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[特集]

テトを前に大忙し、100年の歴史を有するライスペーパー作りの村

2022/01/30 10:42 JST更新

(C) thanhnien
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を乗り越え、100年以上の歴史を有する工芸村の1つで「バインチャン(banh trang=ライスペーパー)村」と呼ばれる南部メコンデルタ地方ビンロン省チャーオン郡ルックシータイン村のクーラオマイは、テト(旧正月)を前に大忙しだ。

 ルックシータイン村タンタイン村落に暮らすチャン・ティ・トゥイ・リエウさん(女性・58歳)によると、ライスペーパー作りはリエウさんの義祖母から義母へ、義母からリエウさんへと3代受け継がれ、3代の家族を養ってきた家業だ。ライスペーパー作りと夫の大工の仕事で夫婦は2人の子供を育て上げた。

 「かつてのライスペーパーはそれほど多様ではなく、水に浸して使うシンプルなタイプと、塩味がついた柔らかいタイプの2種類しかありませんでした。あるとき、カントー市(南部メコンデルタ地方)にライスペーパーを売りに行きながら、こんなに苦労して売らなければならないのなら、もっとたくさん買ってもらえるように色々な種類のライスペーパーを作ればいいのではないかと思いついたんです。それで昼も夜もレシピを探し、何度も失敗を重ねた後に甘いライスペーパーや焼いたライスペーパーを作り出しました」とリエウさん。

 リエウさんは、ライスペーパーは美味しいだけでなく見た目も魅力的でなければならないのだと付け加えた。そこでリエウさんは、ドラゴンフルーツやパンダンリーフ、トウガラシなど様々な原料を使いながらも、ココナッツミルクやゴマの昔ながらの風味を残したライスペーパーを生み出していった。

 「新型コロナのピーク時は、移動も難しく、売れないのではないかと思ってあまり作りませんでした。でも、テトが近付いた今は作っても作っても追いつきません。毎日約500枚を出荷していますが、その日のうちに売り切れてしまいます」とリエウさんは語る。

 同じくタンタイン村落に暮らすグエン・タイン・キエムさん(男性・66歳)の家族も60年以上にわたりライスペーパー作りを家業としている。キエムさんによると、新型コロナ禍の今は誰もが経済的に厳しく雇われ仕事をしているため、ライスペーパー作りの工員を探すのはとても難しいという。

 そのため、キエムさんと妻の2人だけで作業をし、毎日400~500枚を出荷している。「ライスペーパーを作るためには、朝4時から夜9時まで作業をしてようやくお客さんに届けられます。一方で、種類によっては早く干したからといって日照りが足りなければしわが寄ってしまい、不良品に見えてしまうんです」とキエムさん。

 キエムさんの収入は1日20万~30万VND(約1000~1500円)程度と、苦労の割に厳しいものの、この仕事で5人を育て上げた伝統的な家業であるため、この仕事を辞めるつもりはないのだという。

 キエムさん夫妻には5人の子どもがいるが、誰も後を継ぎたがらず、キエムさんは家業の伝統が途絶えてしまうのではないかと心配している。「子どもたちは学業を終えてからそれぞれ別のところで働いてそれぞれ家庭を持っているので、誰も家業を継ごうとしません。私が死んだらもう終わりでしょう。この仕事はとても大変ですが、その割に収入は多くありませんから」とキエムさんは物憂げに語る。

 先のリエウさんも同じく、子ども2人のどちらも後を継ぎたがらず、3代続く家業の後継者がいないことを心配している。「子ども2人はもう大人で、それぞれ仕事があります。子どもたちは寝る間も惜しんで働く私たちを見てきたこともあり、自分たちが養うから仕事を辞めるよう私たちに言いますが、私は嫌なんです。まだ働きたいし、後を継いでくれる人を見つけたいと思っています」とリエウさんは話す。

 クーラオマイライスペーパー協同組合のルオン・バン・トン組合長によると、この地域では70世帯余りがライスペーパー作りを行っているが、ほとんどが小規模だという。現在は競争の時代で、競争に勝てないと多くの世帯がライスペーパー作りを辞めてしまい、協同組合には15世帯しか参加していない。

 「協同組合に参加している世帯はいずれも古参で、製品も高品質です。最近は政府が製粉機やカッター、真空シーラーなどの導入やブランディングを支援しています。これにより、クーラオマイのライスペーパーはより広く知られるようになり、多くの在外ベトナム人(越僑)がお土産として購入してくれるようになりました」とトン組合長は語る。

 トン組合長はまた、ライスペーパー作りを家業としている世帯はいずれも手作業で行っているため、販売価格をこれ以上下げることはできず、大量生産される工業製品と競争することは難しいと話す。

 「かつては、子供たちを学校に行かせて将来の生活を変えられるようにライスペーパー作りでお金を稼いでいたものですが、今は誰も後を継ぎません。これは、このバインチャン作り村のジレンマです。でも、このところは技術支援や販売手段の変化のおかげで多くの世帯がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて製品を販売しやすくなり、収入も増えています」とトンさん。

 現在、クーラオマイのライスペーパーは多くの人々に知られる存在となっている。トンさんと組合員は、製品消費促進プログラムへの参加や一村一品運動(One Commune One Product=OCOP)への登録などに向けて動いている。

 近く、クーラオマイのライスペーパー作り村が装いを一新し、市場で確固たる地位を築き、そして何よりもこの伝統的な工芸村の炎が消えることのないよう若い世代が関わり、革新し、創造していくことが望まれている。 

[Thanh Nien 11:12 18/01/2022, A]
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