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[特集]

レース鳩に熱中する人々、「基地」を自作し「戦士」を訓練

2022/02/20 10:16 JST更新

(C) vnexpress
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 何か月にも及ぶ訓練を経て、ハトの「戦士」たちはレースに出場し、無数の試練や危険を乗り越え、数百~1000kmの距離を飛んでレースのチャンピオンを目指す。

 ホーチミン市8区在住のグエン・タン・フォンさん(男性・1979年生まれ)は、時間が空くとまだ若いハトを撫で、世話をする。このハトはレース鳩の卵で、フォンさんは今後のレースに向けて準備をしている。

 2000年代からホーチミン市の愛鳩家の間では鳩レースについて知られていたものの、当時はまだ自分のハトを持ち寄って競争させるだけだった。2009年ごろ、ホーチミン市にレース鳩のグループや協会が現れ始めて以来、プロの鳩レースの大会が開かれるようになり、今や多くの参加者と見学者を集めている。

 ブリーダーたちはレース鳩を「戦士」、鳩舎を「基地」と呼ぶ。ブリーダーは自分の戦士を1000kmの距離のレースに出場させるため、自分で基地を作り、自分で訓練をする。

 「基地は単なる鳩舎ですが、見た目や出来栄えが良い基地を作りたければ、ブリーダーは色々な基地を参考にしなければなりません。基地はハトが暮らす場所であり、レースで疲れ果てて帰ってくる場所でもあるので、とても重要で、お金をかける必要があるんです」とフォンさんは語る。

 基地を作った後、最も難しい作業は戦士の訓練だ。サイゴン鳩協会の会長であるトー・チャンさんによると、レース鳩はベトナムの在来種や観賞鳩ではなく、いずれも外来種の「子孫」だという。

 「以前はレース鳩といえば主にタイや中国の品種でしたが、後にヨーロッパからも入ってくるようになりました。彼らはレースという唯一の目的のために、幼いころから予防接種を受け、大切に育てられます」とチャンさん。

 良い品種を選んで5~7日かけて孵化させると、ブリーダーはハトに脚環をつける。数か月経つと羽も十分に育ち、ようやく飛行訓練を始めることができる。最初は空中をぐるぐると飛び回る訓練から始める。この訓練は、羽を強くし、またハトに自分の基地を覚えさせることが目的だ。

 フォンさんはこう語る。「生まれてから6か月経てば、レースに向けた訓練を始められます。ハトの安定性を把握するために、60km、120km、200km、350km、500km、600km、700km、800kmと飛行距離を伸ばしていきます」。

 ただし、この作業には多くのスキルとチャレンジが求められる。長距離訓練の場合、「コーチ」は他の省・市まで戦士を連れて行って放つ必要がある。

 しかし、初めて放したときに戦士がそのまま姿を消してしまうケースも多い。基地に帰還する道中で天敵に遭遇したり、健康状態が十分でなく疲れ果ててしまったりするためだ。こうした場合、ブリーダーは孵化からやり直し、成長を待ってまた訓練を行う。

 「良いレース鳩というのは、安定して飛行し、訓練中に時間通りに基地に帰還できるハトです。参加するレースに合わせて、スピードや持久力などそれぞれ優れた品種を選んでいます」とフォンさん。

 フォンさんは「訓練中、ブリーダーは一定の距離を1~3回飛行させ、レースに参加するのに十分な体力があるかどうかを把握します。1羽の戦士が800kmの距離を飛べるようになるまで、100万VND(約5080円)以上のコストがかかります」と付け加えた。

 戦士が飛行訓練で様々な試練を乗り越えられるようになると、「コーチ」はいよいよ戦士をレースに参加させる。条件や状況に応じて、レースは長距離だったり短距離だったりと異なる。

 レース当日、ブリーダーは自分が育てた戦士たちを連れて会場に行き、参加登録をする。ここでは主催者が羽や目の色、体重を記録するほか、番号が書かれたスクラッチ式のシールを脚環につける。

 その後、ブリーダーは主催者が事前に準備した放鳩地に戦士たちを連れて行き、規定の時間に一斉にケージの扉を開いて放つ。こうして空のレースを征服するための旅が始まる。

 一方、その間にブリーダーは基地に戻り、自分の戦士が帰還するのをそわそわしながら待つ。

 「レース当日は、追い風か向かい風か、雨か霧かなど天候にも左右されるため、ブリーダーは予想した時間通りにハトが帰還するかどうかを知るのはとても難しいんです」とチャンさんは語る。

 さらにチャンさんはこう付け加えた。「しかも、ハトが二度と帰還しない可能性もあります。レース中にハトが行方不明になることはよくあることです。道中に疲れてしまったり、ワシやハヤブサ、タカなどの天敵に遭遇してしまったり、まれに人間に狩られてしまうこともあります」。

 長距離レースの場合、疲れ果てたハトはいったん着陸し、少しの時間、もしくは一晩休んでから再び飛び立ち、基地を目指すこともある。

 「戦士たちは道中に多くの試練や危険を乗り越えなければならないので、彼らが基地に帰還するというのはとても誇らしいことなんです」とチャンさん。

 チャンさんは「基地に帰還すると、ハトは疲労困憊の様子で、眠りこけてしまいます。羽はぼさぼさで、身体に傷ができていることもあります。自分のハトが無事に帰還すると、とても幸せで最高の気分です」と付け加えた。

 戦士が基地に帰還すると、ブリーダーは出発前に脚環につけられたシールのスクラッチを削り、書かれた番号を主催者にテキストメッセージで送信し、帰還を報告する。最も早く主催者にテキストメッセージを送ったブリーダーの戦士が、すなわちレースの勝者となる。

 チャンさんによると、飛行速度は短距離レースで時速70~80km、長距離レースで時速40~50kmだという。

 「2017年に行われた、南中部沿岸地方クアンガイ省のドゥックフォー駅からホーチミン市まで(注:直線距離で約530km)のレースに参加した1羽のハトが、わずか6時間という記録的なスピードで帰還しました。ホーチミン市のレース鳩の中で、この記録を破ったものはいません」とチャンさんは語った。 

[Vietnamnet 04:30 16/02/2022, A]
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