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[特集]

日本初のベトナム人ロックバンド「KURROCK」、異彩を放つ魅力

2022/06/12 10:14 JST更新

(C) KURROCK
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(C) VIETJO/A-TIM’s
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 2022年6月に東京・代々木公園イベント広場で開催された「ベトナムフェスティバル2022」で、ひときわ異彩を放つアーティストがステージに登場した。東京をベースに活動する、ベトナム人5人と日本人1人からなる6人組ロックバンド「KURROCK(黒ック)」だ。

 KURROCKの音楽からは、4000kmも離れた2つの音楽のバックグラウンドの融合が感じられる。

 2022年2月に1stシングル「越(Vuot)」を発表するまでも、日本の「Pretender」や「猫」、ベトナムの「Dieu Nho Nhoi」などの人気曲をカバーしてライブハウスで演奏し、日本で暮らすベトナム人の間で親しまれていた。

 外国人バンドでありながら、日本語とベトナム語がミックスしたKURROCKの音楽は、日本のライブハウスでもファンの心に深い印象を残した。

 他の多くのロックバンドと異なり、KURROCKには女性ボーカルのHeatherと男性ボーカルのTrokの2人のメインボーカルがいるが、Heatherはやわらかくて甘い声、Trokは力強い声と、それぞれボーカルのスタイルが異なる。これにより、バンドのパフォーマンスの深みと豊かさが増している。

 リーダーのKJOは、バンドが追及しているロックの音楽性について、「ロックは音楽の中で感情を表現するというだけでなく、より多くの経験をさせてくれるんです」と語る。ロックは歌詞もアーティストのパフォーマンスも力強く、時にトゲがある。「単に『ロック風』というのではなく、『ロック精神』を持ったバンド」、それがKURROCKの目指すものでもある。

 ギターとアレンジを担当しているDannaを除くメンバーは、いずれも音楽とは関係のない仕事をしている。しかし、彼らに共通しているのは、音楽に対する愛だ。紅一点のHeatherは、メンバー同士が出会ったときのことをこう語る。「最初に会ったのはベトナム大使館で、何度か一緒に歌ったんです。その後、よく一緒に遊びに行くようになってから、KJOがバンドを組もうと言い出して、すぐにOKしました」。

 「日本でバンドを組むというのは、思っていた以上に大変でした」とKJO。異国の地での生活という不安のほかに、時間的な問題もあった。当時はメンバーそれぞれが別々のところに離れて暮らしていたため、行き来するのに時間がかかっていたが、現在ではその問題も徐々に解消されつつある。「バンド練習をしやすくするために、同じ建物に引っ越したんです」とHeatherは話す。

 結成したのは2020年末だが、KURROCKが最初のオリジナル曲を発表したのは2021年のことだった。当初、バンドを結成したのはメンバーの音楽への情熱を形にするための手段でしかなく、日本やベトナムの楽曲をカバーするだけだった。

 しかしやがて、自分たちの感情や声を表現するにはカバー曲を歌うだけでは物足りなくなった。そこで、ベトナムと日本の文化の融合という自分たちのアドバンテージを生かし、ベトナム語と日本語を組み合わせた独自の音楽スタイルを確立することにした。

 初期のライブを振り返って、Dannaはこう語る。「結成したばかりのころは、プロフェッショナルかどうかにはこだわらず、単に自分たちの情熱を表現し、自分たちが楽しむためにステージに立っていました。でも、ベトナム人も日本人も、お客さんが積極的に受け入れてくれているのを見て、自分たちはもっと上に行けると思ったんです」。

 ベトナム語の歌に英語の歌詞を入れることはもはや目新しくないが、ベトナム語の歌に日本語を入れるというのは、KURROCKの「Vuot」が初めてだ。KURROCKは以前、自身のSNSで「音楽で両国をつなげたい」と発信したことがある。そしてこれは、ディレクターは日本人、サウンドチームはベトナム人という2か国の力で制作された「Vuot」にはっきりと表れている。

 このコラボレーションについて、Heatherは「2か国語で歌詞を書くとき、もう一方の国のファンの好奇心をかきたてることが私たちの目的なんです。例えば、日本人のファンがベトナム語の歌詞の内容を理解できなくても、メロディや発音に興味を持ってもらえたら、ベトナムの音楽をもっと知りたいと思ってくれるかもしれないし、その逆もしかり」と語る。

 KURROCKのベトナム人メンバーは長年日本で暮らし、仕事をしてきたものの、日本語で歌詞を書く際には日本人に手伝ってもらっていた。しかし、多くの人から意見や訂正のコメントをもらったところ、歌詞の本来の意味が変わってしまった。そこで、フィードバックと当初のアイデアのバランスをとりながら、2つの言語の発音と意味が分離してしまわないよう、多くの時間を費やして調整していった。

 Dannaは、バンドの日越の楽曲のアレンジについてこう語る。「ハーモニーは日本っぽく、メロディ展開はベトナムっぽくしています。それと、日本の力強いビートと、ベトナムのロックのスタイルからもインスピレーションを得ています。肝心なのは、日本っぽさとベトナムっぽいメロディを保ちつつ、わざとらしくなく自然に聴けるようにすることなんです」。

 商業音楽に流れることなく好きなことをやる。それが、KURROCKが自分たちの情熱を追い求めるやり方だ。そのため、KURROCKは自分たちの音楽を聴いてくれるファンを愛し、大事にしている。

 バンドの活動の中で印象に残っていることは何かと尋ねられると、ベースのSangはある思い出を語ってくれた。「それまでは10人くらいしかお客さんがいなかったのに、あるとき25人ほども集まってくれたんです。日本人もベトナム人も、色んなところから来てくれて。とてもありがたく、自分が音楽をやっていくモチベーションになりました」。

 KURROCKは5月に2ndシングル「疼(Lanh)」を発表した。今年は10曲を収録したデビューアルバムも発表する。「日本で活動するベトナムのバンドならではのスタイルを作りたい」という、KURROCKの願いを叶えた作品になる。



 

[Saigoneer 04/03/2022, A]
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