルモンを抑制するための薬を5年間毎日飲み続ける必要があった。

 薬の副反応で髪がすべて抜けてしまい、外見が男性のように変化した時期もあった。このままいつか本当に男性になってしまうのではないかと心配したこともあったが、もしそうなったとしても、生き続けることができて、息子の成長を見ることができるのであれば、トゥイさんにとってはそれが何よりの幸せだった。

「脱皮」して、かつてないほど健康に

 そんな心配をよそに、トゥイさんは奇跡的にがんに打ち勝った。生活スタイルを変えたこと、また喜びや前向きなエネルギーを楽しんだことで、トゥイさんは徐々に別人のように変身していった。8年間におよぶ闘病の末、トゥイさんは病気になる前よりもさらに美しく、輝きを増した。

 「私は乳がんになったこと、そしてまだ自分を変えられる良いタイミングにそれが起きたことに感謝しています。それまでの私は無頓着な人間で、好きなように遊び、夜食を食べ、夜更かしをし、カゲロウのように働き、運動をする習慣なんてありませんでした。そして、エネルギーを使い果たしたときにがんは現れました。それは、不健康な生活を送り、自分を大切にしていなかった代償のようなものでした。今の私は、以前とはまったく違います。病気になってからは1食1食が自分の命を救うかもしれないという思いで、食事療法や運動療法について学び始めました。さらに理解を深めるため、栄養に関する国際的なオンラインコースも受講しました」とトゥイさん。

 2015年から今まで、トゥイさんは日常的にウエイトトレーニング、ジョギング、ジムトレーニング、登山、水泳などの運動をストイックに続けている。それまでは何も運動をしてこなかったトゥイさんだが、現在ではボクシング、登山、ジョギング、サイクリング、アーチェリー、カヌーなど様々なスポーツを楽しんでいる。

 また、健康状態が安定しているときはよく長期にわたって国内外へ旅行に出かけている。ただし、リゾート旅ではなく、探検や修行のような旅だ。さらに、長距離ランや90kmサイクリング、厳しい地形での登山などの大会にも参加している。トゥイさんはそんな自分について「もはやシングルマザーじゃなくてアイアンマザーね」と冗談を言っている。

 トゥイさんの食生活と生活スタイルも以前とは変わった。経済的なプレッシャーが軽減したため、以前のように夜更かししてまで働くことはなくなり、早寝早起きするようになった。そして、健康的な食生活を維持している。

 そのおかげで、トゥイさんの健康状態は精神的・身体的ともにとても安定しており、一般的な39歳に比べてもずっと良好だ。今も残っているがんの痕跡といえば、あえて読もうとしてこなかった涙の自伝と、過去の深い経験だけだ。 

[To Quoc 19:46 11/05/2022, A]
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