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[特集]

新型コロナ禍、両親と祖父母を失った14歳の少女

2021/09/26 10:46 JST更新

(C) thanhnien
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 ホーチミン市ビンチャイン郡在住のグエン・ティ・マイ・カインさん(14歳)は、父親が急死したショックから立ち直る間もなく、母親、そして母方の祖父母を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により相次いで失った。

 カインさんは両親に会う夢を見て目覚めた後、独りぼっちの自宅で涙を流した。

 カインさんはわずか1か月の間に両親と祖父母を失った。3世代が共に暮らし、いつも賑やかだった家の中は今や静まり返り、残されたカインさんは観音菩薩とともに祭壇に置かれた骨壷を黙って見つめた。

 カインさんの母方の伯父であるグエン・タイン・フンさん(49歳)によると、一家は3世代にわたり隣り合わせに家を建て、何十年も一緒に暮らしてきたという。

 カインさんの両親が新型コロナで突然亡くなってから、隣に住んでいるフンさんの家族と一番下の叔父がカインさんに食事を差し入れ、両親に線香を手向けるよう、そして自分の身の回りのことをこなすよう声をかけて励ましている。

 カインさんは同級生に比べて知的発達の遅れがあり、小学2年生を3回繰り返したものの進級できず、学校を辞めて自宅で母親の家事を手伝うようになった。

 カインさん一家は、7月の初めに南部メコンデルタ地方ロンアン省に暮らす叔母のもとを家族全員で訪ねた。叔母は病気で身体が弱っており、結婚もしていなかった。

 その数日後、カインさんの父親は倦怠感を訴え、ある日の早朝に倒れている父親をカインさんが発見した。カインさんは母親を呼び、2人で父親を抱き起こしたが、すでに息を引き取った後だった。

 父親は倒れる前、父親の伯父と2日間一緒に過ごしていた。カインさんと母親がロンアン省からホーチミン市に戻った後、母親に新型コロナの症状が現れたため、父親の伯父も検査を受けたところ、新型コロナに感染していることが判明した。後にその伯父も亡くなった。

 「警察が葬儀担当者に連絡し、その後の世話を依頼していました。父があまりにも急に死んでしまい、母はショックからなかなか抜け出せなかったので、私と母はホーチミン市に戻ることになったんです。ホーチミン市に戻った数日後、母は倦怠感と息苦しさを訴え、家族が病院に連れて行って検査を受けて初めて新型コロナに感染していることがわかりました。母は病院に行く前、私に家で自分のことをするように言いました。元気になったら帰るから、と言っていたのに、そのまま帰らぬ人となってしまいました」とカインさんはすすり泣いた。

 カインさんは家族での食事の様子や両親のことを思い出し、こう語った。「私は年齢の割に身体が大きいですが、いつも両親においしいものを食べさせてもらい、食事の世話をしてもらい、着るものがなくなれば駄々をこねて母に洗濯を手伝ってもらい、2人で一緒に洗濯物を干していました」。

 「今は1人でごはんを食べて、自分で洗濯をして洗濯物を干さなければなりません。洗濯物も私1人分だけです。家の中で家族の写真や母のミシンを目にするにつけ、何をするにも空虚で、孤独でただただ両親が恋しいです。夜寝ている時によく両親の夢を見るのですが、夢の中ではみんなで笑っておしゃべりしているのに、ふと目が覚めると私1人しかいません。両親が恋しくて泣き、もう一度寝ようとしてもまた夢で母の姿が見えるんです……。今はもう、夢の中でしか母に会うことができません」とカインさん。

 フンさんによると、カインさんの父親であるグエン・バン・サンさんはいつも近所の人たちに野菜や肉、魚を配っていたという。一方、カインさんの母親で、フンさんの妹であるグエン・ティ・トゥエット・マイさんは自宅で縫製の仕事をしていた。

 「きっとそのせいでサンは知らないうちにどこかで新型コロナに感染してしまったんでしょう。サンの火葬が終わってマイたち母子2人はホーチミン市に帰りましたが、2日後に今度はマイのほうが陽性になって入院してしまいました。さらに隣に住んでいたカインの祖父母も感染して相次いで入院したんです」と、フンさんは首を横に振って言った。

 マイさんが亡くなった日、まだ14歳の少女がショックを乗り越えられないのではないかと心配し、家族の誰もカインさんに母親の死を告げようとしなかった。遺骨を遺族に手渡す任務を負っている軍隊が自宅に到着し、フンさんは遺骨を受け取るために外へ出た。

 「妹の遺骨を受け取るつもりで出たのですが、軍隊の人は私の父(カインさんの祖父)の名前を読み上げたんです。私は立ったまま凍り付き、動揺し、事実を受け入れられませんでした。父は年を取っていましたがとても元気でした。数日前に連絡が取れなかったのは父の携帯電話が電池切れだったせいだと思っていたのに、まさかこんな形で遺骨を手渡されることになるなんて。たった1か月の間に家族を4人も失い、私たち一家はもうぼろぼろで、耐えられません」とフンさんは語った。

 フンさんやカインさんたち残された家族は、心を落ち着かせるまでに1か月近くを要した。

 最近、ホーチミン市ビンチャイン郡タントゥック町人民委員会の担当者がカインさんの元を弔問に訪れ、カインさんが職業訓練校に通えるよう支援する旨を伝えた。これは、カインさんの家族の願いでもあった。

 カインさんはこう打ち明けた。「以前、自分はメイクやネイルが好きなのだと母に話すと、母はもう少し大きくなったら学校に通わせてくれると言いました。私も自分で自分の面倒を見ることができるように、手に職をつけたいと思っています」。

 新型コロナは、カインさんやフンさんの家族を次々と連れ去り、家族の周りのすべてを変えてしまった。フンさんたちは夜な夜な、新型コロナのせいでまた家族の誰かが亡くなってしまうのではないかと不安を募らせる。さらに、新型コロナが収束しないことにはカインさんの将来も不透明なままだ。

 ホーチミン市ビンチャイン郡人民委員会のダオ・ザー・ブオン主席によると、同郡では9月16日の時点で新型コロナにより両親を失った子供が102人いるという。当局は新年度が始まる前に孤児と残された家族たちを訪問し、励ましの言葉をかけた。

 カインさんが暮らすタントゥック町も、新型コロナによりカインさんを含めて6人が孤児となった。同町当局はカインさんへの支援策について、新型コロナの収束後にカインさんの能力に適した職業訓練校を探し、安定した仕事を得られるようサポートする計画だ。 

[Thanh Nien 00:00 17/09/2021, A]
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