[特集]
隔離施設で出会い結婚、新型コロナ禍の隔離対象者と医療スタッフの愛の物語
2021/05/16 10:09 JST更新
(C) zingnews |
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新型コロナ禍の集中隔離施設でフオン・リンさんとホアン・ハイさんは偶然出会い、隔離中だったリンさんは医療スタッフとして自分の世話をしてくれるハイさんにシンパシーを感じた。その後6か月間の交際を経て、2人は結婚を決めた。
2020年7月、リンさんとハイさんは、東南部地方ビンズオン省バウバン郡の集中隔離施設で初めて出会った。
ハイさんはバウバン郡医療センターに勤務しており、ハノイ市出身のリンさんはオーストラリアに留学し、現地で働いていた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴いベトナムに帰国したリンさんは、バウバン郡医療センターで入国後の隔離措置を受けることになった。
ベトナム国内で新型コロナが流行し始めた当初、ハイさんの勤務先であるバウバン郡医療センターは、海外から帰国するベトナム人を受け入れる集中隔離施設となっていた。ハイさんが担当した隔離対象者50人の中の1人がリンさんだった。
隔離期間中の2人は、午前と午後の検温と、食事の配膳のときに顔を合わせるだけだった。そんなリンさんのハイさんに対する第一印象は「真面目で近寄りがたい人」だった。
一方のハイさんは仕事が忙しく、リンさんの印象はあまりなかった。そんな中でもハイさんは、マスクの上に覗くリンさんの丸くて大きな目と、いたずらっぽく優しい声だけは覚えているという。
「医療スタッフの仕事はとても忙しく、顔を合わせてもただ挨拶をして、一言二言を交わすだけでした。リンの隔離中で一番思い出に残っているのは、マンゴーを食べるという彼女にナイフを貸したときのことです。私がナイフを返してもらいに行くと、彼女は『もう飲み込んじゃった』とユーモラスに言ったんです。彼女のジョークで激務の疲れが和らぎました」とハイさん。
その後、熱心に行き届いた世話をしてくれるハイさんにリンさんは好印象を抱くようになり、いつしか恋愛感情が生まれたのだった。
リンさんはハイさんのオフィスの前を通るたび、わざとうろうろして中を覗き、ハイさんの姿を探した。また、リンさんは何度となく率先してハイさんに話しかけ、冗談を言って彼を笑わせた。
ハイさんは当初、リンさんが初対面の自分にも気軽に話しかけてくれるのは社交的な性格からだと思っていた。しかしほどなくしてハイさんは、リンさんが自分に特別な感情を抱いていることに気付いた。
とはいえ、隔離期間2週間の2人の関係は、お互いの名前と年齢を知るだけに留まった。
「隔離施設では感染のリスクを減らすために皆お互いに距離を取り、なるべく接触しないように努めていましたし、ハイさんも仕事が忙しく、私も私でやることがあったので……」とリンさんは語る。
新型コロナウイルス検査の3回目の陰性の結果を受け取り、リンさんは集中隔離施設を出られることになった。別れの前に、2人は携帯電話番号を交換した。
空港に向かう車の中で、リンさんからハイさんにホーチミン市で会いましょう、とメッセージを送った。自分の心の声に従ってハイさんは急いで仕事を片付け、リンさんに会いにホーチミン市へ向かった。これが2人にとって相手のことをよく知るチャンスとなり、2人はお互いの特別な気持ちに気付いたのだった。
リンさんがハノイ市に戻った後、2人は日常的に電話で話すようになり、いつの間にか恋人同士になっていた。ハイさんは仕事柄なかなかリンさんに会いに遠出をすることができなかったため、代わりにリンさんがビンズオン省を訪れた。
「遠距離恋愛でしたが、いつもお互いに気遣い、愛情を育んでいきました。リンが1か月ごとにホーチミン市に出張していたので、そのたびに2人で会っていました。私の仕事を理解し、共感してくれた彼女にとても感謝しています」とハイさん。
付き合って6か月が経ったころ、ハイさんはプロポーズを決意した。
「彼女にぴったりのリングを探すのに1週間近くかかり、それからリンをレストランに誘いました。すてきな音楽とロマンティックな雰囲気の中で、彼女がプロポーズを受け入れてくれたときは飛び上がりたいほど幸せな気持ちでした」。
2人は物理的な距離が離れていることから、最初は家族の反対を心配していた。しかし幸い、両家ともに賛同してくれた。その後、ハイさんとハイさんの家族は、ハノイ市にいるリンさんの家族に挨拶に行った。
出会いからデート、交際を経て結婚式まであっという間の出来事だったが、ハイさんはこれこそ「縁」なのだと感じている。ハイさんもリンさんも、お互いのことを運命の人だと思っている。
今年3月末、リンさんの実家があるハノイ市、ハイさんの実家がある南中部高原地方ダクノン省、そしてビンズオン省で結婚式を挙げた後、2人はようやく同じ家に帰ることができた。新型コロナの第4波が発生する前に、2人は南中部沿岸地方フーイエン省やビンディン省へハネムーンに出かけた。
2人は現在、ビンズオン省で暮らし、リンさんもハイさんと同じ職場で仕事をしている。しかし最近は再び国内で感染が拡大しているため、医療スタッフのハイさんは自宅にいる時間がほとんどない。ハイさんはこの第4波が収束したら、妻ともっと多くの時間を過ごしたいと願っている。
そして近い将来、2人はビンズオン省にコーヒーとケーキの店をオープンすることを計画しているのだという。
「第4波が発生し、夫も同僚たちもまた忙しくなりました。皆、強い気持ちでこれを乗り越えて欲しいと願っています。そして夫には、常に(私という)とても強い後ろ盾があるということだけ覚えていて欲しいです」とリンさんは語った。
[Zing 08:58 12/05/2021, A]
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