[特集]
SNSで里親探しも…4人の子供を育てるシングルファザーの事情
2021/05/09 10:49 JST更新
(C) thanhnien |
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4人の幼い子供を残して内縁の妻が姿を消し、ミンさんは男手ひとつで子供たちを育てていく決心をした。ある日、苦難のあまり子供を里子に出したいとソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に書き込んだミンさんだったが、後に「子供たちと何とか生きられる限り生きていこう」と考え直した。
チュオン・タン・ミンさん(男性・36歳)の借家はホーチミン市12区の路地の奥にある。水道光熱費を除いて1か月100万VND(約4760円)という格安な家賃で部屋を借りるには、狭く湿っぽいことを我慢するしかなかった。
今年3月10日、ミンさんはフェイスブック(Facebook)のグループに「自分には育てる余裕がないため、子供を里子に出したい」という内容を書き込んだ。
「切実に子供が欲しい人や不妊の人に、私の子供を託します。今の私には、生後14か月の子供をこれ以上育てる余裕がありません」。投稿にはミンさんの携帯電話の番号と、14か月になる末っ子のタン・クアンくんの写真を添えた。
ミンさんの投稿はSNS上で物議を醸し、多くのネット民がミンさんの子供に対する扱いに憤慨した一方、彼の苦しみに理解を示し、同情する人々もいた。その後、ミンさんは自身の投稿を削除した。
ミンさんと妻は出会って一緒に暮らし始めたものの、結婚の手続きをせずにいた。以前は共働きで、まだ子供も少なかったため、育てていく余裕があった。しかしその後、ミンさんが重い病気を患い、入院費がかさんで貯金は底をついてしまった。
ミンさんには、末っ子のクアン君のほかに4人の子供がいる。タン・ニャンくん(10歳)、フイン・アインくん(8歳)、フイン・ニューちゃん(7歳)、タン・ギアくん(3歳)の4人だが、フイン・アインくんはまだ小さい時にミンさんの母親に引き取られ、しばらく会えていない。ミンさんの母親もまた苦しい状況にあり、頻繁には連絡を取っていないのだという。
5番目の子供が生まれた後、妻は家を出た。ミンさんはマットレスの上で眠っている末っ子のクアンくんの髪を撫でながら涙で目を濡らし、クアンくんは生まれてから一度も母乳を飲んだことがないのだと打ち明けた。
少し前に妻は1日だけ子供に会いに帰ってきたが、また出て行ってしまった。出て行こうとする母親の脚にしがみつき、行かないでと大声で泣く子供たちを目の当たりにして、ミンさんも引き止めようとしたものの、彼女の決断は変わらなかった。こうして苦難のあまり疲れ果てたミンさんは、子供たちのためを思い、SNSに件の投稿をしたのだった。
「子供たちにもっと良い生活をさせてあげたいと思ってSNSに書き込みましたが、子供たちは皆大泣きして受け入れてくれませんでした。やはり里子には出さず、子供たちと何とか生きられる限り生きていこうと考え直しました」とミンさんは話した。
ミンさんには安定した収入がない。4人の子供を育てるために50万VND(約2400円)を借り入れてトゥードゥック市の卸売市場でマンゴーを仕入れ、自宅に帰って皮を剥いて小分けにしてから、毎日自宅近くの飲み屋街で売り歩いている。
ミンさんはマンゴーを1袋1万VND(約48円)で売り、利益の中から毎日数万VNDを差し引いて水道光熱費と家賃の支払いに充てる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で飲み屋が臨時休業していた間は何でも屋さんの日雇い労働者として働き、そこでもらった食べ物に頼って生活していた。
ミンさんは、マンゴーが売れた日は子供たちに魚を買って帰るが、売れなかった日は野草を摘んで帰ってスープにして食べている。ミンさんと4人の子供たちの主なおかずは1人1つのゆで卵で、ゆで卵に飽きた日は卵焼きにしている。
離れて暮らす1人も含めて5人の子供たちは全員、出生証明書がない。今まで夫妻の生活は生計を立てることで精一杯で、ミンさんの戸籍がある故郷まで手続きをしに行く余裕がなかったためだ。
ミンさんの境遇に同情し、近隣に住む人々は頻繁に米や食事を分け与えている。近隣住民の1人で、ミンさんの状況についてもよく知っているボー・タイン・フォンさん(男性・43歳)はこう語る。
「4人の子供たちは皆優しくて可愛らしいですよ。私も多くのことはできませんが、自分のできる範囲で、少なくとも子供たちがお腹を空かせることのないようにサポートしています。ミンさんも辛抱強く育児をしています。彼が子供を里子に出そうとしているという話をどこかから聞きましたが、ただ言ってみただけで、実際にそんなことはできないでしょう」。
「近隣の皆さんが我が家の生活の苦しさを知り、砂糖や調味料を分けてくれるおかげで、飢えることなく生活できています。4人の子供の中ではタン・ニャンとフイン・ニューだけが小学校に通っていて、学費は無料です。2人分の給食費として月25万VND(約1200円)を支払って、朝食は無料で食べられます」とミンさん。
毎朝、ミンさんは2人を学校に送って行く。タン・ニャンくんは10歳だが、学校に通い始めたばかりでまだ文字を勉強している段階のため、1年生の授業を受けている。子供たちを学校に送り届けた後、ミンさんは市場にマンゴーを取りに行き、家に帰って皮を剥く。
昼に子供たちを迎えに行き、食事を作る。午後には家族5人で食事をしてから皆でマンゴーを売りに行く。少し早く帰れることもあるが、一家は21時頃にようやく帰宅する。
そんなミンさんの今の唯一の願いは、今後も子供たちを育てていけるよう、自分が健康でいることだけだという。
[Thanh Nien 13:13 03/04/2021, A]
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